第三部☆竜姫
第三章☆サンダー
アレハンドラと姫さんの5匹の子どもたちは、全部オスだった。
4匹はアレハンドラそっくりだったが、1匹だけ姫さんそっくりの白竜だった。
クラウドはこの白竜にサンダーという名前をつけた。
サンダーはとにかく、メロディの後をついて回って、メロディはサンダーを溺愛していた。
「ロイ、湖畔を散歩しない?」
メロディがロイにそう提案したときも、サンダーがぴったりくっついてきた。
ロイはおっかなびっくりでサンダーをチラ見しながらメロディと並んで歩いた。
きゃっ!
メロディがつまづいて転びそうになって、ロイが危ういところで抱きとめた。
ごおっ!
熱波がロイの前髪をかすり、焦げ臭いにおいがした。
「サンダー!」
メロディが怒鳴った。
サンダーは悪びれず、悪いのはさもロイだったような顔をしてみせた。
「ロイに火を噴いたらもう遊んであげないから!」
メロディがそう言うと、サンダーは悲しげに鳴いた。
「サンダー、人間になれる魔法を教えてやろうか?」
ロイは、焦げた前髪を折って崩しながらまじめくさって言った。
「そんなことできるの?」
メロディが目を見開いて聞いた。サンダーも身を乗り出してロイを見つめた。
「本で読んだんだ。西の国で神聖な木の実を食べたドラゴンは人間になれるって」
がおー。
「サンダー?どこいくの?まさか本気にしたの?」
片時も離れたことがなかったのに、サンダーは一目散に西を目指した。
「僕も、サンダーの気持ちがよくわかるよ」
ロイがため息混じりに言った。