10分後、川谷は静香をおんぶしながら、屋台へ向かう途中で宮本一行と出会った。
川谷は遠くから急いでやってくる宮本たちを見て、嬉しそうに手を振った。
「おーい、みんな!どうしたそんなに急いで!」
一方、静香は川谷の背中に体を寄せ、わざと親しげに腕を回して、少し色気を感じさせる動作を見せた。
「はじめましての方もいらっしゃいますね。静香と申します、どうぞよろしくお願いいたします」
遠くから走ってくる宮本たちを見て、静香の目には興奮の色が浮かんだ。
(川谷って奴、こんなに仲間がいるなんて…!これはチャンスだわ…この人たちを全員ダンジョンに誘い込めたら、きっと王も私を褒めてくれるに違いない…!)
九尾のおかげで、宮本一行はすでに「静香」が人間ではなく、ダンジョンのモンスターだと知っていた。
そのため、川谷とモンスターの静香が親しくしているのを見て、みんなは少し笑いたいけど笑えない、微妙な気持ちを抱えていた。
(川谷、どうやらモンスターとイチャイチャするのが好きみたいだな…w)
(か…川谷パイセン…可哀想に…)
(川谷おじさんの安全も心配だけど…プッ……)
(モンスターが自分が暴露されていることに気づいてないなら、今すぐに真実を伝える必要はないね…様子を見守るのが一番…)
宮本はみんなに目線を送り、全員笑顔を浮かべながら川谷に近づいた。
実は来る前、みんなはすでに打ち合わせをしており、もしモンスターが川谷に危害を加えなければ偶然に出会ったふりをして、そのモンスターが人間界に潜伏している目的を探ろうという計画だった。
要するに、モンスターと一緒に芝居を演じるというわけだ。
川谷には悪いけど、今は彼に観客役をお願いするしかなかった。
「みんな、何かあった?」
川谷は少し驚きながら尋ねた。
結局、静香が教えた「帰り道」はそんなに簡単に見つけられる場所ではなかったからだ。
神楽は相変わらず真剣な表情で、懐にいる九尾を指さしながら言った。
「川谷さま、キュウちゃんが川谷さまに会いたいって言って、私たちを連れてきたんです」
「そっか、キュウ!僕がいないと寂しいのか!ヨチヨチヨチヨチ」
キュウは全身で嫌がっていた。
「ちょうど良かった!僕も君たちを探していたんだよ」
川谷は嬉しそうに言った。
「静香さんが魂の監獄に関する秘密を教えてくれたんだ!そこには大量の霊魂珠が散らばっているらしい!しかもこのダンジョンは近くにあるんだって。みんな興味ある?」
「ぅわお!なんて素晴らしい話でしょう!」
琴音は目を大きく開き、わざとらしく演技をしながら言った。
「参加しまーす!」
隣にいた寧彩雲も手をたたきながら言った。
「面白そう。私も参加する」
アリスはあまり感情を表に出さず、静かに頷いて言った。
「一緒に行きますわ。皆さまは私のゲストですもの。最後まで付き合わないとですわ」
神楽は黙ってただ静かに頷いた。
山崎はさらにシンプルに、神楽の隣に立ってボディーガードのように構えた。
最後に宮本は爽やかな笑い声をあげ、決めた。
「みんな魂の監獄に興味を持っているなら、今すぐ行こう!ただのSSS級ダンジョンだし、俺たちの実力なら楽しい宝探しのようなもんだ」
川谷は仲間たちがこんなにも急いでいるとは思っていなかったが、ちょうどその時、背中の静香が柔らかな声で宮本の言葉を引き取った。
「おっしゃる通りです!宮本さん…、ですよね。道中、慎さんがあなたのことをたくさん話してくれました!」
(慎さんって…なんだか鳥肌が立つ…もし川谷が真実を知っていたら…山崎の師匠まで名乗ったのに…あらお恥ずかしい)
宮本は笑いを必死に抑えていた。
今川谷に静香がモンスターだと教えると、相手が人間界で潜伏している真の目的を探れなくなってしまうことを理解していた。
とはいえ、今の時間もなかなか厳しい。
30分後、皆は洞爺湖の港に到着した。
アリスの指示で、豪華なモーターボートが皆を乗せ、急速島へと向かった。
ボートの中で、川谷は静香の靴下と靴を脱がせ、冷感シップを取り出して静香に冷やし始めた。
宮本たちはもちろん、川谷がアピールしている最中に邪魔をしなかった。
にしてもこれを目撃したら笑いを堪えるのも大きな忍耐が必要だった。
ウェイスグロ防衛戦以降、日本全土のダンジョンはすべての探索者に無料開放されており、さらにアリスという地元のお嬢様の案内で、全員スムーズに魂の監獄の転送ゲート前に到達した。
その時、静香は川谷の側に寄り添いながら、内心でにやりと笑っていた。
(探索者七人、しかも全員Gamma級…うふふふ…なんて素晴らしい!これで私の功績として全部いただくわ!!)
(川谷…なんかちょっと惜しくなってきたわ。でも、私も王の元に戻る時が来たわ。霊巫の墓場のお宝は本物よ…でも、君たちがそこまで生き残る可能性、どれくらいあると思ってるの?愚かで欲深い、人 間 た ち)
「…私も…本当に一緒に行っていいの?」静香は少し不安そうに川谷に尋ねた。
「もちろん!僕がいるから、静香さんは安心して!必ず守るから!」川谷は胸を張って言った。
「静香さんのお父様の足跡を辿る旅だと思って、一緒に行こう!」
「はい…!じゃあ、お任せします、慎さん」