とうとう言っちゃった。
っていうか気づいたばかりですぐ告白って、私軽薄に思われるかな。
つい最近までヘンリーのこと好きって言ってたんだし。
信じてもらえる?
私の心は不安でいっぱいだった。
龍へ視線を向けると、ぽかんとした表情であっけにとられている彼の姿が目に入る。
こんな腑抜けた龍、初めて見た。
「りゅ、龍?」
顔の目の前で、ひらひらと手を振ってみる。
すると、はっと気づいたような顔をして、龍が私を凝視した。
「そ、それは! 好きとは、あの、家族とか友達とかの好き、ですよね?」
そうくると思った。
「違う。ちゃんと恋愛感情の好き」
私がはっきりとした口調で告げると、龍はまた停止する。
なんだか、さっきから止まったり動いたり……ロボットみたいで面白い。
「ななななっ、なんで! なんでいきなり、そんなっ、今まで
慌てふためき、取り乱し、しどろもどろな龍。
そんな龍を落ち着けるように、私は冷静に言い返す。
「だって、しょうがないじゃない。
私自身ずっと気づいてなかったんだもん。
最近貴子に言われたり、今回のこともあって、やっと気づけたの。
……何よ、龍は私のこと、好きじゃないの?」
「と、とんでもないっ! そ、そ、そんな、こんな夢のような展開が起ころうとは。
……驚きすぎて、何て言えばいいか」
ふと気づけば、龍の顔は真っ赤だった。
「龍、顔赤いよ?」
「はっ! す、すみません。嬉しくて……これは隠すことができませんでした」
龍は乙女のように顔を手で
え? 何この反応。
この反応はOKってことでいいのかな?
「ねえ、龍……っ」
真相を確かめようと龍の方へ近寄ったその瞬間、私は強い力で引き寄せられた。
びっくりして、一瞬息が止まってしまう。
気づけば、私は龍の腕の中におさまっていた。
感じる体温、鼓動……そして彼の匂い。
私は自然と目を閉じ、深呼吸する。
なんだか、すごく落ち着く。
「お嬢、これは夢ではありませんよね? あとでやっぱり違った、とか言わないでくださいよ。
それこそ俺は死んでしまいます」
龍の腕に力が込められ、私たちの体の密着度が増していく。
胸の高鳴りが伝わってしまうのではないかと、私は気が気でなかった。
「ちょ、く、苦しいよ、龍」
「あ! す、すみません、つい」
龍の腕が解かれ、私達は近くで見つめ合う。
「お嬢……いえ、
私が好きな女性はあなたです。五年前に会った時から、ずっと好きでした。
愛しています、誰よりも」
真剣な瞳に見つめられ、私の鼓動がこれ以上ないほどに早鐘を打ち始める。
龍への想いで心が満たされていく。
私は熱のこもった瞳を龍に向けた。
「龍、本当?」
「……はい」
龍もゆらゆらと揺れる瞳で私を見つめ返してくる。
その瞳から、彼の想いが伝わってくるようだった。
愛しい、大好き……って。
「嬉しいっ」
今度は私から龍に抱きついた。
龍の息を呑む気配を感じる。
しかし、すぐにたどたどしい動きと手つきで、龍も私を抱き返してくれる。
「龍はさ、私のことずっと前から好きだったの?」
「はい、出会った時から……ずっと」
照れくさそうに答える龍が、可愛くて愛おしい。
そんなにずっと想っていてくれてたんだ……。
嬉しい反面、私はふと考えた。
龍は、私と一緒にいて辛くなかったのだろうか。最近はヘンリーのこともあったし。
私は一度少し離れ、もう一度真正面から龍のことを見つめる。
「私も、龍のことずっと前から好きだったんだと思う。
でも鈍いから……今まで気づけなかった。ごめんね、辛い思いさせて」
申し訳なさそうに下を向きつつ、上目遣いで見つめる。
すると、龍はゆっくりと首を振って、優しく笑った。
「いえ、こうしてお嬢と一緒にいられるだけで幸せですから。
辛いと思ったことは一度もありませんよ。
もちろん、両想いになれたことは本当に嬉しいです。一生、片想いだと思っていましたから」
龍のはにかむ笑顔を前に、私の心は龍への愛しさで溢れていく。
ああ、なんて愛しいんだろう。
龍のことが愛しくて、堪らない。
龍もこんな気持ちでずっと傍にいてくれたの?
「……信じてくれて、ありがとう。
ずっと私、ヘンリーのことばかりだったじゃない? 私の気持ち誤解して、信じてくれないかもって心配した」
そう、最近の私は過去生からの気持ちに振り回され、ヘンリーに夢中だった。
きっと、龍は私がヘンリーを好きなのだと思っていたに違いない。
だから、告白をすんなり信じてくれたことに驚いた。
「私はお嬢の言うことなら何でも信じますよ、無条件で。
今までもこれからも、変わりません」
慈しむような瞳を向け、龍は極上の微笑みを見せてくれる。
無条件の愛……そんな言葉が似合う。
確かに、彼はずっと
ほんっとに、龍は……。
「馬鹿なんだから……」
私は龍の目の前で、そっと瞳を閉じる。
この仕草の意味、わかるよね?
しばらく待つが音沙汰なし。
「もう!」
私は龍の唇に自分の唇を押し当てた。
「! お、お嬢!」
驚いた龍がベッドから転げ落ちそうになる。
「こういうときは男からしてよねっ」
突然の行動に龍は呆然とし、また目が点になっている。
私は怒ったようにそっぽを向いた。
すると、龍の手がそっと伸びてきて、私の頬を両側から優しく包み込む。
そして顔の向きを変えさせられた。
すぐ目の前に龍の顔が。
その顔は真っ赤に染まり、恥ずかしそうにはにかんでいた。
今度は龍の方から顔を近づけてくる。
私はもう一度そっと目を閉じた。
次の瞬間、柔らかな感触が私に触れるのを感じた。