「ダイ、お前はすぐに前に出るクセをなんとかしろ」
「あ、はい。すんません」
フォーメーションを乱しがちなダイがジョルジュさんから注意を受ける。
そして次の瞬間、不用意に前に出ていたダイを蹴り飛ばす。
「ぐほっ!」
「まあ、後ろで大人しくしてないからモンクに転職させたんだが、相手が格上なんだから無理をしたら死ぬぞ」
吹っ飛ばされて地面に横たわるダイに続けて苦言を呈するジョルジュさん。
注意されているのはダイなのだが、あまりの速さに私もプロテクションが間に合わなかった。
ダイは繋がりがないという意味でも、前に出るクセがあるという意味でも、意識して守ってあげなければならない。
「エアリアルスラッシュ!」
「ファイアボルト!」
一方、レイとジョルジュさんのパーティのメイジは魔法を打ち合っている。
炎は風で消えそうなものだが、そんな気配はまったくなくてレイのほうが押されていた。
「才能は相当なものじゃが、まだまだ青いの。まあ、五倍は生きとるわしは熟しすぎとるが」
「くっ……まだまだっ」
余裕の表情を浮かべているメイジに対してレイはびっしょり汗をかきながらも耐えている。
レベル差があるから仕方がないとはいえ、かなり一方的な状態のようである。
「タカヒロさん、危ない!」
レイのほうに意識を向けていると、鋭いフランツの声が聞こえる。
反射的に前を向くとフランツの背中が見えたので、すぐさまプロテクションの魔法をフランツにかける。
ガキッという重い音とともに、ジョルジュさんのパーティのウォーリアの攻撃をフランツが防ぐ。
「やるじゃん! プロテクション込みでギリギリだけど。後、タカヒロさんは周りを見ることも大切だけど、自分のこともちゃんと意識しないとですよ?」
「大丈夫です、タカヒロさんのことはずっと僕が見ていますから」
ウォーリアさんの忠告にフランツが答える。
「へえ、ぞっこんなんだ」
「なっ!」
「隙あり!」
「かはっ!」
ウォーリアさんの軽口に思わず赤くなって反応してしまったフランツが、盾をすり抜けたウォーリアさんに膝蹴りを食らう。
「ホーリーライト!」
「おっと! いいですね、そのタイミングは『攻撃は最大の防御』です」
そう言いながらもしっかりと攻撃を避けるウォーリアさん。
とはいえフランツとの距離が開いたので、その間にフランツは体制を立て直していた。
「まだまだ荒削りだが、フランツとタカヒロさんは連携できてるな」
リカードと戦いながら、横目でこちらを確認して声をかけてくれるジョルジュさん。
その後も、みんなが倒れるまで特訓は続くのだった。