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第58話 エマとの実戦練習






「エマさ~んっ! コンニチハ! 今日はこんなボクを手合わせに呼んでくれてホントにアリガトウございますっ!」


 相変わらず美しいデスネ~! カッコ良いデスネ~ッ! と、憧れの戦士からの練習試合とも言える御誘いにキュンキュン浮かれまくるルナ。


「いやスマン、大分あちこち声かけたんだが誰も実践演習パートナーやってくれなくて」


「ルナみたいなバカじゃなきゃ誰もこんな恐ろしいオファー受ける人居ないって」


 立会い人、兼サポーターとして付いてきたルカが心配そうにボヤく。


「光栄です~! ボク、どうしても早くステータス上げなくちゃならなくて……」


「こっちも今のままじゃ到底満足出来なくなってな。移動前後の攻撃や防御のスピード……物理最速のお前が相手で得るものも有るかって……こないだの衛兵魔人の戦い見てな」


「魔法移動スピ―ドが最速のエマさんの練習相手になるかは分かりませんけど、少しだけ対策とかを考えて来ました!」


「ほ~、そりゃ楽しみだ。今は誰が相手でも何かしら気付きを得たくてな。

 それに移動ばかりが早くても次の攻撃初動の反応やら何やら……そのテの動き、あの時のお前のは守りに徹してたが尋常じゃなかった……何か武道でもやってたろ」


「はい、多少。でもそんなに強いのにさすがの向上心ですね……その貪欲さ、勉強させてもらいます!

 ……移動・攻撃力・遠隔攻撃……そのどれもエマさんに到底及ばない。だから相性とか色々相棒と考えて来ましたよ」


 鼻でため息を軽くつき、正にその辺を考えてた、とでも言いたげな面持ちでルナに問う。


「相性か……なあ、こないだ言いかけたジャナス戦士ってどんなか知ってるか?」


「アンドロジャナス族……はい、実はボク、以前遭遇して大事な人を奪われて……その時に斬られました。でも運良く王宮付き戦士のサイ瞬間移動に助けられました」


「ほ~、アタシもだ……」


「ええっ! エマさんでさえ追いつかれた? ショック! その速さが目標だったのに、じゃどうすれば……。

 で、アタシもって、ファスターさんに助けられたんですか?!」


「いやちがう、アイツとは面識あるが、こないだのは女でサイキック部隊の副隊長。ソフィーっていう可憐でカワイ気もある妖精みたいな美女だ」


 えっ! エマさん程の人が美女と? 更にカワイって一体 ?! とルナへの『禁句』が出ると目の色が早速変わる。

 このむすめのコレに対する執着は既に病的でさえある。察したエマは、


「フッ、アタシがニガ手なタイプなわりにアイツだけはキライになれなくて……まあ、なんつーか、清楚が服着て歩い……イヤ、飛んでるってカンジだ。

 ホラそこのお前の相棒つれもなかなか可愛いが、その路線を極限まで美化したカンジで……


 そう、スレンダーで真っ白い肌にほんのりと桜色の頬、あおく海の底の様に憂いを秘めた優しげな眼差しと満月の光の様に控え目かつ欠けのないエレガントな雰囲気をたたえて。

 そしてそれに相応ふさわしい光輝く長いプラチナブロンドヘア、加えて涼やかで品のある声……」



「って、ルナ、お前ヨダレ垂れてないか?」



 え? ぁいえ、じゅるっ……


 と慌ててソレを吸って否定したが、既にその横のルカは汚物を見るようなさげすみの眼差しとなっている。


「今、あのジャナスと戦えるのはあの二人だけだろう。だがアタシもこれで終わるつもりはない。

 そこで新ワザを習得してみた。ソイツのお披露目も兼ねてってのはどうだ?」


「スゴイ……エマさんと本気でやれる! これ以上の練習はない! 怖いけど強くなるためには絶対に必要なんだ!……ぜひお願いします!」


「ん。やるからにはリアルがいい。互いに治癒魔法はかなりだから胴体までは切っても良し」




――――準備の体慣らしを終えて


「じゃ、始めるか……まずはこっちから行くぞっ……

 ライ卜ニングシフト・イナズマ斬り!」


 エマさんいきなり来る! なら万倍速&サイキック予知!……


 ピシャアアン!


 宙からのひと太刀がイナズマの如く光速でジグザグと切り込んで来る。ん、移動が光速でも実体化して切り込む迄の動きは人の数百倍まで。ならそこから万倍速で受け止めて反撃だ!


 しかしエマもルナの爆速蹴りが触れたと同時にエレミラージュで電化、即雷撃で返す。それを避けるルナ。


「ほう、雷撃を避けたか……お前のサイキックの予知力がそこまでとは……」


「一度、雷撃でほぼヤラレてますからね。でもこの予知は相棒からのリアタイ指示のコンビ技です!

 じゃ、こっちもいきますっ、今の最大倍率3万倍で……衝撃波アタック……」



 ヒュシャアンッ!



 超速ヌンチャクバリアからルナの放つ大衝撃波が襲いかかると、猛攻を完全に避けた筈のエマの両足から血飛沫が舞う。鞭を振り抜いたルナがささめく。



乱撃ジャンブルウィップ!〉



「な……予測外?! 実体攻撃が触れたのにエレミラージュが発動しない?!」


 距離を取り、切断されかけた両足を即、治癒を施すエマ。ルナは練習戦を考えリーサルクロウの超振動ティアー(引き裂き)はせず、超ワイヤ―のムチでスパッと切るに留めた。


「ほ~やってくれるわ……アタシの亜光速はお前の移動速度の数百倍。……だがそのムチはお前の移動より遥かに速い。エレミラージュの不発条件の亜光速、お前のムチは波の伝達と魔力加速でその速さになってる!

 更に間合いを許したのは超々音速特攻から亜光速のヌンチャク回しの乱雑な衝撃波で揺さぶった上で更に読めない軌道の光のムチ……

 剣戟魔法戦ばっかだったからその手の太刀筋ならいくらでも見切れるが、こんなのは見た事がない」


 ……やっぱ大事なのは移動速度だけじゃねぇ、都度の状況判断と初動、そして攻守とも予測されない事が大事! コイツその点でサイッコーだなっ! マジ期待以上に練習になる……


「なら出し惜しみせずこっちも行くとしよう……いくぞっ! 今度はいつ行くか分からんぞっ」







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