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第13話 みちるとかなこと魔神ギガデウス

かなこ「ねえみちる。みちるは私の仲間だよね!」


みちる「敵」


かなこ「シャットアウトやめて」


みちる「ずっとお前を敵だと思って生きてきたから」


かなこ「何わたし今から殺されるの」


みちる「で、なんなんだよ急に」


かなこ「いや、昨日さ。仲間って大切だなって思う出来事があってね」


みちる「ほう」


かなこ「あれはちょうど今日と同じように、桃の香りが鼻先をくすぐる春の初めの頃だったかな」


みちる「そら昨日の話だからな」


かなこ「ちょうどこんな感じで学校から帰っていた私は不意にパンが食べたくて震えてきたの」


みちる「震えるのはえーよ」


かなこ「そこで私は前から気になっていた近所のパン屋。一見すると大きなダンジョンのような佇まいの家庭的なパン屋さんに入ってみたの」


みちる「ものすごい矛盾してんな」


かなこ「パンの香りに胸を躍らせた私は薄暗いダンジョンの奥に待ち構えるおばあさんにパンを注文したの」


みちる「ボスキャラみたいだなおばあさん」


かなこ「しかし……」


みちる「おっ?」


かなこ「私の注文を聞くなりおばあさんは急に怒り出しました。『そんなくだらないもんはウチには置いてないよ!ウチはコッペパン一筋なんだ!他をあたりな!』と」


みちる「本格派かよ」


かなこ「突然のことに戸惑う私。しかしもう全身アブトロニックとなっている私は勇気を振り絞っておばあさんに自分の思いを伝えました」


みちる「パン食べた過ぎてもはや人間やめてやがる」


かなこ「『ざっけんなババア!!客にパン出さないパン屋がどこにあんだテメェ!!潰すぞコラ!!』」


みちる「勇気振り絞りすぎだろ」


かなこ「『さっさと私の注文したカリフォルニアロールを持ってこいババア!!』」


みちる「これ完全にお前が悪いじゃねえか」


かなこ「本格派の店ってこれだから嫌なんだよね。融通が効かないっていうか」


みちる「本格派じゃなくてもダメだろ」


かなこ「技巧派の店ならなあ」


みちる「技巧派のパン屋ってなんだよ」


かなこ「怒りのあまり震える私」


みちる「店入る前から震えてたろお前」


かなこ「そんな私の一瞬の隙をついてハイキックを繰り出すババア」


みちる「なんでだよ」


かなこ「ガードが遅れた私はテンプルにモロにいいのをもらってしまう」


みちる「パン屋で何やってんだお前ら」


かなこ「ババアは『これでも食らえ!』と叫び私の口にパンというパンを詰めていく」


みちる「震え止まりそうでよかったな」


かなこ「私の体を満たしていく激辛ハバネロソーセージパン、インスタ映え必至のタピオカパン、期間限定ピカチュウパン」


みちる「どの口でコッペパン一筋とか言ってたんだババア」


かなこ「私も負けじと怒りの10連タップを繰り出す」


みちる「負けてんじゃねえか」


かなこ「ババアの怒涛のパン責めから命からがら脱することに成功した私は」


みちる「タップしたからな」


かなこ「涙ながらにやっとの思いで言葉を絞り出した」


みちる「なんて」


かなこ「『ババア!もう二度とパン焼けない体にしてやるからな!明日は舎弟を引き連れてこの店ぶっ潰しにきてやるから首洗って待ってろ!』」


みちる「戦況にに対して威勢が良すぎる」


かなこ「で、その昨日の明日が今日なんだけど」


みちる「ん?」


かなこ「話は最初に戻るけどみちる。みちるは私の舎弟だよね?」


みちる「微妙に変わってんじゃねえか」


かなこ「お願いだよみちるー。私と共に戦ってよー」


みちる「敵だからやだ」


かなこ「そんなこと言わないでよエネミー」


みちる「敵って認めてんじゃねえか」


かなこ「ババアのほうももうシャワー浴びてるって」


みちる「ほんとに首洗ってんじゃねえぞババア」


かなこ「まあそんなこんな言ってる間に件のパン屋に到着しちゃったわけだけど」


みちる「うわっ、ここかよ。ほんとに一見ダンジョンにしか見えないな。なんだここ」


かなこ「さあ、入ろう」


みちる「ちょっと待てよ。わたしいかねえよ」


かなこ「あ、セーブしとく?」


みちる「ボス戦かよ」


かなこ「お願いだよー。ちょっとだけだから!絶対何にもしないから!」


みちる「やましい誘い方やめろ」


かなこ「最悪の場合はちゃんと法廷で証言するし、差し入れも面会もするから!!」


みちる「なんで私が主犯なんだよ」


かなこ「だめ?」


みちる「……しょうがねえなあ」


かなこ「さっすが!!それでこそ私の舎弟!」


みちる「相棒とか言えよ」



…………………。



みちる「中暗いしやたら広いし。完全にダンジョンだろもうこれ」


かなこ「すごいよねー閑静な住宅街に」


みちる「絶対異世界だろここ」


かなこ「あっ、あいつだ!」


魔神ギガデウス「ギエエエエエ!グラッグラッグラッ!」


かなこ「みちる気をつけてね。昨日より巨大化してる」


みちる「おい誰だよあいつ」


かなこ「だからあれが魔神ギガデウス。通称ババアだよ」


魔神ギガデウス「ギエエ!ギエエ!」


みちる「想像と違い過ぎるだろ。これ身長5メートルくらいあんぞ」


かなこ「でもババアだよ?」


魔神ギガデウス「ギエッギエッ?」


みちる「どこにババア要素あんだよ」


魔神ギガデウス「ギエラッ」


みちる「魔神はいいタイミングで相槌打つのやめろ」


かなこ「でも熟れたメスの体してるでしょ?」


みちる「生々しい表現やめろ」


かなこ「それにババア今いくつだっけ」


魔神ギガデウス「今年の6月で88歳になりますね」


かなこ「ほら米寿」


みちる「てめえババアめちゃめちゃ意思疎通できんじゃねえか。なんだったんださっきの鳴き声」


魔神ギガデウス「キャラ作り大事かなって」


かなこ「というわけでみちる!これからババアと戦うよ!」


魔神ギガデウス「フハハハハ!貴様らのような虫ケラが何匹集まろうと同じことよ!捻り潰してくれるわ!」


みちる「早速キャラがブレてんぞババア」


かなこ「いくよ!シャドーメテオシンク!」


『魔神ギガデウスに50のダメージ!』


みちる「当たり前のように魔法使うのな」


魔神ギガデウス「スーパーファイアー!」


『かなこに53866のダメージ!』


かなこ「なんの!ダークエリススラッシャー!」


『魔神ギガデウスに35のダメージ!』


魔神ギガデウス「ス、スーパーハイパーファイアーサンダー!」


『かなこに76231のダメージ!』


みちる「ギガデウス語彙がもう限界だぞ」


かなこ「これでどうだ!サウスローズサイレントワールド!」


『魔神ギガデウスに12のダメージ!』


魔神ギガデウス「ぐあああああもうダメだあああ」


みちる「マジかよ」


かなこ「よし!あと一息だよみちる!」


みちる「お前タフ過ぎんだろHPどうなってんだよ」


かなこ「さあ後は!みちるが!!トドメを刺すだけだよ!!」


みちる「お前やっぱ私を主犯にする気だろ」


かなこ「みちるの呪文が必要なんだよ!さあ早く!」


みちる「呪文なんて知らねえよ」


かなこ「なんでもいいよ!魔神みたいな酷いセンスでもいい!」


魔神ギガデウス「あああああああああ」


みちる「魔神が精神的に効いてるぞ」


かなこ「みちる早く!」


みちる「ええと………じゃあ……ダークドラゴンビーム!」


かなこ「ブフッ」


みちる「おい笑うな」


魔神ギガデウス「ビームは草」


みちる「テメェが言うな」


『みちるはダークドラゴンビームを唱えた!魔神に2のダメージ!』


魔神ギガデウス「ぐああああ」


かなこ「やったよみちる!魔神を倒した!」


みちる「今のタイムラグなんだったんだよ」


魔神ギガデウス「死んだ」


かなこ「やった!魔神死んだ!」


みちる「自己申告かよ」


かなこ「やった!みちるが魔神をやった!ひいてはパン屋のおばあさんを殺った!!みちるが!!」


みちる「是が非でも私を主犯にしたいみたいだな」


魔神ギガデウス「ぐおおおおおお」


みちる「うわっ、なんだこれ」


かなこ「え!?魔神ギガデウスの姿が変わっていく!?」


魔神ギガデウス「ぐわあああ倒されたことによりワシにかけられた呪いが無事に解けて本来の優しいパン屋さんの姿に戻っていくうう」


みちる「わかりやすい説明ありがとうな」




……………………。




おっさん「ふう……。二人ともありがとう。君たちのおかげでようやく人間の姿に戻れたよ」


みちる「呪い解けたらババアどころか普通のおっさんになるとはな」


かなこ「今日一番の衝撃だね」


みちる「他にもっと色々あったろ」


おっさん「本格派のパン屋を目指していたんだが、パン作りに熱中するあまり魔神ギガデウスに憑依されてしまってね」


みちる「因果関係が全然わからん」


おっさん「熟れたメスの身体にされてしまっていたんだよ」


みちる「生々しい表現やめろ」


かなこ「とりあえずこれで明日からまた無事に美味しいパンが焼けるね!」


おっさん「そうだ!お礼におじさんのパンを食べさせてあげよう!!」


かなこ「わーい」


みちる「せっかくだしありがたくごちそうになるか」


おっさん「任せなさい!腕によりをかけて最高の本格コッペパンをご馳走しよう!!」


かなこ「あっ、わたしカリフォルニアロールで」


みちる「悲劇を繰り返すな」


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