第三部☆竜姫
第一章☆クラウドとサーシャの娘
生まれた時から周りにドラゴンがたくさんいた。
メロディはドラゴンたちの習性を肌で感じて育ち、しぐさひとつで意思疎通できた。
父親のクラウドは喜んでいいのか悪いのか悩んでいた時期もあったが、娘のメロディをドラゴンたちに委ねた。
ぎゃーす。
アレハンドラが自分の子ドラゴンたちを引き連れてメロディを囲み、代わる代わるその背中に乗せていろんな場所へ連れて行った。
「もっと高く飛んで!お父さんたちが見えないくらいよ」
合点と白竜が高度を上げた。
「きゃー、すてき!すてき!」
ドラゴンはまんざらでもなさそうにメロディに接した。
「あの娘は竜姫だよ」
ドラゴン騎士団のみんなが口を揃えて言った。
メロディはドラゴンたちを従えて、湖のほとりでドラゴンたちをねぎらっていた。
「うわあ、すごい数のドラゴンだ」
見知らぬ少年が叫んだ。
「このドラゴンたちは、あなたが悪意を持っていない限り悪さはしないわ」
メロディが真面目な顔で言った。
「知ってるよ。クラウドのところのドラゴンだろ?」
「なんでクラウドの名を知ってるの?」
「昔、俺の両親が第七騎士団に同行していたからさ」
「まあ、そうなの」
じゃあ、家族みたいなものかな、とメロディは思った。
「俺はアリスの息子、ロイ」
「クラウドの娘、メロディよ」
二人は微笑んだ。
「さっそくだけど、ロイ。あなた、ドラゴンの背中に乗ってみる?」
「えっ!いや、やめとくよ」
ロイはきびすを返して駆けていった。
「まあ、意気地なしね!」
ドラゴンたちも笑っているようだった。
湖のきれいな水でドラゴンを洗ってあげながら、メロディはロイのことを考えていた。
クラウドのところへ戻って、「アリスの息子、ロイ」に会った話をすると、クラウドは感慨深げに深呼吸した。
「王家の血をひいてる方だから、今度会ったら粗相がないようにな」
「ええー?!」
メロディは目をまんまるに見開いて驚いて叫んだ。
あの意気地なしが王家の血すじ?
ちょっと信じられなかった。