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第3話 緑葉高等学校

   目を覚ますと綾人は「チッ」と舌打ちをすると体を起こし顔に手を当てた。

 「何なんだよ」

 深いため息をつき呟くと身支度を整えるためにベッドから出て風呂場に歩いて行き、身支度を整え光輝が通っていた緑葉高等学校に行った。

「さーてどうやって入るかなぁ」

 校門で困ったように綾人が頭をかいた。

「お前、なんでここにいる?」

 聞き覚えのある声に振り返ると、そこには志鷹が相変わらず怖い顔して立っていた。

「いや、日記にいじめらてたってあったからなんかそっから情報ないかなぁって。志鷹さんは何故ここに?」

 すると志鷹は「ふっ」と笑みを浮かべた。

「お前になぜ教えないといけない」

「いや何でって·····」

 面倒くさそうに頭をかいた。

「俺はただ、凛さんの家族を探してあげたいだけだ。そのためには情報がいる。志鷹さんが調査してる事件に光輝が関わってるんだろ?ならお互いに情報がいる。だったら俺たちが敵対してるだけ無駄じゃないか?」

 志鷹は無言で綾人に背を向け学校の中に入って行った。

「ったく調子狂うなぁ」

 頭を搔くと綾人も校内に入った。

 2人が学校に入ると、放課だからかちらほらと廊下を歩いている。2人とすれ違うと不審者を見るような不思議そうな視線を向けてきている。そんな視線を受けながら、2階にある校長室に行きノックをした。

「はい。どうぞ」

中から声に迎えらガチャリと校長室の戸を開けるとそこには、いかにも「校長室です!」といった身なりの丸々とした男性と、スーツを着た少しオドオドした細身の女性が立っていた。男性は2人を見ると愛想のいい笑みを浮かべた。

 「どうもどうも。よくお越しくださいました。わたくしはこの緑葉高等学校の校長室をしております高瀬と申します。」

「急な連絡なうえお忙しい中、お時間頂きありがとうございます。高西警察署の志鷹です。あと、こちらは」

そう切ると志鷹は綾人を見た。

「月見里探偵事務所の所長をしています。月見里 綾人です」

「なるほど。あとこちらは吾妻光輝くんの担任の鈴木花子先生です」

 スーツを着た鈴木先生はぺこりと頭を下げた。      

 「で、えーっと吾妻くんのことですよね。吾妻くんは成績は普通ですが、とても大人しくい生徒でトラブルを起こすような子ではなかったのですが⋯。まさか家出をするとは⋯」

「家出?」

 少しムッとしたように呟くの聞いた志鷹はチラリと綾人を見ると、綾人が続けるより前に話はじめた。

「不躾な質問で申し訳ないのですが、光輝くんがいじめらていたという話がありましたが、実際のところはどうでしたか?」

 「イジメ⋯ですか」

 そう言うと校長は額をハンカチで拭いた。

 「いえ、そのようなことはありませんが。そうですよね鈴木先生」

 高瀬がギロりと鈴木先生を見ると鈴木先生はオドオドとすると下を向いた。

 「は⋯はい」

 鈴木先生はまるで蚊がなくような声で返事をした。

 「ということですので、誰から聞いたかわかりませんがそのような事実はありません。他に何かありますか?」  

 その言葉に2人は顔を見合わせた。

 「いえ、特には」

 「そうですか。それではこれで」

 何か言いたそうに綾人は校長と先生を見るが、校長と先生に見送られ2人は校長室をあとにします。

「あの様子だと絶対なんかあるよなぁ」

 綾人は自分の頭をガシガシとかいた。

「まぁ学校の「名誉」·····って物が大切なんだろ」

「「名誉」ねぇ·····」

 綾人は苦々しく言うと志鷹と1階におりると、夕日が差し込む生徒がいないはずの教室から話し声が聞こえてきた。

 「⋯カタシロさま⋯に⋯の」

 その言葉にハッとし教室を見た綾人はツカツカと近づいた。

「おいおい」

 志鷹の声を無視し綾人は教室の前に行き、ガラリとドアを開けた。中には、いきなり空いたことに2人の女子生徒が驚いた表情を浮かべこちらを見ていた。

 「だ·····誰ですか?あなた」

「不審者?!誰か呼びますよ」

 「ちょ·····ちょ·····ちょっと待った。俺は探偵とこっちは刑事だ」

 ドアの向こうにいる志鷹を綾人は指さした。すると2人は顔を見合わせた。

「刑事さんと探偵さんがなぜここに?」

「ちょっと吾妻光輝くんのことについて聞きに来たんだが·····何か知らないか?」

 スタスタと近づきながら志鷹が尋ねると2人は顔を見合わせた。

 「すみません。私たち1年生なのでちょっとわからないです」

 「すみません」

 2人は申し訳なさそうに言った。

 「そっか。なら·····カタシロさまについて教えてくれないか」

 綾人の言葉に2人は少しバツの悪そうな顔をしたあとに廊下の方を見てから少し小声で話しはじめた。

 「カタシロサマ」は、去年当たりから流行りだした人を呪う方法で、まず、この近くにある廃神社で「カタシロサマの使い」って人から「ヨリシロ」?をもらうんです。」

 その後を別の女性生徒は先を続けた。

 「その「ヨリシロ」に呪いたい相手の名前を書いて4日間持って5日目にヨリシロをもらった神社の御神木の下に埋めたら「カタシロサマ」が名前を書いた相手を呪ってくれるんです。ただ、ヨリシロを埋めているところを見られたら、逆に呪い殺されてしまうらしいです」

「なるほどな。カタシロサマは薬系でなくまさか呪いだったとはな」

「·····こんな非現実的なこと簡単に受け入れるな」

 口元に手を当て考えている綾人に呆れたように志鷹は言った。

「俺はこーゆーのには選りすぐりしないたちでね」

 綾人はイタズラっぽく笑うと志鷹は眉間に皺を寄せた。その時だった。

「こら!あなたたち!何してるの?下校時間はとっくに過ぎてるわよ!」

 振り返ると、教室の外には夕日をバックに鈴木先生が腰に手を当て立っていた。それを見た女性生徒2人は慌てて自分の荷物を手に逃げるように教室を走って出て行った。

 「もー。あの子たちったら。すみません。ご迷惑かけませんでしたか?」

 そう言い鈴木先生は2人にむき直り困ったように笑った。

 「いえ。貴重な話を聞かせてもらえました」

 綾人はニコッと笑い答えた。

 「そうですか。あの⋯先程の話なんですが⋯」

 そう言い鈴木先生は後ろを振り返り再び2人を見た。

「さっき校長はイジメはないと話していましたが⋯本当は違うんです。吾妻くんは本当は男子生徒3人にイジメられていたんです。」

 「なるほど。·····そのいじめていたのは、沢辺くんと宮下くんですか?」

 鈴木先生はハッとなり聞いた志鷹を驚いた顔で見た。

 「なぜそれを·····」

 「日記に書いてあったんです」

 綾人がそう続けた。

 「なるほど。でも校長はこのイジメのことは口外するなと口止めされていたのでご両親にも話すことができなくて⋯。本当にあのタヌキは自己防衛しか考えてなくて!生徒をなんだと考えているのかしら!!」

 そう言いながら鈴木先生の首がヒュルヒュルっと伸びはじめた。

「?!」

 2人は有りえないこの光景に目を丸くしていた。すると、ハッとした鈴木先生の首はまたヒュルヒュルっと元に戻って行った。

 「あ、やだ私ったら····· えっとすみません今のは忘れてください!」

 そう恥ずかしそうに言うと逃げるように逃げ去ってしまった。

「えっ·····首·····」

 綾人が志鷹を見ると一瞬、驚いた表情をしていたがすぐに冷静な表情に戻りスタスタと教室の入口に向かった。

 「·····行くぞ」

 今のは何だったんだろうと思いながらも夕日の中、あなたたちは校門を抜けた。

 「で、今からどうする?」

 綾人が 志鷹を見るとまた志鷹は眉間に皺を寄せた。

「なんで俺に聞く?」

「んー何となく?」

 ヘラヘラっと笑う志鷹はムッとした顔をあからさまにするが、すぐに盛大な溜息をついた。

「行くとしたらその儀式とやらに使う神社だろ」

「そうこなくちゃな」

 二カッと綾人は笑った。志鷹は困ったような表情を一瞬するがすぐに歩き出すが、ハタと足を止めた。

 「·····来ないのか?」

 綾人は笑みを浮かべスタスタと早歩きで志鷹に歩み寄った。



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