そんなこんなでテスト勉強が終わり、期末テストも過ぎて、結果が返ってきたよ。
二年二組の教室にていつものように安達・加賀見・春野・日高・俺が集まり話したのはもちろん期末テストの結果。
「皐月、結果どうだった?」
加賀見が最初に日高へと確認する。失礼だが俺達の中で赤点の危機があるのは日高だけに、その友人が心配するのは
「うん、バッチリ!」
日高が加賀見に、というより俺達の真ん中へ向けてピース。この調子だと苦手な教科でも赤点どころか高得点をマークしてそうだ。
「おめでと、サッちゃん!」
「グッジョブ」
「よかったじゃん!」
安達・加賀見・春野がそれぞれ祝意を示す。
休憩で春野のドッキリがあった後しばらく黙っていた日高は
「もー、心臓飛び跳ねるかと思ったよー」
とテンションを元に戻し、間もなく俺達はテスト勉強を再開した。
心なしか俺が隣に来たとき、日高は問題集やノートではなく俺の顔をチラリと見ることがあったが俺と目が合うとすぐに目を逸らす、ということがあった。休憩前には特になかったのに。
とはいえ集中が途切れたわけでもなく、休憩前と同じようなペースで勉強をこなしていった。
「それにしてもこの集まり以外での勉強って久しぶりだった」
「ねー。まあ、皆の予定が揃わなかったんだし仕方ないよ」
安達・加賀見には春野・日高・俺が集まってテスト勉強したことを伝えていない。
事前の話し合いで俺達三人はこの二人を前に白を切り、時には口裏を合わせるという方針で一致していた。
心配なのは春野がその手の嘘を吐くのが得意でないだろう、とのことだったが……。
「……」
「リン?」
「あ、うん。私もまた五人で集まって勉強会したい」
「……そうだね。ゴメン、次は私らもきちんと予定揃えてくるよ」
先日この五人で勉強会を開くという話になったとき、春野・日高は別の友達と一緒にテスト勉強をする予定が入ったことになっている。
そして俺はその場で全員が揃わないならそれぞれバラバラのグループでもいいんじゃないかと提案し、春野・日高がそれに賛同する形で安達・加賀見が了承したのである。
なので安達・加賀見も俺を誘うことなく二人で一緒に勉強していたようだ。そんなうまくいくのかと思っていたが安達も加賀見もすんなり俺達に干渉することなく、三人で勉強を行えた。日高の言っていたように安達・加賀見は二人きりで過ごしたがっているのかもしれないと思えた。
場所が変わって空き教室。
「疲れましたねー」
「そうか、じゃあ今日は上がってゆっくり休んでいいぞ」
「んなわけないでしょ」
先輩が親切を無下にするお疲れ気味の後輩を横目にスマホをいじる俺。ホントもう、スマホのない生活って考えられない。
先程ちょっとお話した後輩こと葵は、机の上にべったり上半身を乗っけて俺の方に顔を向けていた。奴のマイブームなのかここ最近よく見る仕草だ。猫みたいで人によってはとても愛らしく映ることだろう。
「今回も何とか凌げてよかったわ」
俺と向かい合って座り本を読んでいた奄美先輩。
「先輩は二学期の期末が最後でしたっけ」
「そうね」
我々の通っている九陽高校は三年生は三学期にテストが実施されず、一学期と二学期の中間・期末で都合4回の試験を受けることになる。
「二学期は大学の勉強も本格化するでしょうから大変になるわね」
本から目を離さず片手で髪をかき上げながらそう語る奄美先輩。言葉と裏腹に余裕を感じさせる姿は先輩としての威厳を保ちたがっているのかもしれないと思った。
「うげー、三年になるの嫌になってくるなー」
葵がさらに元気なく弱音を吐く。
「安心しろ。高校には留年という制度がある」
「永遠の一年生になるぐらいなら迷わず三年生になる道を取りますけどね」
おお、そうか。でも葵、何でこっちにジト目を向けるんだ。俺何も変なこと言ってないぞ。
「ところで、胡星先輩」
「ん?」
「春野先輩と日高先輩とのテスト勉強は楽しかったですか?」
……楽しかった?
「テスト勉強だぞ? 別に楽しくやれるイベントじゃないだろ」
「へー。私達のときは合間にトランプとかで遊びましたよね」
「あれは特殊なケースだ」
お前らが遊びたいっていうから付き合ったまでだ。俺としては別にぶっ続けでテスト勉強してもよかった。
ちなみに奄美姉妹が俺・春野・日高のテスト勉強を知っているのは奄美姉妹が同様の勉強会に誘ったのを断るべく俺が話したからだった。春野・日高の方が先約だったわけだしな。
「……次のテスト勉強は、また私達の家でやりましょうね」
「なぜ?」
「あれ、イヤなんですか。なら胡星先輩の家でも全然いいですよ」
「いや、お友達とやれって」
「友達とは今回のテスト勉強で一緒にやりましたから」
「交代制なのか?」
いつものことだがテスト本番よりその前の勉強会が憂鬱になりそう……。