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第13話 英雄神

「神の力をもってしても、もはや私の攻撃を防ぐことはできない」


 ナーシェンが呪文を唱え終わると、上空に巨大な炎の隕石が複数浮かび上がった。


「インフェルノ・メテオ!」


 ナーシェンの放った魔法は辺り一帯に降り注ぎ、地形そのものを変えていく。


 まさに地獄絵図といった感じで、すべてが無に帰そうとしていた。


「くそ……僕達ではまったく歯が立たないのか……」


「あいつは……あいつだけはオレがこの手で倒したかったのに……」


「とーちゃん達でも勝てないなんて……」


「チクショウ! せっかく助かったのに、結局死ぬのかよ!」


 あまりの出来事に少年達の絶望の声が響く。


 確かに力の差は歴然で、このままではやられるしかないだろう。


「絶望に抱かれたまま、滅びるがいい」


 周囲に降り注いでいた炎の隕石よりもさらに巨大な隕石が、ナーシェンによって作り出される。


 だけど!


『ゴッド・パーム』


 私の……邪神の口から小さな声が発せられる。


 それはすぐに力となり、ナーシェンの身体を巨大な隕石ごと包み込む。


「何!?」


 ナーシェンの放った炎をまとった巨大な隕石は、ナーシェンを包み込んだ結界にぶつかる。


 そして、恐ろしい爆発が上空で発生した。


「おおおおおおおおおっ!」


 地上に降り注いだ炎の隕石以上の熱エネルギーがナーシェンの身体を包み込み、その身体を焼き尽くす。


 膨れ上がった肉体もその熱量には耐えきれず、断末魔を残して消え失せる。


「勝った……のか?」


「ナーシェンが……死んだ?」


「おいら達、助かったの?」


「勝った……?」


 あまりの出来事に、少年達も呆然と空を仰ぐ。


 太陽がもう一つできたかの如く輝いていた空も、やがていつもの青空へと戻っていく。


『勝った、勝ったんだ!』


 それは誰のあげた声だったのか、喜びの絶叫が唱和する。




「タカヒロさん! 無事ですか!?」


「あんな力……どこから……」


「にーちゃん、死んじゃヤダよー」


「あんたが死んだらみんな死ぬんだぞ!」


 四人の少年たちが私の元へと集まってくる。


「大丈夫、ほとんどは邪神の……いや、神像に宿っていた英雄神の力だから」


 私の言葉に、少年達は安堵の表情を見せる。


『だが、やつは死んではおらんぞ』


「どういうこと!?」


 私の口から発せられた英雄神の言葉に、レイが憎々しげに反応する。


『どこかに依り代を用意しており復活するだろう。そして、また攻めてくるだろうな』


「そんな……」


『復活までは数年かかるだろう。その時には我の力を借りずに貴様らで倒してみせよ』


 英雄神の言葉にレイが黙って強くこぶしを握り締める。


「レイ。君の気持ちもわかるけれど、今は生き延びたことを素直に喜ぼう」


 それに気づいた私はレイを抱きしめる。


 一瞬顔を赤らめたレイだったが、リカードやフランツ、ダイまで抱き着いてきて、一気に仏頂面になってしまうのだった。

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