首をかしげる俺に対し、クマのぬいぐるみ・クーマがやれやれと肩をすくめた。
『そりゃお前、心配して駆けつけてくれた女の前で、別の女とイチャイチャしていたんだ。ケツを蹴り上げられたくらいで済んでよかったじゃねぇか』
「イチャイチャいしてねぇよ、あっちが無理やり抱きついてきただけで……」
『振りほどきはしなかったんだろ?』
「そりゃあまぁあんな美人さんからの抱擁だぞ? むしろウェルカム――うん?」
ふと気づく。
俺と会話するクーマ。
しかし、後ろにミラはいない。
腹話術でもないのにクーマは喋り、立ち、動いている。
え? これは一体……?
「知らなかったのかい? クーマ君はミラ君が使役している自律型ゴーレムなんだよ?」
「これだけの精度を出せるのですから、さすがミラ様ですよね」
「ん」
平然とした様子のシャルロット、メイス、ミラだった。え? 気づいてなかったの俺だけ……?
あ、いや、ラックとエリザベス嬢も驚いた顔をしているから、知らなかったっぽいな。ラックはとにかくエリザベス嬢は知っていても不思議じゃなさそうだったんだが。
「……あの人、いつも気を張っているから苦手だった」
小声でボソッとつぶやくミラだった。まぁエリザベス嬢は(元)王妃候補で、いつも気張っていなきゃいけなかった立場。子供相手にも甘い顔はできなかったのだろう。
あとはラックとの恋が上手く行かずに心に余裕がなかったとか、か?
ま、でも大丈夫だろう。
「今はどうだ? 仲良くできそうか?」
「……ん」
一度は頷いたミラだったが。
「ラック様。わたくしは重いでしょう? もう下ろしてくださいまし」
ラックにお姫様だっこされたままだったエリザベス嬢は恥ずかしげに頬を染め。しかしラックからは視線を逸らさず。
「いいえ、エリザベス様のどこが重いでしょうか。それに、やっと堂々とエリザベス様を抱き上げることができるようになったのです。この幸福を、今しばらく味わわせてください」
「ラック様……」
こんな時にもイチャイチャするのを忘れない二人を見て、
「仲良く、なれる……?」
うげぇっとした顔をするミラだった。気持ちは分かるぞ?