『ところで今回はかなり力を貸したから、それなりの代償を払ってもらうぞ』
「なっ……」
私に抱きついて喜んでいた少年達が、英雄神の言葉に固まる。
「代償って……なんですか?」
パーティーを代表してフランツが確認する。
『誰か一人、我の生贄になってもらおうか』
「そんな!? でも、それなら僕が……」
「いや、ナーシェンは一応俺の親だから、おれが生贄になる」
「フランツもレイも……死んじゃうのやだよ」
「わりいけど、おれは死ぬのは嫌だぞ?」
突然の英雄神の言葉に少年達が動揺する。
『はっはっは、かわいい小僧共だな。では、誰か一人ではなく全員が生贄となれ。タカヒロともっとスキンシップを行うことで我を喜ばせるのだな』
「それならこっちからお願いしたいくらいです」
「まあ、タカヒロとなら……」
「にーちゃん、大好き〜」
「俺もまあ、生贄にされるよりは……」
英雄神の代替案にこども達が喜びの声を上げる。
内心、私も喜びの声を上げていた。
(貴様も小僧共が大切なら我に愛想を尽かされぬように、しっかり小僧共とスキンシップするのだぞ)
心のなかで英雄神の声が聞こえると、急に神力のようなものが失われていくのを感じる。
さすがの英雄神も力を使いすぎて休息に入ったということだろうか。
「あの……今日は僕と一緒に寝てくれませんか?」
めずらしく、フランツが自分からそう言ってくる。
他の子達も珍しい発言だからか、遮ろうとしない。
「えーと、うん。嬉しいよ」
今までも添い寝をしたことはあるのだが、改めて言われると少し恥ずかしい。
野営地は悲惨な状態ではあったが、そもそも野営地なので神像と無事な荷物だけを持って村へと戻ることになった。
フランツとダイ、リカードが神像を運ぶ役になり、私とレイは荷物を運ぶ。
もちろん、ジョルジュさん達もそれぞれ手分けして一緒に運んでくれた。
疲れ果てていた私達は、村に着くと食事もそこそこに休むことにする。
私の横には約束通り、フランツがいる。
「タカヒロさん、いつもありがとうございます。まだ生きているようですが、それでも父の仇であるナーシェンを倒すことができて本当に嬉しいです」
ベッドの上で、改まってお礼を言ってくるフランツ。
「こちらこそ、何度もかばってくれてありがとうね」
私はそう言いながら、フランツを抱き寄せる。
フランツは顔を赤らめつつも抵抗せずにくっついてくる。
がっしりとはしているものの、背が二十センチは低いので抱きしめると胸の中で収まる。
「あの……これからもずっと一緒にいてくださいね」
上目遣いで控えめにそう言ってくるフランツは、いつも以上に本当にかわいいのだった。