私達がナーシェンを迎え撃つために外に出ると、野営地に火の手が上がっていた。
「どういうことだ!?」
「ナーシェンのやつが攻めてきた!」
見ると、上空から大量の火球を放っているナーシェンの姿が見える。
「ファイアボルト!」
「ホーリーライト!」
メイジさんとアコライトさんが迎撃しようとすると、それを避けて地面に降りてくる。
「ふむ。楽に片づけてやろうかと思ったが、逆に面倒が増えそうだ。そもそも私のほうが強いのだから、力づくで片付けてやろう」
「とーちゃん達に負けたくせに偉そうだぞ」
「私があの時のままの強さだと思っているのか? そもそも、完全に負けていないから私はここにいるのだ」
「今回もまた、逃げる手筈は整ってるってわけか」
「逃げる必要などないわ。全員まとめて片付けてくれるのだから」
そう言うと、ナーシェンの身体がみるみるうちに膨れ上がり、3mほどの巨人へと変貌する。
「私はメイジだが、この姿になれば物理攻撃力も圧倒的だぞ」
「ぐあっ」
ナーシェンの放った攻撃をウォーリアさんが受け止める。
アコライトさんもプロテクションでダメージを軽減するが、それでも大きく後方に吹っ飛ばされる。
素早くジョルジュさんがその身体を支えるが、相当なダメージだったらしい。
「化け物めっ」
「レイ。父親に向かってその口の聞き方はなんだ」
ナーシェンに対してレイが悪態をつく。
すると、ナーシェンはレイに向かって巨大な火球を放った。
「させない!」
素早くフランツがその攻撃を受け止めるが、受け止めきれずに大きく吹き飛ぶ。
「ぐう……くっ……」
地面に倒れ、苦しそうな声を上げるフランツ。
私はすぐにフランツの元へ行き、フランツを抱きしめる。
近くにいるなら回復魔法をかけるよりも直接抱きしめて回復力を注ぎ込んだほうが効率がいい。
「そうやって回復させられるその男のほうがよほど化け物だろう。いや、それで回復するお前達が化け物か?」
「黙れ! エアリアルスラッシュ!」
レイが風の魔法を放つが、その魔法はナーシェンの目の前で簡単にかき消えてしまう。
「こんなの、どうやって倒すんだよ~」
思わず、リカードが弱音を吐く。
「諦めるでない。ファイアボルト!」
「ホーリーライト!」
「無駄だ、ファイアボール!」
メイジさんとアコライトさんがまた魔法を放つが、ナーシェンの放った巨大な火球にかき消されてしまう。
それどころか、その火球が二人を飲み込もうとする。
「させねえぞ!」
自らにプロテクションをかけながら火球に飛び込むダイ。
「うわあああ!」
炎に包まれて悲鳴を上げるが、そのおかげで二人のところには火球は届かなかった。