「それだけですか?」
「それだけなの?」
「それだけ〜?」
続いた言葉は語尾こそ三者三様だったものの、同じ内容だった。
「それだけって……みんな、成長期なのにもう大きくなれないんだよ?」
「それは困りますが……本来ならあの時に死んでいたのでしょうし」
「アンデッドじゃないだけマシじゃない?」
「ちっちゃいままなら、にーちゃんにずっと頭なでなでしてもらえるし」
私の問いかけに、三人はあっけらかんと答える。
「まあ、冒険者としてはちゃんと成長しているみたいだし、見た目が小さいだけなら考えようによっては有利かもな」
ジョルジュさんもリカードの頭をグリグリと撫でながら同意する。
「えー。おれは成長しないのは嫌だぜ?」
「なら、お前は助けてもらえないってことだな」
「いや、それはもっと嫌だよ!」
ダイとジョルジュさんが謎の言い争いをしている。
まあ、確かに死ぬのと成長が止まることを天秤にかければ成長が止まるほうがマシか。
「さて、そんなすごい力がタカヒロさんには宿っているわけだが、ナーシェンはそれを奪いに来たんだろう」
「あいつはまた……」
ジョルジュさんの言葉にレイが怒りを露わにする。
フランツの表情も険しい。
「ちゃんと倒したと思っていたんだが、さすがは高位の魔法使いだな。まんまと生き延びてやがった」
「とーちゃん達が失敗した話って初めて聞いたよ」
ジョルジュさんも苦々しげに呟き、リカードが困ったような表情を浮かべる。
「まあ、生きていたものは仕方がない。あいつに神の力を奪われれば、下手すれば国が滅ぶ」
「マジかよ。何なんだよ、あいつ」
ジョルジュさんの言葉に、ダイは唖然とする。
私としても、そこまで大きな話になってくるとは驚きだった。
「僕の父上を騙し討ちした結果、父上が所属していた領土はやつに奪われましたからね。さらに大きな力をつければ、国レベルの話になるのも納得です」
「そういうこった。正直あんた達が関わるには相手が悪すぎるんだが、やつの狙いがあんたである以上は仕方ねえ。あんたのことは全力で守らせてもらう」
ベテラン冒険者であるジョルジュさんに守ってもらえるのは頼もしい。
「俺としても神の力をやつに奪わせる気はねえし、リカードの命が無くなるかもしれねえからな。だけど、もしものときのためにあんた達にも強くなってもらう必要がある」
ジョルジュさんの言葉に、すでに鍛えてもらった経験のあるダイの顔が青ざめる。
「来たるべき決戦に備えて、今日から修行……だな」
大変な事態になっているのに、どこか嬉しそうなジョルジュさん。
私としても自分の問題だし、殺されたり力を奪われればフランツ、レイ、リカードの三人が死んでしまうと考えると絶対に殺されるわけにはいかない。
決意を新たにして、決戦に備えることにするのだった。