タン! と思ったより軽い音がして矢が的に命中し、的の板金が金属音を響かせた。わあっと家族から歓声が上がった。
ここから見ると、狙ったところに命中しているし、機構そのものは問題なさそうだ。
ただ、発射時に取っ手がすごい勢いで回転して危なかった。危なそうだなと思って当たらないようにラッチを解放したので事なきを得たが、いざというときに急いでると当たるだろうな。
取り外しできるようにするなどしないといけないだろう。ここは要改良のポイントその1だ。
その1ということは、もちろんその2もあるわけだが、その2はチェックせずとも明らかだ。矢を放ったあとのラックが飛び出さないよう、蓋をしていたパーツが破損している。
見ればラックもかなり傷んでいるようで、ここらは材質の変更まで含めて考えないといけないな。
進める方向は大丈夫そうだと分かったが、改良点もある。急ぐ品ではないので、しっかりやっていこう。
気がつけば、もう日が落ちてきている。〝竜の息吹〟とカリオピウムの様子をもう一度確認したら、夕食の準備にかかるか。
「皆もそろそろ切り上げろよー」
『わかったー』
俺が鍛冶場に戻りつつそう言うと、ディアナもヘレンも、そして娘たちも元気よく返事してくれた。
「どうでした?」
鍛冶場に戻ると、片付けをしていたリケに尋ねられる。俺は肩をすくめたあと、手にした試作品を差し出した。
「ご覧の通り、改善点がたくさんある」
「おお、見てわかりますね」
「だろ?」
俺は試作品を鍛冶場の片隅にそっと置いた。試作品で壊れているといっても、その辺に放り投げる気はない。
「まぁ、これでこそやりがいがあるってもんだ」
「ですね!」
キラキラと目を輝かせるリケに、〝竜の息吹〟の様子を見てくると告げて、俺は再び鍛冶場を後にした。
〝竜の息吹〟とカリオピウムを納めた物置きの無事を確認し、夕食も手早く準備してから、テラスに家族が集まった。
「今日明日に危険になるって感じではないよなぁ」
口の中に放り込んだ肉を飲み込んでから、俺が言うと、家族が頷いた。
夕食の準備をしている間に、俺以外の家族のみんなも確認してくれたそうなのだが、やはり温度が更に上がっている様子はなかったらしい。
これだけ放置していて問題ないなら、この〝黒の森〟にあっても大丈夫だな。
念のため、明日の朝に確認して問題なければ、問題なしとして置いておこう。
そしてもう1つについて、ディアナが聞いてきた。
「カリオピウムはどう?」
「どうだろうな。なんとなく上手くいくような気はしてるが」
途中の状態を確認しても良かったのだが、それで何か悪影響を及ぼすほうが怖いのでまだ見ていない。
「ダメだったらダメだったで、その時はまた考えるさ」
それなりに急ぎではあるが、また新たな手を考えることができる。それは少し楽しみでもある……と、俺は思うことにした。
「あ、そういえばさ」
そんな俺の心を知ってか知らずか、サーミャが〝黒の森〟の話を始める。のんびりとした夕食の時間は、そうして過ぎていった。