第三部☆竜姫
第二章☆テクサク国の内乱
「クラウド、額の紋章が今日はくっきり見えるわ」
サーシャが落ち着かない様子で言った。
「テクサク国王に危機が迫っている」
伝令からそう聞いて、クラウドがドラゴンに乗って駆けつけようとしたら、メロディがロイとアリスとジルベールを連れてきた。
「大勢で向かうと身動きがとれんぞ」
クラウドがしかめっ面で言った。
「大丈夫よ。ドラゴンたちよ!私たちを導いて!」
メロディがそう叫ぶと、呼応するようにドラゴンたちが雄叫びを上げた。
「わしらも行きますぞ」
ドラゴン騎士団の面々も勢揃いして、テクサク国へ向かった。
ジュドール国王はアリスの腹違いの弟だ。北の国が旱魃でやられて大勢の難民が来た時に彼らを国に迎え入れた。その王に反対派がたてついているのだった。
「ジュドール国王に正義あれ!」
メロディが叫んだ。
ドラゴンたちも一斉に叫ぶ。
民衆はびっくりして竜姫を見た。
「平和な生活をわざわざ壊して諍いを起こす者たちよ、この国から出て行きなさい!」
アレハンドラの背中から皆を見下ろして、少女は理を語った。
ドラゴンを手なずけていた一派はどのドラゴンも、頑として言うことを聞かなかった。
どのドラゴンも、メロディの味方だった。
「ジュドール国王のお考えに反対する者たちよ、自分たちで他の土地で自分の国を作ってそこで暮らすのです!」
まごまごしている反対派の連中をドラゴンたちが追い立てた。
「テクサク国にはドラゴンたちの加護があります!わかった?!」
メロディがそう言うと、アレハンドラがぎゃーす、と鳴いた。
無数のドラゴンたちが、竜姫に従った。
「姉上、ご無沙汰しております」
ジュドールがアリスに言った。
「私、もう民間に降りたから、あなたの政治の邪魔はしないわ。でも、有事にはこうして駆けつけるから」
アリスが言った。
「頼もしいお言葉。ありがとうございます」
ジュドールはこうべを垂れた。