次の日、本格的にナーシェンを迎え討つ準備をする。
いつ襲ってくるかわからないため、また村が大変なことにならないように神像を移動させる。
神像を置いておく野営地もすでにジョルジュさん達が候補地を見つけており、私達はそこへ移動するだけという感じだった。
神像の移動も食料などの必要な物資も村の人達も協力して行ってくれたため、あっという間に準備ができる。
「さて、ナーシェンはいつ襲ってくるかわからない。持久戦になるから、あんまり気を張りすぎるなよ」
『はい』
ジョルジュさんの言葉に、私達は異口同音に答える。
実際、いつ襲ってくるかはナーシェン側が自由に選べる。
長期間放置してこちらの集中力を切らせるとか、食料がなくなって村へ取りに行くタイミングで襲ってくるとか、いろいろなシチュエーションが想像できる。
「にーちゃん、眉間にシワが寄ってるよ〜」
思わず考え込んでいると、リカードに抱きつかれる。
天真爛漫なようでいて、しっかりと周りを把握している観察眼はさすがシーフと言うべきか。
「タカヒロは真面目なんだね」
私にくっついているリカードを引き剥がしながら、レイが腕にくっついてくる。
「お前達はもう少し真面目にしたほうが良いんじゃないか?」
文句を言いながらも、フランツまで現れる。
こうして四人で集まると、場所が変わってもいつも通りという感じがして安心する。
「さあ、食うぞ」
ジョルジュさんの言葉を合図に、みんなが昼食を食べ始める。
近くの川で取れた魚を焚き火で塩焼きにして食べる。
先程は一緒にいなかったダイも、今は私達の横で串に刺さった魚にかぶりついている。
ダイも私達のパーティーメンバーとして十分に馴染んできているけれど、ジョルジュさん達が一緒だとそちらにも行きたくなるようだ。
モンクとして育て直してもらったわけだから、そりゃあジョルジュさん達に親のような気持ちを持つのも当然かな。
そういえば、リカードはまさにジョルジュさん達が育ての親なわけだけど、そこまで一緒にいようとしないのはなぜだろう。
「んー? おいらはもう、十分とーちゃん達と一緒にいたからね〜。もちろんとーちゃん達のことも大好きだけど、今はにーちゃんのことが大好きだし、フランツとレイのことも大切だからね」
直接リカードに聞いてみると、こんな答えが返ってきた。
あれかな、十分に愛情を注がれて育ったこどもは自立するのも早い……みたいなことなのかも。
私も十分にリカード達に愛情を注いで、いつかは巣立ってもらわないといけないのかなあ。