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第56話 ギガダンジョンの真実





 北の果て、ギガダンジョン。


  空から見るそれは小国がスッポリ入る程の大きさでポッカリ口を広げた超巨大クレーター。



 そこへ遥か遠くから飛来する美しき女戦士。何時になく神妙な面持ちで臨むエマが復仇ふっきゅうの誓いを胸にたった一人で乗り込んでゆく。


「いよいよ敵地で仇討ちが始まる……父さん、母さん……」


 今や完全に再興されたダンジョンへの苛立ち。更に巻き返されている事実が許し難い。


「ここで暴れりゃ良いのか……にしてもなんてデカイ穴なんだ……数百キロはあるか……中には多種、無数の怪物達が居るらしい。

 ま、ステータスを上げるのにちょうどいい。ヤバけりゃ逃げ足だって誰より早い訳だし……さあて、キモ試しに行ってくっか!!」


 雷鳴一閃。クレーター中心の上空へ電化移動し、遥か上空から見下ろすと穴の中は広大な大地。山、丘、魔物の巣で満ち、その巨穴からゾロゾロ這い出てく異形達。


……これが第一層か……正に一つの国だな……ヤツラが地上でワルサを……いくら殺ってもキリない訳だ。んで、中央に数十キロの穴。


 あの中が第二層、レイさんが行った所。そこでショックを受けて帰ってきた……そっちが見たい。ザコ相手じゃつまんねぇ


「アタシらしくイキナリ第二層、拝ませてもらおうかっ!」




 亜光速で第二層の空間中央へ現れて、浮遊したままその様子に違和感を覚える。


 ここが第二層……

 縦横にこれ程の巨大な空間、よく第一層が崩落しないな。かなり深い所なのか……


 んっ、無い!


 確か6層目で支配者を倒した『かの伝説』では垂直に続く大穴が空いてると聞いたが……とすると穴は仮に塞いである? まさか……


 エマの片目が異様に光り出した。


 底部中央の地からまるで山の様に盛り上がりドーム状に顔をのぞかせる直径千メートル程の灼熱に焼け付くマグマの塊の如き超巨大な球塊。


 その威容に暫く茫然と眺め続けるエマ。



 何故ならまるで太陽が地底に半分めり込んで存在してるような光景だったからだ。

 その巨大熱球のそこかしこから炎の触手が生み出されては戻って消える。さながら太陽のプロミネンスの如く。



 なっ……アタシの魔眼が全開に反応してる!……


 あれは禍々《まがまが》しい魔力の塊……ありゃぁ三層への穴を塞いでるひとつの怪物だ! あれじゃ近付くことも出来ねえ熱地獄。


 かつて300M超級のバケモンを《超核分裂》〈ヌークリヤディビジョン〉で葬ったレイメイBROSでさえ手も足も出ずに帰って来たわけだ……


 成る程コレが第二層の絶対防御か……



 苦い顔で全てを悟ったエマ。径1000mのマグマ怪物では核攻撃でも通用しない。ましてや雷撃では蚊がさすのに等しい。突破は百パーセント無理だ……と。


「ちっ、だがこれじゃオモシロくねえ、経験値だけでも上げてかねえと来た意味もない。

 取りあえず何やらいろんなのが飛んで来やがったから暴れさせてもらうとするか!」



 音速レベルで飛び交うおびただしい怪物たちに囲い尽くされるエマ。


「少しでも多くを倒してステータス上げてくかぁ! まずは穴の中のヤツらの事だ、どうせ光に弱いヤツらが多いんだろ、なら手始めに目潰しだ! 電光魔術・最大光量っ!」


〈フラッシュメルトォ!〉


 音もなく十秒程も太陽の如く眩い光球と化すエマ。高感度の目を持つ地下の異形や魔鳥類群は視覚を焼かれ、方向を失って無茶苦茶に飛び狂う。


 だが目の退化した魔物の強襲が。


「ンで、暗所で聴覚頼みのヤツらには、エアー雷撃! 鼓膜破りの……』


〈サンダーデトネイ卜!〉


 魔剣が発動するまるで巨大爆弾が耳元で連続暴発したかの如き雷鳴の轟音。

 それが立て続けに響き、第二層全体に耳をつんざき腹を揺さぶる圧倒的衝撃波の充満と共振で鍾乳石さえ崩れ落ちていく。


 フン!こんなんだけでも何千匹と落っこってく……「さあ、そろそろ強いのが来んだろ」



 悠然とやって来る百M級の邪竜。光る巨大なつり目の瞳孔は縦に鋭く閉じて睨んでいる。

 まだ距離がある、と気を抜いていると――――


 突如吐いた青白い高速炎が


 ボフォアァァァ―――ッ


 と超広角かつ遠距離まで及ぶ。別族の魔怪鳥が数百体も蒸発。


「おっと、アタシじゃなきゃ逃げられなかったな、さすが第二層……まずはコイツに……」


〈雷撃、十・連・発っ!〉


 耳元で激しい勢いで何かが爆裂する様な響き。頭から尾部までの10連撃でブ厚い皮膚は大きく裂けて焦げ付くが、邪竜の魔力で超速回復。

 悠然と向きを変えて向かって来る。


「やはりな、ま、雷雲の中でも生きる種族だ……ならこれはどうだっ、フンッ!」


『バチィッ』と一閃、電化で瞬動。邪竜の頭に立ち、光る魔眼の威を妖しく輝く魔剣エレクトラへと遷して数倍に巨大化。




 その脳天に深々突き立てる。




〈ズクワァッ〉

 ギアァ―――――――ッ!



 耳をつんざく邪竜の叫喚を不敵な冷笑で下に見た刹那、ふっと真顔になるや、まるで別れ話の如く素っ気なく囁いて頬の横のエレクトラのヒルトを握り直す。



粋雷すいらい……〉



 ヴヴヴヴ……ジジジ……ヴヴヴヴ……


 巨大な体躯のブ厚い皮膚のそこかしこから漏れ出るプラズマのスパーク。内側からその全てを電磁焼きし尽くして巨剣を引抜く。


 脳死したそれを無下に蹴り落とすと、邪竜はその眼と口から白煙を上げてゆっくり墜落して行く。



 息つく間も無く現れたのは魔力ステータス60万の高位魔導師。いきなり百分身の幻術で一斉に詰め寄る。雷光瞬間移動ライトニングシフトで20分裂した全てのエマが各々5体に切り込む。

 と、敵は幻術だがエマは全てが実体、相手の防御のカマに剣が当たったその実体のみに集中攻撃、


「こいつだぁ! 〈雷撃っ!〉」


 雷獣を瞬時に数匹召喚し、食電吸収させる魔導師。



 口元がニヤリと歪んでいる。







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