ハァ……ハァ……。
まずいな勇者……このままだと俺たち全滅だぞ。
…………なあ勇者……どんなことがあってもあいつを……マリアを守って生きていくと約束してくれるか?
そのままの意味だよ。お前の覚悟を聞いてるんだ。
そうか……その言葉が聞けてよかった…………。
『戦士はヘイトポーションを飲んだ!』
へっ、わかってるよ!
俺がこのポーションを飲んだことによって、この戦闘中あの魔王の攻撃は俺にしか向かない…………そうだろ?
3分だ。それ以上は持たない。
うおおおおおおおおおおおお!!!!
『戦士の攻撃!しかしかわされてしまった!魔王の攻撃!戦士に890のダメージ!』
ぐっ……やっぱつえーなコイツ。
止めるな勇者!俺はここで死ぬ!お前たちのためなら命なんて惜しくない!
俺に攻撃が向いている間にお前たちがこのボスを倒して世界を救うんだ!!
なんだよ泣くなよマリア。お前に涙は似合わねえぜ。
…………俺な、お前のこと好きだったんだぜ……あぁ本当だ。
平和な世界で幸せになれよ……!!!
さあ勇者!早くコイツを倒してくれ!!
いいから!止めるな!!
このポーションの効力は俺か敵が死ぬまで切れることはない!もう後戻りはできない!!
『残り2分30秒』
いいからやれ!やるんだ勇者!!
……ちょっ、もう本当に早くやれ!!俺の心配はいいから!!もうこれどうにもなんないから!!
いやもうここで俺たちの回想とかいらないから!泣いちゃうから!
幼少期の出会いから話すな!長いだろ!!!
ん?なにマリアどうした?
なに……?え、好きだった?俺のこと?
お前が…………………?
えええええええ!?!?
マジで!?えっ、両思いだったの俺たち?
うっわマジかよ。えっ、ちょっとそれ先に言ってよマジで。うーわやっちゃったこれ…………
『残り2分』
ああああああまずいまずいまずい!ちょっと勇者早く倒してこれ!!
いやもう死なない!全然死にたくない!!!!こうなれば話が変わってくんだよ分かれよバカ!!!!
さっきから俺サンドバックだから!!めっちゃ痛いからマジ死んじゃうから!!
おい勇者!!おいって…………なんだその顔。
えっ、えっ、えっ、なにお前もマリアが好きだったってなんだよそれおい!!
おいやめろやめろややこしくすんな。今俺たち両思い判明したところなんだからやめろ!!
おい片膝つくな!!こんなときに愛の告白するな!それ今から死ぬ奴の特権なんだよ!!今後も生きる気マンマンの奴はやめろ!!
てかマリアが俺のこと好きって言ってたのお前も聞いてたろ。なあマr……
………っておいおいおいおい揺らいでんじゃねえよなんだよその顔お前おい!!!!
やめろやめろ見比べるな!!もうすぐ死にそうなボッコボコの奴と超健康な奴で天秤に掛けるな!!
こっち絶対不利だから!!!!
『残り1分30秒』
ちょっ、とりあえずこの話は置いとこうぜ!今全然それどころじゃないから!
もう余命が100秒切っちゃってるから!!!
一旦倒そ?一旦倒して3人でゆっくり話せばいいじゃん!ね?ね?
おい勇者なんだよそのペンダント!!
ってそれ俺がこの前ドロップした激レアアイテムじゃん!!
お前が売り飛ばして金にしようぜっていうから預けたのに!!
やめろ!かっこよく差し出すな!!卑怯だぞお前!!物で釣るな!
やめろやめろ受け取るなマリアおい!!
首につけるな!!勇者につけてもらうな!!くそ!!
『残り1分』
おいおいおいおい!!もうヤバイよ!もう冗談じゃ済まねえよこれ!
大丈夫なの!?この茶番で2分も無駄に過ごしちゃったけどあと1分で魔王倒せるの!?
おい!手を握り合うな!!
もう完全に勇者ルートに乗りかえやがってマリアお前!!
あ!?うるせえ!!この先マリアを守って生きていくとか誓ってんじゃねえよ!!約束!?知るかそんなん!
マリアもペンダントを強く握るな!!俺の名前を小さくつぶやくな!!形見感を出すな!!まだギリ生きてんだよ!!!!
お前らせめてそういうのは俺が死んでからやれバカ!存命中にやるな!!
「声が聞こえる気がする……」じゃねえよ爆音で叫んでんだよ!!ずっと聞こえてんだろ!!
完全に俺のこと死んだ扱いで進めるのやめろよ!
『残り30秒』
あぁもうダメだわ……完全に詰んだわ俺……。
うわあやだなあ。こいつらのために死にたくねえな。
なんだよ。
うおおおおじゃねえよ今更攻撃してんじゃねえよタコ。
完全に帳尻攻撃だろそれ。頑張ったけど救えませんでしたー感欲しさだろわかってんだよクソが。
『残り10秒』
『9』
『8』
クッソおおお死にたくねえ!!
「7!」
「6!」
てめえ勇者何カウントダウンしてんだよ!!
「「5!!」」
「「4!!」」
ああこいつら二人して!!手拍子やめろお前ら!!
「「2!!」」
「「1!!」」
お前らぜってえ許さねえ!!許さねえからなあああああ!!
‥‥‥‥‥‥。
…………ん?
おい…なんで攻撃しないんだ魔王……。
あと一撃で俺死ぬんだぞ?
えっ、ちょっ、待て待てなんで泣いてる?
え?かわいそう……?俺が?
やめろ!魔物に同情される覚えは…!
ちょっ、やめてほんと……泣いちゃう!泣いちゃうから!抱きしめないで…!
…………うん…辛かった……。
……だって俺頑張ったのに…仲間だったのにあいつらすごい酷かった……好きだったのに……。
ううん。魔王悪くない…。
魔王だもんしょうがないよ。
何見てんだよお前ら。見せもんじゃねえぞ。
え?あ、ううん。大丈夫痛くないよ。
うん。大丈夫大丈夫。ありがと魔王。
……というわけだからお前ら。
俺、魔王側につくから。
うるせーよばーか。お前らが悪いんだろうが。
俺はこれから何があっても魔王と生きてくって決めたから!誓ったから!
お前らは二人で好きにやってろばーかばーか!
ていうか魔王こいつらやっちゃおうよ!
うん!倒そう倒そう!こいつら倒しちゃって世界を恐怖で支配しよう!
言っとくけどお前らのせいだからな!
お前らが俺という嫉妬と怒りのモンスターを作ったんだからな!ばーか!
よしやっちゃえ魔王ー!!!
『魔王の攻撃!戦士に450のダメージ!』
あっ………。
俺そういえばヘイトポーションを………。
うーわやっちゃったこれ。