ペット管理所の外、花山は顔をしかめながらタバコに火をつけ、煙を大きく吸い込んだ。
その後ろでクモドラガスは元気なくうなだれていた。紫色の瞳には、まだ恐怖の色が残っているようだった。
(まさか、あのキツネが俺のクモドラガスより強いのか? …いや、あり得ない。あの卑怯野郎が何かズルしてたんだ。 うん、きっとそう)
花山のように誇り高い性格の人間、これまで一度も困難に直面したことがない人物にとって、自分の不足を認めるのはとても難しい。
うまくいかないことがあれば、必ず自分が納得できる合理的な説明をするのが常だった。
その思考を胸に、花山はクモドラガスの大きな頭を撫でながら、言った。
「クモ、気にするな。お前のせいじゃない。あの卑怯者が何か手を使ったんだ。次あいつに会ったら、あのキツネを直接飲み込んでやれ。二度と騙されないようにな」
クモドラガスは言葉を発することはできなかったが、幼い頃から花山と過ごしてきたため、主の意図をしっかり理解していた。
だが、どうしても言いたかった。
(いやだ!あのキツネ、怖すぎる!私はもう嫌だ!騙されたとかアホかいなあれ実力差だよ!もう逃げようよ!!!)
その心情を代弁するかのように、クモドラガスの巨大な頭がまるでガラガラと鳴るおもちゃのように左右に振られた。「無理無理、絶対無理!」とでも言っているかのように。
花山はそれに気づかず、余計に熱く語った。
「ほら、そんな顔してないで。お前には無限の可能性があるんだ!あのキツネなんて…お前が一発でやっつけられるさ!次に会ったら、あのキツネを『お前、まだまだだね』って言って飲み込んでやれ!」
花山が全く気づかないうちに、クモドラガスはさらに深くうなだれ、まるでおもちゃのようにその大きな頭をぶるぶると振り続けた。
________________________________________
ペット管理所内では、蒼井の熱心で効率的な手助けを受けて、宮本はすぐにキュウのモンスター身分証明書を作成し、そこにマイクロチップが組み込まれたネームプレートをキュウの首に掛けた。
宮本はさらに300万円を支払い、ネームプレートのカスタマイズを依頼したため、今、キュウの首に掛けられているそれは非常に豪華で精緻なものだった。
チタン合金で作られたネックレス部分には、百個以上のダイヤがキラキラと埋め込まれ、光を反射して眩しいほど輝いていた。
ネームプレート自体はプラチナの殻で包まれており、形はキツネの頭を模したデザインになっていた。さらにその上には宮本の探索者番号と連絡先が彫られていた。
実は最初、キュウはこれを嫌がっていた。
(我はオスだぞ!こんなに可愛らしいネックレスなんて嫌だ!こんなの付けたら…もうお友達(モンスター)に会えないよ……)
しかし、アリスと絵里が何度も「わぁ!かわいい!カッコイイ!」と褒めるうちに、キュウは少しずつ嬉しくなってきた。
(お、なんだ、これ…意外とイケてるんじゃないか?)
そしてついには、満面の笑顔でこう思った。
(へへ、こういうアクセサリーって美少女の前では加点ポイントだよね!気に入ったぞ!ご主人さまありがと~!)
その後、ペット管理所を出ると、蒼井は宮本の指示で三人を装備販売所へ案内した。
一階のロビーは、まるで忙しいショッピングモールのように賑わっていて、カウンターのスタッフたちは数百人もの探索者を一生懸命対応していた。
「宮本さま、こちらには特に良い物はありませんわ。二階に行きましょう。ブラックカードを持っている探索者しか入れない場所ですわ」
アリスは明らかにその場に慣れた様子で、迷わず案内を始めた。
ブラックカードを持って二階に到着すると、蒼井はすぐに責任者を見つけ、宮本たちをVIPルームへと案内した。
「宮本様、ようこそ!当店では、さまざまな武器や防具、機動装備、そしてダンジョン秘宝などを取り扱っております。特に秘宝に関しては、尊敬なるブラックカード探索者には、毎年一度、購入権をお渡ししています。もちろん、武器や防具、機動装備については制限なしです!」
と、責任者がキラキラした目で宮本を迎え入れ、そして微笑みながらタブレットを差し出し、その画面には数百種類の装備リストが並んでいた。
「宮本さま、秘宝は買ったほうがいいですわ!せっかくのチャンスですし」アリスが横から手を添えて勧めた。
宮本はうなずき、興味を示しながら尋ねた。「アリスさんが買った秘宝は何ですか?」
アリスは髪の中から、アメジストのシンプルな髪飾りを取り出した。
「これは『プリアトの守壁』というA級秘宝ですわ。去年買ったもので、今年はまだ何を買うか決めていないですの。『プリアトの守壁』は、使用者が致命的な攻撃を受けた際、一度だけその攻撃を防げるものですわ」
宮本はアリスからその髪飾りを受け取り、冷たい手触りを感じながら、その中に漂う紫色の霧を見つめた。それは、まるで巨大なエネルギーが秘められているかのように感じられた。
責任者は目を輝かせながら言った。
「さすがアリス様、お目が高い!『プリアトの守壁』は一度きりの秘宝ではありますが、その価値は同ランクの他の秘宝よりも遥かに高いのです!」
その後、宮本はタブレットを開き、秘宝リストに目を通し始めた。
リストには、近千種類のダンジョン秘宝が並んでおり、極めて稀少なSSS級の秘宝を除けばほぼすべてが載っている。探索者協会が30年にわたって蓄積してきた、まさに珠玉の品々だった。
S級秘宝——不滅の霊王旗
召喚系特殊秘宝。使用後、500体の鎧骨刀霊を召喚できる。身を完全に破壊されない限り、召喚物は死なない。
価格:800億
S級秘宝——オーロラフェザー
機動型秘宝。魔石を注入して起動、超高速で空を飛べる。
価格:750億
S級秘宝——死瞳の魔眼
精神系秘宝…
価格:500億
S級秘宝——グラビティマウンテン
一度きりの攻撃秘宝…
価格:350億
A級秘宝——ファイアウィール
機動型秘宝…
価格:120億
A級秘宝——タミラの指輪
空間系秘宝…
価格:80億
B級秘宝——影流の幕
幻術系秘宝…
価格:72億
(ダンジョン秘宝たかっ!!!)
宮本は秘宝リストを見ながら、最初に感じたのは高いということだった。
しかし、それらがどれも素晴らしい秘宝であることは否定できないことも確かだった。
ほんの少し前、自分の手に百億もの富を得て大富豪になったことに喜んでいた宮本だったが、今や貧乏人のような気分になっていた。
(お金は大切に使わないと…探索者の出費は、普通の市民とは比べ物にならないな。お金がいくらあっても足りない…)
かつては年収数百万しか稼げなかった社畜だった宮本だが、今では百億の資産を持つ身となった。
とはいえ、過去三十年の節約習慣を短期間で変えることはできなかった。
数百億の価値がある秘宝たちを無視した後、宮本の目が突然輝いた。
彼の視線は、近百種類のA級秘宝の中で最も安価なものに引き寄せられていた。
A級秘宝——狂戦士の誓い
消耗型秘宝(3回使用可)。狂戦士の力を発動し、10秒間痛みを無視し、力が倍増する。副作用は非常に大きく、肉体の強度が狂戦士の力に耐えられない場合、不可逆的なダメージを受ける。
価格:20億
少しの迷いもなく、宮本は「狂戦士の誓い」を指さし、言った。
「これ、買います!」