第二部☆クラウド
第四章☆卵
「アレハンドラ!」
クラウドが呼ぶと、上空からアレハンドラが急旋回して降りてきた。
「最近、姫さんを見かけないんだが、知らないか?」
ここでクラウドが言っている姫さん、とはアリスのことではなくて、一頭だけメスのドラゴンのことだった。
ぎゃーす!
「背中に乗ってもいいのか?」
クラウドがアレハンドラの背中にまたがるやいなや、アレハンドラは急上昇して、一直線に山岳地帯へ向かった。
ごう、と風を起こして舞い降りた先に、1人の少女がいた。
「きゃあー」
「大丈夫だよ」
クラウドがそう言ってアレハンドラから降りると、とあるものに目を止めて血相を変えた。
「その赤いペンダントは?」
「死んだドラゴンからもらった爪よ」
「死んだ?」
「白竜のメスが産卵に来て、力尽きて死んだの」
「なんてこった!」
クラウドは本心から悲しんだ。
「卵は大事に温めてあるから、子どものドラゴンが孵ると思うわ」
「姫さんの子ども……」
「死んだドラゴンは街のギルドに買い取られていろんな使い道にされたわ」
「そうか……」
「卵が孵ったら一緒に見ましょう?」
「ああ。孵化するまで毎日通うよ。……君の名は?」
「サーシャ」
「俺はクラウド」
2人は見つめあって微笑んだ。