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第10話

第二部☆クラウド

第二章☆新団長



「テクサク国に攻め入るメリットは?」

クラウドが聞いた。

「こちらはドラゴンが13騎。必ず勝機はあります」

老騎士がクラウドにではなく、アリスに向かって言った。

「姫様の本来の地位を我が手に!」

「ちょっと待ってくれ!」

盛り上がる騎士団をクラウドは静止した。

「ドラゴン同士で闘う意味は?無益な血を流す意味は?」

「……」

「アリスは確かにドラゴンの王国の血筋をひいてるかもしれん。だが、それにとらわれて、攻め入る意味はあるんだろうか?」

「お主は何が言いたいのじゃ」

老騎士がイライラしながら舌打ちした。

「今こそ我が姫様を盛り上げる時ぞ!」

「だめだ!武力で勝ち取った、血塗られた玉座に座ってどうするんだ」

アリスは、クラウドの額の印が輝くのを確かに見た。正義はクラウドにある。

「攻撃を、取りやめます」

アリスの言葉に、一同息を飲んだ。

「私が王国を治めずとも、適任者がいることでしょう」

「しかし、姫様」

老騎士がすがるように言った。

「私は、なによりも、今、自由であることを嬉しく思います。このドラゴン騎士団を率いるクラウドの言い分はよくわかるのです。私は自由気ままに旅をするこの生活がとても気に入っているのです。いつか、愛する人と巡り会ったならば、次の世代に想いを託します」

「次の世代……。わしはもう居らぬかもしれん」

老騎士が口惜しい気持ちで言った。

「その時は」

クラウドが言った。

「その時が来たら、俺が責任を持って面倒をみよう。その次世代に賭けてみよう」

一同クラウドに注目した。リーダーは彼だ。誰にも異存はない。

アリスは、クラウドに淡い恋心を抱いていた時もあったが、この時、自分の運命の相手は別にいる、と確信した。クラウドの額にあるドラゴンの祝福の印は、王家に入るためのものではなく、ドラゴンを大事に思い、皆を未来へ導く使命を帯びているのだと悟った。

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