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第50話 飽くなき速さへの探求





 最強魔法戦士エマの電化瞬間移動。



 ピシャアアンッ ……


 と消えるその速さに呆然とするルナ。何せあのまま速度万倍視していたにも関わらず全く見切れなかったからだ。


 刹那、そこに一つの希望を見出した。


 凄い! サイの瞬間移動や魔界亜空間を経由もしてないのにあんなに速い移動……魔力の使い方次第であそこ迄速くなれるなら瞬間攻撃と闘える!

 ボクもああなれたら!……


「何かスゴかったね、色々。私、サイで街を直して回るよ、ルナはケガ人を治して回って」


「それならのえるもできるよ~。これわ~、いたいのとんでけホースなの。えーいっ」


 プッシャ――――ッ、


 と得意気にホースを掲げたノエル。

 治癒魔法液を含んだシャボン玉ホースから出る多量のバブルを天高くまで飛ばす。



 上空で一斉にパチンと弾けさせ広範囲に降る治癒魔法の雨で大ケガした人も次々と治ってゆく。


「スッゴ~イ! さっすが天才の子!」


「じゃ、私のサイキックとルナの治癒・修復魔法で街を戻そう」




 そして街を守り、修復もした事から市長に表彰されて多額の報奨を得たルナ達。

 更に助けた人達からも個人的にタンマリと貰い、より金持ちになってしまった。


 なので、その多くを恵まれない人へと寄付をした。



 それらがまた徳の倍率を上げている事に気付いていない二人だった。




  * * *




「よおルナ、久しぶり! ワリィな、魔人なら既にノシちゃった」


 タブレットからの依頼案件で駆け付けて来た所にエマと約3週間ぶりの再会。


 相変わらずの容姿端麗さ。その割に飾り気がない所がルナと気の合うエマ。街から僅かに外れた大規模の自然公園で挨拶を交わすルナ達。


 しかしエマは何やら周囲を気にしている。その足元には雷撃の餌食となったであろう黒コゲの魔人が三体倒れていて、まだコゲ臭い。


「ボク等も助けを求められて来てみましたが先越されちゃいましたね~」


「偶々《たまたま》救援要請されてな。ま、瞬殺だけどさ。にしてもかなり方々で活躍してんじゃん。結構ウワサダゾ。しかも人拐いだけじゃなくてパーティーも相当助けてるんだってな」


「ええまあ。でも一度平和になった百年前からすると、ここ数年でかなりの強敵が現れる様になったらしくて、この前もパーティーを解散して引退しようかって言ってる人達も……」


「たしかに徐々にそうなってる。でも地下のスゴイのは比べものにならないってな」


 え、そうなんですか、気を引き締めないと……と、井の中の蛙である事を認識する。


「そうそう、何でもタブレットで集客してるってか、いい方法考えたなぁ。徳も上がって強くなってるし、物理フィジカルだけじゃなく魔力ウィザードリも少しは上がって来てるな、結構結構!」


「はい、おかげでロッドヌンチャクの魔力ワイヤーもかなり遠くまで伸ばせる様になってきました。 総合力上げるのに今必死なんです」


「ウン、感心感心。ところでコイツら一味が拐ってった子達がまだ見つかってなくてな、その辺で逃げようと潜んでんだろ……あっ! いやがったな、逃がすか!」


 魔怪鳥7体が出現。


 それぞれが一人の子を足で掴んで一気に飛び去る。誰より初動の早いルナは千倍フィジカルでスーパーハイジャンプするが届かない。高速で空高くに逃げゆく魔鳥たち。


「逃すか!」

〈投げヌンチャク・ホイルカッター!〉


 摩擦で光る超回転ヌンチャクが弾丸を遥かに超える速度で1体の首を飛ばし、下で待つルカが落ちてきた子を念動力サイコキネシスで減速し受け止める。


 もう一体は更に天方向へと逃げる。


 魔法でホバーするルナは上空へは追い付けないと判断。そこで前世での得意技を発揮。そのまま浮遊しつつ大きく半身をひねって腰を据え溜めを作ると、キツく締めて脇に挟んだヌンチャクに力を込め、エネルギーが限界まで満ちたところで爆裂放出!


物理フィジカル最大マックス × 魔力加速! 』


〈ハイパーレールガンッ!!〉 キシュンッッッ―――



 マッハ1万を超える強烈なエネルギー砲の如き一撃。 遅れてやってくる衝撃波を伴い逃げる巨鳥を巨穴で貫き撃墜する。


 空中で女の子を受け止め、ゆっくり飛んで戻ってくる。


 それに対しエマは雷光瞬間移動ライトニングシフトでの剣撃〈イナズマ斬り〉で5体の足切りを一閃で済ますと落下させる間も無く女子達を救助。


 ピシャアアンと光るその5往復すら一瞬で、誰が見ても一往復に感じる程である。


 そして足から緑色の血を落として逃げる巨鳥に地上から空へと剣と振り上げ、


 雷撃らいげき!!


 巨大斬撃の一閃、即その5体全てを撃墜させる。


「さすが一瞬ですね。やっぱりアイツとやるならその速さが要る。それに比べて……」


いつまでも停滞する課題に鬱々とした表情のルナを見て片眉を上げたエマ。


「地下世界に行く最低条件としてアタシの師匠が言ってたのは、音速の数倍で飛翔出来る事と中型爆弾百発くらい連続防御が必須だってさ」


「音速の数倍……走るなら出来ますが……」


「プッ、そっちが異常にスゴイが、超高速で自在に飛べないのは今後の救助や戦いであまりにも不利だ。例えば今日の様な敵には超音速の鳥や怪物もいる。だから速く飛ぶ方法を教えてやるよ、要するにそれは得意を生かしきるってことだ」


 今最も喉から手が出る程欲しいエマの速さ。あの白い戦士と戦える最大の可能性。 もしやこの人なら勝てるのでは、と思いを巡らしつつ助言を貰える事に前のめりのルナだった。








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