三体目の準戦士までルナの阻止に出現。
即奇襲される。 正にルナが射抜かれる直前、
『させるかァ!』
ルカの刺し違え覚悟の合気剣術で特攻、
ドシャァッッ!
その者をロッドで貫き撃破。しかしルカも敵仲間に頚くびの半分を切られて動けなくなる。
そこへのトドメの一撃に横目で気付くルナ。
だが既に遅く
《しまったっ、ルカがぁ―!》
ルカ―――ッ
慌ててルカ救出へと反応。
だがもう間に合わないと絶望した瞬間。
「キェ――――――――ッ」
光の矢のごとき光焔が飛び込む。それは巨大化ファイヤーバードの猛突撃による阻止。
絶対に戦闘参加禁止の言いつけを破り、見かねたノエルが我慢し切れず遂に参戦。
《またねーねがしんじゃうぅ――っ!
そんなのだめぇ―――――っ!》
怒り泣きのノエルがルカの
バッフォォォォォォォォォ―――――――ン
ルナとルカを直径三百M級のとぐろを巻く超高温巨大火炎球で一瞬にして覆う。
加えて同時に治癒魔法ホースで液を首へと吹き付ける。
余りに分厚い大炎幕にただ二の足を踏むジャナス準戦士。
『ねーねのくびがなおるまでぜったいまもる―――っ』
と大絶叫するポシェット内のノエル。
全魔力を爆発的に振り絞り、どうにかルカの
『ノエッッ! アリガトウッ!』
直ちに守護を再開するルカ。
圧倒的不利な中、その持てる術と力を使い、只ひたすらにルナを護り続ける。
体を刻まれ内臓も潰され満身創痍。血飛沫と壮絶な痛みの中で、
―――ねえ、今、キミのための役に立ててるよね。ルナ。
この為に転生してまでここに居るんだから。
ホント嬉しいんだ……本望が叶って。
嘘じゃないよ。
でももし心残りがあるとすれば、それは永遠に結ばれる事のない特殊なジェンダー同士って事。
ホントはいつか結ばれて、ずっとずっと一緒に歩みたかったな……
でもこんな夢のような日々をくれたんだもん。悔いなんて有るわけないよ!
―――だからルナ、この命、尽きるまで頑張るよ!
休む間もなく襲い来る触手と迫る残り時間。
『このままじゃ間に合わない……』
と、バラシ作業を止める訳には行かないルナ。
『ぐはぁっ』
と遂に腹を抱え込み片目を塞がれるルカ。
目と口から血を流し瀕死となったルカを見ていられなくなりテレパスで叫ぶルナ。
《いやだっ、ルカが死ぬのは見たくない! もういいから逃げて!
今のボクは高強度だからまだ暫く攻撃されても死なないから大丈夫。
……でもひとつだけ覚えておいて。
……本当は大好きだったよ……
ズット言ってあげられなくてゴメンネ。 でもここでお別れだよ》
《バカァ!……私は離れないよ。最後まで守り続けてやる、何があってもっ!》
《ルカァッッ! 絶対に命を盾にしない約束の筈! そんな事するならボクはこの作業を今すぐやめるっ、そっちと闘う! 逃げないなら絶交するぅ――――っっっ!》
《落ち着いて! 思い出してルナ、私は先に死なない! 約束した!》
《嘘っ! どう見たってさっきも今も! キミはこの前ボクの為にその命と引き換えに守ると言い切った! そんなの絶対嫌だって言ったよ! 信用出来ない!》
《だったらその話、続きがある! ルナも私を守って! 互いに命と引き換えに守れば約束は守られる! ならば問題ない! ……そしてルナは既に前世でそうしてくれた! だからここでも守り切ってよ!》
《でも互いに命と引き換えにというなら、一緒に死んじゃうことだって…………それじゃ意味がないっ!》
《そうかな……もしそうならキミはあんなに苦しまなかったんじゃないの? 互いに命をかけて守り合って共に死ねてたら、それも幸せだったんじゃないの ?! 》
『!!…………』
…………お兄ちゃん……もし一緒に死ねてたら『私』は……
《――――そうかも……知れない……》
《ならルナ、今誓ってよ! 生きるも死ぬも守り合って幸せになれるなら、私だけ助かるよりいいはず! だから今ルナも誓ってよ!》
《ルカ………… 分かった! この命、キミと引き換えだ!》
《その言葉、約束したよ!》
―――エマさんに教わって魔法で速く飛べる様になった時、
なら今だってルカを激早治癒できる筈!
《ルカ、もっと背中を近づけてキミを感じさせて! 見ずともボクが全て治癒する! そしてサイで戦いながら脳だけ守れ! 何度内蔵を潰されようと全て治してみせる! ……だからその痛みと苦痛に耐えてボクを守りぬけっ!》
押し寄せる準戦士たちの多重連続攻撃。無数のレーザーを弾き、剣撃をファントムアームズで狂わせて更に逆襲するルカ。
反撃しながら重傷と治癒を立て続けに繰り返される地獄の苦しみ。それでも命にかえて守ろうと抗う。
ルナもフィジカル全開でリーサルクロウを限界を超えて振るい続ける。それにも魔力が必要にも関わらず更にルカの全力治癒もしながら。
しかしその消耗で高活動倍率を保てずに遂に万倍を割り込むと、火傷、裂傷、打撲の傷で次第に血だらけになって行くルナ。
――――エマさんとの訓練でジャナスの瞬間剣撃対策でロッドを長時間振り続けられるよう言われた通りにやっといて良かった……
でもさすがにここまでやるとは……苦しい……厳しい……けど、ルカだってもっと苦しいんだ
だから負けられない……第3層への扉を開けるまでは!
もうダメだと思うたび、あの少年少女 のパーティーの言葉を繰り返し自分に言い聞かせる……
《――――徳を持ってこの世界に転生《うま》れてきた意味、誰かの為に生きて、死ぬ。だから戦うんだ!》
更に激しく向かってくる巨大触手・プロミネンス。
負けるもんかと心の叫びと共に勢いを増して迎え撃つルナ。
苦しく激しいせめぎ合いの中、こんな風にいつ迄も苦しかったあの日々を思い出す。
親の虐待に耐えて、兄と命をかけて守りあったあの頃。
そして一つの想いに辿り着く。
――――お兄ちゃん……
いつ如何なる時も守ってくれた……
……どんなイジメも
……どんな虐待も
だから自己犠牲の末に救われたって、到底感謝なんて出来なかった……
申し訳ない気持ちしか残らなかった。
それでもあの日々は今も忘れない。
仮に守りきってくれてなくても関係ない。
だってあの人は……あんなに気弱だったのに。
生き地獄の中でボクのために全てを尽くしてくれた……
あの約束通り守りぬいてくれた……
だったら、やり抜いてくれたあの人の想いを、今こそ引き継ぐんだ!!
そして人知れず誰かのために役立って散って行けるのなら、あの日出来なかった事を、成し遂げられるのかもね……
そう、お兄ちゃんに魂を救われて生まれ変わった時から只ひたすらにその恩に報いたくて走り続けて。
それで一度『自慢の妹』って褒めてもらえた時には死ぬほど嬉しくて……
だからせめて、せめてあと一度だけ、そう思ってもらいたかった……
そして訪れた最大の機会。
どうしてもあの事故の時に役に立って命を捧げたかった。
……でもそしたらきっと、お兄ちゃんが苦しむ事になってたんだよね。
そんな事は望まない。
でも今なら誰も不幸のドン底に落とさずに人の為に役立てる。
そう、この世界にボクが来た意味を!
存在理由を!
見い出せるんだ……
そしたらきっと、あの人にも褒めて貰える……
自慢の妹として……
あの時出来なかった恩返しの分を……
……今こそ誰かのために……
だったらこの力が尽きるまでやるから、
どうか最後まで見守ってて!
後ろ向きなだけじゃない、成長したところを !!
だからそう!
コレがボクの……
恩返しだぁ――――――――――っっ!
全力のムチにシンクロして脳裏を巡る万感の想い
命を預けあった兄とのあの日々が走馬灯のように駆け巡る
泣きぬれる頬の涙をまき散らしながらただ死力を尽くすルナ
その猛攻に畏怖した怪物も数百倍の触手を一斉に放ち爆襲
だが神懸る今のルナを、もう止められはしない
更に弾け飛ぶ溶岩塊と火の粉がそこかしこにバラまかれ
それはさながら橙色に煌めく小宇宙
無数の星塊を撒き散らして無双し続ける光のムチ
その想いが生み続ける、
それはまるで神々しき上昇銀河――――
体力と魔力を削る強襲は、ゆうに2時間を超える。
やがてその直径も半分、そして1/4……と削いでゆく。
だが遂に全体力、魔力、そしてその命さえ限界が迫るルナ。
さすがにこれで全部は無理かな……
でも一緒に守り合って死ねるんだね、ルカ。
これはきっと幸せな事なんだよね。
マグマ塊はまだ残ってる……
ああ、気も遠くなってきた
……持ってあと数分。それでも……
此処で果てるとしても……
今出来る事を出し尽くすまでは―――