「神の力をもってしても、もはや私の攻撃を防ぐことはできない」
ナーシェンが呪文を唱え終わると、上空に巨大な炎の隕石が複数浮かび上がった。
「インフェルノ・メテオ!」
ナーシェンの放った魔法は辺り一帯に降り注ぎ、地形そのものを変えていく。
まさに地獄絵図といった感じで、すべてが無に帰そうとしていた。
「くそ……僕達ではまったく歯が立たないのか……」
「あいつは……あいつだけはオレがこの手で倒したかったのに……」
「とーちゃん達でも勝てないなんて……」
「チクショウ! せっかく助かったのに、結局死ぬのかよ!」
あまりの出来事に少年達の絶望の声が響く。
確かに力の差は歴然で、このままではやられるしかないだろう。
「絶望に抱かれたまま、滅びるがいい」
周囲に降り注いでいた炎の隕石よりもさらに巨大な隕石が、ナーシェンによって作り出される。
だけど!
『ゴッド・パーム』
私の……邪神の口から小さな声が発せられる。
それはすぐに力となり、ナーシェンの身体を巨大な隕石ごと包み込む。
「何!?」
ナーシェンの放った炎をまとった巨大な隕石は、ナーシェンを包み込んだ結界にぶつかる。
そして、恐ろしい爆発が上空で発生した。
「おおおおおおおおおっ!」
地上に降り注いだ炎の隕石以上の熱エネルギーがナーシェンの身体を包み込み、その身体を焼き尽くす。
膨れ上がった肉体もその熱量には耐えきれず、断末魔を残して消え失せる。
「勝った……のか?」
「ナーシェンが……死んだ?」
「おいら達、助かったの?」
「勝った……?」
あまりの出来事に、少年達も呆然と空を仰ぐ。
太陽がもう一つできたかの如く輝いていた空も、やがていつもの青空へと戻っていく。
『勝った、勝ったんだ!』
それは誰のあげた声だったのか、喜びの絶叫が唱和する。
「タカヒロさん! 無事ですか!?」
「あんな力……どこから……」
「にーちゃん、死んじゃヤダよー」
「あんたが死んだらみんな死ぬんだぞ!」
四人の少年たちが私の元へと集まってくる。
「大丈夫、ほとんどは邪神の……いや、神像に宿っていた英雄神の力だから」
私の言葉に、少年達は安堵の表情を見せる。
『だが、やつは死んではおらんぞ』
「どういうこと!?」
私の口から発せられた英雄神の言葉に、レイが憎々しげに反応する。
『どこかに依り代を用意しており復活するだろう。そして、また攻めてくるだろうな』
「そんな……」
『復活までは数年かかるだろう。その時には我の力を借りずに貴様らで倒してみせよ』
英雄神の言葉にレイが黙って強くこぶしを握り締める。
「レイ。君の気持ちもわかるけれど、今は生き延びたことを素直に喜ぼう」
それに気づいた私はレイを抱きしめる。
一瞬顔を赤らめたレイだったが、リカードやフランツ、ダイまで抱き着いてきて、一気に仏頂面になってしまうのだった。