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第78話 封鎖


黒魂の城の奥深くにある広間では、十三傀皇が一切動かずに静かに立ち尽くしていた。


宮本が予想していた通り、霊巫王の死によって彼らが自我を取り戻すことは…なかったようだ。


…それどころか、先ほど宮本の一撃で頭を砕かれた霊巫王の遺体が、信じがたい光景を見せた。


――その体から、黒い気配がゆらりと立ち上り、次第に空中へと浮かび上がったのだ。


その異様な光景に宮本も眉をひそめ、驚きと警戒の色を浮かべた。


突如、広間に霊巫王の鋭い笑い声が響き渡り、その声は次々と反響し、空気がますます不気味に張り詰めていく。


「宮本よ、私こそが伝説を超え、永遠に君臨する偉大な存在。貴様がどう足掻こうと、私に対抗することなどできぬ。この地で、全知全能の私はまさに神の如き存在だ。死を覚悟しろ」


その言葉に、宮本ですら珍しく内心で静かに動揺した。

(頭すらないのに、まだ動くのか…。まさか、この夜帝の姿が本体じゃないとか?)

(チッ、卑怯なモンスターが自分を神だと思い込んでるなんて、どこまで滑稽な真似をするんだ)


霊巫王が死んだわけではないことに気づいた宮本は、決して落胆することなく、逆に拳を握りしめて大声で笑い飛ばした。


「ハハハッ!死を覚悟しろだと?お前は知らないだろうけどな、俺がダンジョンに来た理由は、最初から死ぬ覚悟で来たんだ。一週間前まではな。

 …でも、今は違う。

 俺がいつ死のうと、その時までお前ら、賎しい化け物どもを片っ端から狩ってやる。お前もその一匹に過ぎん」


明らかに、霊巫王は宮本の言葉の前半部分を理解できなかった。

彼は、宮本が絶望的な病から奇跡的に回復し、Epsilon級に匹敵する強者へと成長した過程や心の変化を知らない。


が、宮本が自分を賎しい化け物と呼んだことに、霊巫王は深い怒りを覚えた。


「私が? 化け物だと?」


霊巫王の声は、怒りに満ちて響き渡る。

「愚かで無力な人間よ。私の目には、貴様らこそが化け物に見える。

 ――死ぬが良い」


その言葉と共に、広間内で静止していた十三傀皇たちが突如として動き出した。

しかし、宮本に向かって進むことはなく、驚くべきことに彼らは急速に広間の外へ向かって駆け出していった。


バン!


扉が重々しく閉じる音とともに、光が完全に遮断された。


その中で霊巫王の遺体が爆発的に膨張し、黒い気配が一気に広がりながら、ジラジラと電気が走るような音が辺りを震わせた。


宮本は動くことなく、ただその場に立ち尽くしていた。

彼の彫刻のような身体には、半分モンスター化した黒い物質が覆いかぶさり、その防御力は途方もないものとなっていた。


配信を見守っていた数百万の視聴者たちは、次々と起こる予想外の展開に息を呑んだ。

緊張感が一層高まり、視聴者数はピークを迎え、まさにサイトの限界を突破する勢い。


:!?

:マジか、死んだと思ったのに

:大丈夫か…

:ポテチ食ってる場合じゃなくなったじゃねぇか

:死体が飛んだ!?

:中途半端なホラー映画より怖い

:霊巫王ってまさか、そういう実体のないモンスター(しかも伝説級)とか?だったらおじさんがどんなに強くても勝てないよ…


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一方、ライーン会長のオフィスでは、会長が険しい表情で画面を見つめながら、何が起こっているのか理解しようと頭を悩ませていた。


(このモンスターの命を保つ最終手段…確か傀儡を使った変わり身術のはずだが、今の状況ではその術と全く関係ないようだ…霊巫王がこんな空間操作の力を持つなんて聞いたことがない。何かがおかしい…)


「…ッ!まさか、異変か!?」


そう思った次の瞬間、ライーン会長は素早く誰かに電話をかけ始めた。

「もしもし、ニーセルか。 …本部にいるのか!ちょうど良かった。 今から私のオフィスに来てくれ。 今、奇妙な現象が起きているんだ。 君のような空間魔法に精通した者に見てもらいたい」


________________________________________


魂の監獄の転送ゲートから約三キロほど離れた地点。


地面には無数の傀儡の残骸が散乱しており、その中には甲冑を纏った二体の巨大な傀儡も含まれている。


その傍らに立つのは、全身を白で覆った男。

彼は眉間にしわを寄せ、小さな目に軽蔑の色を浮かべ、手を背中で組んで冷静に立っている。


「この程度か、期待外れだ」


数歩離れた場所で息を切らしながら立つ花山は、片膝をついて呼吸を整え、遠くの黒魂の城を指差しながら白冥を見つめて言った。

「今さら何言ってんだ!ジーナはすぐそこだ、宮本次郎の配信で得た情報だ…」

「宮本…次郎?」


白冥が少し驚き、考え込むように言った。

「あの、ウェイスグロでNO1のキル数を記録したやつか?」


「おぉ、君も知ってるのか」

「ふーん。あれは俺が参加できなかったからな」


花山は少し視線を外し、白冥に冷ややかな目を向けて言った。

「そんなのどうでもいい!俺たちはジーナを助けに来たんだ、さっさと行くぞ!」

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