「さて、特訓の前にタカヒロさんに聞きたいことがあるんだが……」
ジョルジュさんに呼ばれ、こども達のいない部屋に移動する。
こども達には聞かせたくない話ということなんだろう。
「あんたに聞きたいことがある。神の奇跡の弊害は、本当に『成長が止まる』だけなのか?」
ジョルジュさんの疑問について私も考える。
確かに弊害が少なすぎるとは思うのだが、私が知っていることもそれだけなのだ。
(だそうだけど、本当にそれだけなの?)
(それだけだ。敢えて言うなら……まどろっこしいから、貴様の身体を貸せ)
とんでもないことを言い出す邪神。
というか、身体を乗っ取ることなんてできるのか。
「えっと、ジョルジュさん。神様が直接話しをするそうです」
「何っ、マジか……」
私の言葉にジョルジュさんは唖然とする。
次の瞬間、私の意識は闇へと落ちた。
「あれ? 話は終わりましたか?」
「ああ、タカヒロさん。身体のほうは大丈夫か?」
言われて、違和感がないか確認してみる。
特になにかおかしなところはない気がするが、少しダルいかもしれない。
「多分、大丈夫だと思います。それで、どんな話をされたんですか?」
「ああ。確かに成長しない以外の弊害はなかった。ただ……」
「ただ?」
少し、言いにくそうにするジョルジュさん。
「あんたの身体を通してリカード達の身体の感触を楽しんでいるらしい」
「あー、感覚を共有しているんですね。それは……ジョルジュさんとしては複雑ですね」
「いや、命の恩人でもあるし、それくらいはと思うが、さっきみたいに身体を乗っ取られたりすると怖いな」
直接邪神と話をしたジョルジュさん的には危険人物(?)という認識なのだろうか。
「とはいえ、あんたが無事ならリカード達も無事というのは非常にありがたい。特訓についても、そこを利用させてもらうぞ」
有言実行で特訓の内容はフランツがとにかく私が攻撃されないように防御を固める、リカードとレイはしっかりと攻撃、ダイは私と繋がりがないので自分も身を守ることを最優先、私も同様に自分の身を守ることを最優先するというものだった。
ショタであるフランツ達に守ってもらう形になるのは複雑だが、元々アコライトなので守ることが仕事、自分が倒れないことも回復役の鉄則なのでそういう意味では王道な戦い方をきちんと身に着けるということでもある。
「うわぁ!」
さっそく不用意に攻撃を行ったリカードが返り討ちにあってしまっているが、その後もしっかりとフォーメーションを組んで戦えるように特訓は続くのだった。