VIP取引所
一般の取引所とは異なり、VIP取引所は静寂の中に高級感が漂っていた。
ここには数人の探索者がちらほらとしか見受けられないが、スタッフの数は外と変わらず多かった。
そしてもちろんのことだが、サービスの仕組みもまったく異なっていた。
宮本、アリス、そして絵里(ブラックカード所持者は1名を同行観光者として扱い、入場可能)が、電気錠にブラックカードをかざすと、すぐにドアが開き、ピンクの制服を着た若い女性スタッフが笑顔で迎えに来た。
「こんにちは! 三名様ご一緒ですか?」
宮本の確認を得た後、彼女は微笑んで言った。
「お三方のご案内をさせていただきます。蒼井と申します」
蒼井の案内で、宮本たちは豪華で広々としたVIP取引所へと足を踏み入れた。
室内には、洗練された装飾が施され、ゆったりとした空間が広がっていた。
部屋に入ると、すぐに一人のスタッフが大きなスクリーンの前に立ち、お辞儀をしながら微笑んだ。
「宮本次郎様ですね、貢献値の計算をさせていただきます」
席に着くと、スタッフは宮本から手渡されたブラックカードと、貢献値が記録されたデータ装置を受け取り、少々お待ちくださいと告げた。
タブレットを取り出し、ケーブルで記録装置を接続したスタッフの手際よさが光る。
しばらくすると、タブレット上に表示された数字が急速に上昇し、スクリーンにリアルタイムで反映された。
15000…32000…123000…289000…
数字がどんどん増えていく中、すでに宮本が貢献値ランキング1位であることを知っているアリスと絵里は冷静さを保っていたが、二人のスタッフの表情は面白いことになった。
最初は冷静だった二人が、次第に驚き、そして喜びに満ちた顔を見せ、数字が627,000で止まったとき、思わずお互いに視線を交わした。
スクリーンには「貢献値NO.1」の文字が鮮やかな赤文字で浮かび上がり、二人には「これ、今年のノルマ、余裕でクリアできるちゃう?」という謎の自信が湧いてきた。
スタッフが操作を終え、すべての貢献値が換算されると、宮本の手には信じられない金額の富が転送された。
それは、彼が社畜時代に何世代にもわたって積み上げても手に入れることができない金額——108億3200万円だった。
人生で幾度も大きな変化を経験し、生死を越えて自由を追い求める決意をしていた宮本でさえ、この瞬間だけはその冷静さを失ってしまった。
百億円の額があまりにも衝撃的だったからだ。
その場で唯一冷静さを保っていたのは、たぶんアリスというT社のお嬢様だけだっただろう。
彼女は幼少期からお金の上に寝転んで寝るような生活をしていたため、百億なんて金額、彼女にとってはただの数字に過ぎなかった。
(宮本さまったら、そんなに驚くものですの? たかが百億、どうやら過去は相当貧しかったですわね…)
それに対して、Y社のトップエージェントである絵里も、この百億円の数字には驚かされていた。
なぜなら、これは宮本がただ一度の任務で得た成果に過ぎなかったからだ。
(社長、ほんっとに英断でしたね…これこそ、S級の配信者契約が宮本くんのようなトップ収入の探索者にふさわしいものであることが証明されたわ)
絵里は心の中で拍手を送りながら、冷静に分析していた。
データ計算が完了した後、スタッフはさらに丁寧に、宮本にブラックカード(キャッシュカードとしても使える)とともに、その百億円を振り込んだ控えを手渡した。
「宮本様、貢献値に基づく金額が無事に振り込まれました。今後は自由にご利用いただけます」
言いながら、計算していたスタッフは隣の接客スタッフに目で合図。
すぐにそのスタッフが理解し、笑顔満点で立ち上がり、まるでテレビショッピングのプレゼンターのように勢いよく語り始めた。
「親愛なる宮本様、失礼ながらお伺いしますが、この報酬でお買い物などのご予定はございますでしょうか?私たち探索者協会は、素材取引にとどまらず、錬金、情報、オークション、装備、素材加工、ペット管理、任務の発行など、ありとあらゆるサービスを提供しております!そして、なんと!ブラックカードの所持者である宮本様には、すべてのサービスにおいて最上級のサービスと割引をお楽しみいただけます!!」
宮本は慎重に百億円が振り込まれたブラックカードをポケットにしまい、巨額の財産を手に入れた喜びに浸りながら、徐々に冷静さを取り戻していった。
「そうだな…次はペット管理所かな、俺のモンスターペットを登録したいんです」
蒼井は、宮本の肩で寝ぼけたような顔をしている毛むくじゃらの小さなキツネを見て、少し驚いた様子で目を向けた。
「あれ…この子狐さん、ダンジョンから来たモンスターですか?」
宮本は軽く頷く。
蒼井が驚くのも無理はない。
威圧感を抑えるために、一本しか残されてない尻尾を振る九尾は、とてつもない可愛さを持っているとはいえ、特に目を見張るような特徴があるわけではなかった。
蒼井は説明を続いた。
「…あの…実は…ペット登録はIV級以上のダンジョンモンスターのみが対象なんです…」
(実に強くて優しいお方…。どこかで拾ってきた低ランクの銀狐をペットにするだなんて…。こんな程度のモンスターペット、宮本様には釣り合わないのでは…)
蒼井からしては、可愛さしかないキュウがどうしても低ランクのモンスターにしか見えなかったため、宮本に注意するのも無理はなかった。
だが、既に目が覚めたキュウは、人間の言葉を完全には理解できないものの、蒼井が自分を軽視していることはしっかりと察していた。
(はぁ…!!?我は伝説級モンスターになると誓った九尾だぞ!狐族の聖地
次の瞬間、キュウは宮本の肩から飛び降り、主と一瞬目を合わせた後、真の姿を現した。
天井にほぼ届きそうな巨大な体、優雅に動く九つの尻尾、そしてルビーのように輝く目に浮かぶ威厳——蒼井は恐怖で震えながら、その姿を見上げた。
「無知な人間よ、その言動には責任を取らねばならぬようだな。我が低ランクのモンスターに見えるか?」
キュウは見下ろすように、低く威圧的な声で続けた。
「我は、主が飼う最強のモンスターペット、青丘の血を持つ九尾だ」
ウェイスグロで九尾とのニ回の出会いを経て、さらに九尾をゲットした後の行動を合わせて考えた宮本は、思わず笑みをこぼしてしまった。
(キュウ、めちゃくちゃややこしい性格してるな!プライドが高いくせに、実は怖がりで、しかも女性には弱い…w てか青丘ってどこだよ??)
一方、九尾がその姿を現すのを見たアリスは、目をキラキラと輝かせながら感嘆の声を上げた。
「うわぁ!!キュウさまって、IX級の九尾銀狐なんですね!かっこいいー!! キュウさま、宮本さま、少しお乗せいただいてもよろしいでしょうか…?」
少女の考えはいつも純粋で、アリスが期待を込めた目で宮本を見つめると、宮本は微笑みながら答えた。
「キュウがよければ、もちろん」
美少女が好きな九尾は、アリスの言葉を待たず、巨大な尻尾を一振りすると、すぐにアリスを自分の背中に乗せた。
美少女のお願いを断れない、最も高貴な狐族の血を持つキュウだった。
アリスは迷わずスマホを絵里に投げ、嬉しそうに言った。
「絵里お姉さま!写真を撮ってくださいますか? えへへ、今のチャンネルアイコンをキュウさまとのツーショットにしようと思ってますわ!」
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めっちゃかわいいキュウを描いてくださいましたのでxに載せました!気になる方はぜひ~!