「タカヒロさん、食事にしましょう」
ダイと入れ替わるようにフランツが部屋に入ってきて、声をかけてくる。
「フランツ〜、ちょっと待って〜。すごく気持いい〜」
「え? 何をやってるんですか?」
「オイルを使ったマッサージで、お肌がすべすべになるんだよ」
ベッドの上でダメになってしまっているリカードを見て、フランツが疑問を口にする。
私はそんなフランツに対して状況を説明してやる。
「オイルですか。そんなことまで……」
「うん。フランツ、結構踏ん張ることが多くて足裏が硬くなりそうだったから。先に使っちゃってごめんね」
「そんな……。僕のためにありがとうございます」
私の言葉にフランツは気分を害した様子もなく、むしろ嬉しそうにはにかむ。
嫉妬されるかと思ったけど、それはうぬぼれだったようだ。
「ダイが先にやってもらってたんだよ〜。ずるいよね〜」
「そうなのか? それはちょっとずるいな」
けれど、リカードの言葉にフランツは少し不機嫌そうな様子を見せる。
ダイに対しては厳しい……というか、少し嫉妬の気持ちがあるのかもしれない。
「そういえば、ダイって何歳なの?」
「はっきりした年齢は自分でもわからないみたいですが、僕と同じ十五歳くらいのようです」
なるほど、同い年だから少しライバル心があるのかもしれない。
「そんなことより、食事に行きましょう。前回は結局食べそこねた名物の肉料理をジョルジュさんが楽しんでくれました」
「ほんと! 食べる食べる〜」
フランツの言葉にリカードは飛び起きて部屋を飛び出す。
裸足で駆けていく姿はこどもそのものである。
「おほかったね」
レイが肉にかぶりつきながら声をかけてくる。
エルフの美少年が大きな肉にかぶりついている姿というのはちょっと新鮮だ。
エルフに菜食主義という設定があるのかわからないし、森に住んでいるイメージだから肉はむしろ食べるのかもしれないが、どちらかと言うとリカードのほうがかぶりついているイメージだ。
もちろん、食卓についたリカードも肉にかぶりつこうとフォークに手を伸ばしているのだが。
フランツは騎士の家系だし、もう少し上品に食べるのかな?
ただ食事をするだけでも、みんなの新たな一面が見られて非常に幸せだ。
ちなみにダイとジョルジュさんもレイと同じようにかぶりついている。
でっかいブロック肉の塊はすごく美味しそうで、レイを見ている限り見た目より相当柔らかそうで、食べるのが今から楽しみだ。