第二部☆クラウド
第五章☆理由
ギルドの関係者以外立ち入り禁止の区画に孵卵器があった。
巨大な卵が五つ!
「姫さん、頑張ったんだなぁ」
クラウドは透明なガラス越しに卵の様子を見ていた。
「あの青竜」
サーシャが言った。
「うん?アレハンドラのことかい?」
「きっと卵のお父さんよ」
「ええええ」
思わず声をあげるクラウド。
「いやしかし、でも」
ごにょごにょ言って混乱している。
「そういうあなたは、彼女はいるの?」
「それとこれとは関係ないだろ」
「あると思うけどなー」
サーシャがいたずらっぽく言った。
「……まあ、いいなと思ってた人はいたよ。きれいで気高くて」
「その人はどうしてるの?」
「他の人と結婚して幸せに暮らしてる」
「告白はしなかったの?」
「捨てたんだ」
「何を?」
「彼女は貴重な食糧を捨てた。そういう人とは一緒になりたくなかった」
「ふうん」
サーシャは胸のペンダントを光に透かして眺めた。
「それは、形見なんだ。大事に持っててやってくれないか?」
「もちろん」
毎日卵の様子を見ているうちに、クラウドとサーシャはだんだん仲が良くなっていった。
「ドラゴンの子どもが巣立ったら、僕の騎士団に一緒に来ないか?」
「そうね、行ってもいいかな」
そして、彼らは団員とドラゴンたちに祝福されて結婚した。