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エピローグ

 「うっし」

 掃除を終え、パンパンと手を払った綾人は真新しい事務所を見渡し伸びをすると、机の上にあるラジオをつけ窓を開けた。窓ならは秋風が事務所内に入ってきた。ラジオから流れるニュースからは、6月から続いていた連続切り裂き魔が未だに犯人の目星すらついていないことへの不安の声が流れていた。

 (まぁ⋯犯人は俺だちがぶっ潰したから⋯そりゃ捕まるわけないわな。⋯それに鬼がなんて話しても誰も信じないだろーしな)

 苦笑いをし窓の外を見ていた。


 あれから綾人は病院の部屋のベッドで目を覚ました。そこはいつだったか夢で見た病室だった。慌ただしく来た医者に、自分は家族とともに切り裂き魔に襲われ、4ヶ月意識不明になっていたことを聞かされた。志鷹のことや鬼のことを話し、医者から脳に何かダメージがあったのかと疑われ余計な検査をさせられたのは言うまでもない。そこで綾人は自分が人間もとの世界に戻ってきたんだと理解した。

 失言のせいでした検査を含め全ての結果に異常がなかった綾人はそこからリハビリをし無事に退院をした。

 退院後、綾人は小さな部屋を借りそこで探偵事務所をはじめたのだ。


 (実はまだ黄泉の国で、鴉鳥さんや甘美瑛さんが来るような気もするもんなぁ)

 ふわりと風が綾人の短い髪を揺らした時、事務所のチャイムが鳴った。

 (おっ。珍しい。客人か?依頼だといいんだけどなぁ)

「はい。今開けます」

 そう思いながら扉に近づき扉を開けた。

 「はじめまして。探偵事務所の所長の月見里 綾人です。ご依頼ですか?」

 そう言い顔を上げた綾人の顔に驚きと笑みが浮かんだ。

「中へどーぞ」

 綾人はそう言うと客人を中に招き入れ扉を閉めた。

 〜完〜


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