(困ることなどなにもない。本人が望んでいるのだからもっと気持ち良くしてやれ)
突然、頭に邪神の声が響く。
何を言っているんだ、こいつはと思いつつ、ダイを観察する。
すると、はだけた服から肩や胸が見えていてひどく扇情的だった。
(旨そうな身体をしているじゃないか。さあ、しゃぶりついてやれ)
邪神のまさによこしまな声がさらに私を興奮させる。
服の下に隠れているはずの部分でも濃い褐色の肌は、確かに魅力的だ。
だからといって、フランツたちと同じこどもだろうダイに゙手を出すことなどできない。
「……あれ? どうしたんだ?」
邪神の声との葛藤で手が止まってしまっていたのか、ダイが怪訝そうな顔で尋ねてくる。
「ああ、なんでもないよ」
私は努めて平静を装って答える。
「なんか、顔赤くねーか?」
身体を寄せて私の顔を触るダイ。
そのせいで、はだけた胸元が顔の近くまで迫る。
(自分から近づいてきたぞ。そのまま、胸もいじってやれ)
邪神の声に、思わずダイの胸元に手が伸びる。
その時……。
「にーちゃん、ただいまー」
相変わらず、ノックなしに扉を開けたリカードが入ってくる。
私は慌てて手を引っ込めて、何事もなかったように平静に努める。
だが、ダイは私が自分の胸に触れようとしていたことに気づいたのか、目を見開いたまま固まっていた。
「どうしたの、ダイ〜。にーちゃんのマッサージが気持ち良すぎちゃった〜?」
「え? ああ、そうだな。気持ち良かったぞ」
ダイも慌ててそう答える。
「おいらももっとにーちゃんにマッサージしてほしかったのに、ダイだけずるいぞ〜」
リカードはダイを押しのけるようにベッドの上に座ると、ブーツを脱いで足をこちらに投げ出す。
「にーちゃん、おいらにももっとマッサージして〜」
「おれはもう十分だから、リカードにしてやれば」
リカードの純真無垢な反応が警戒心を解いたのか、ダイはそう言うとはだけた服を整えて横に座る。
「あれ〜。にーちゃんの手、ヌルヌルだね〜。なんか気持ち良さそ〜」
「うん、気持ち良いと思うよ」
リカードの言葉に、私は優しく足裏にオイルを塗ってやる。
「ひゃん。なんか、変な気持ちになるよ〜」
オイルを塗りながらマッサージを始めると、リカードがおかしな声を上げる。
まあ、オイルなんて塗られた経験がないだろうから、そういう反応になってもおかしくないか。
その後、邪神が再び声をかけてくることはなく、しばらくリカードの足裏をマッサージする。
ダイはそのやり取りを横目で見ていたが、リカードの私に対する甘えた反応に安心したようで、途中で部屋を後にするのだった。