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第18話 この戦いが終わったら星空の下で待つ貴方に想いを

姫「ん…………」


『コンコン』


勇者「姫……いるか?」


姫「…………勇者?どうしてここに」


勇者「メイドさんに聞いたんだ。夕食の後はいつもここにいるって」


姫「そう……」


勇者「大事な話があるんだ。入ってもいいかな」


姫「ダメよ」


勇者「ダメなのか?」


姫「常識で考えなさいよ」


勇者「じゃあこのままでいいや。扉越しでいいからそこで聞いててくれ」


姫「…………」


勇者「俺さ、君も知っての通り別の世界で一度死んでからこっちに転生してきたんだよ」


姫「ええ、そうだったわね」


勇者「初めは驚いたなあ……まさかこの俺が本当に異世界転生なんてものを体験するなんて」


姫「ねえその話長くなるかしら」


勇者「大切な話なんだ」


姫「私も今大切な時間なのよ」


勇者「ごめん、君の大切な時間を奪ってしまって」


姫「問答無用で奪うのね」


勇者「あの時、見知らぬ世界で野垂れ死にしそうになっていたこの俺に手を差し伸べて命を救ってくれたのが……君だったね」


姫「そんなこともあったわね」


勇者「あの時さ、心に誓ったんだ。俺の新しい人生はこの人に捧げようって」


姫「なっ、何よ急に」


勇者「ははは、ごめんごめん。ちょっとクサかったよね」


姫「いえ別にそんなクサくなんて………えっ、クサ……?クサいの……?」


勇者「ん?」


姫「いえなんでもないわ続けて」


勇者「あれから、色んなことがあったなあ……姫のおかげでこの王宮の使用人として雇ってもらって、そのあと俺の勇者としてのスキルが覚醒して」


姫「ごめんなさい、本当に長くなるのなら後でゆっくり聞きたいんだけど」


勇者「今、俺の想いを聞いて欲しいんだ」


姫「その前に私の願いを聞いて欲しいんだけれど」


勇者「まあとにかく、俺は勇者として覚醒して魔王を倒してこの世界を救うことができた」


姫「そうね、本当に貴方には感謝しているわ」


勇者「魔王と戦う前に決めていたことがあるんだ」


姫「?」


勇者「この戦いが終わったらここで待つ君に想いを伝えようって」


姫「絶対にここでは待ってないわよ」


勇者「姫、俺は君のことが」


姫「ごめんなさい。そこから先は言わないで」


勇者「どうして?」


姫「なんとなくわかるから……その、こんな状態じゃなくてもっとちゃんとしたところで聞きたいから、だからちょっと」


勇者「好きだ。結婚したい」


姫「うわ言った」


勇者「嫌だった?」


姫「いや……じゃないけど……今じゃないっていうか…………」


勇者「どうして?この世界も平和になったし、今が最高のタイミングじゃないか」


姫「むしろピンポイントで最悪のタイミングなのよ」


勇者「返事を……聞かせてくれる?」


姫「少し時間をもらえないかしら」


勇者「もちろん。俺は何日でも待つよ」


姫「10分でいいわよ」


勇者「えっ、10分でいいの」


姫「えぇ、だから10分間ちょっとそこを離れてなるべく遠くで待っててくれないかしら」


勇者「じゃあ、10分後にまたここに」


姫「来なくていい来なくていいから。こっちから行くから」


勇者「そうかい?じゃあなんかその辺の廊下とかにいると思うから見つけたら声かけて」


姫「あんたもっと雰囲気とか考えなさいよほんと……南の方にバルコニーがあるでしょ?あそこで待ち合わせましょう。せっかく今夜は星も出ていることだし」


勇者「でも外寒いし‥…ここじゃだめ?」


姫「ダメよ。ここが一番ダメよ」


勇者「うーんわかった。じゃあ10分後にバルコニーで」


姫「えぇ」


勇者「じゃあスタート」


姫「開始の合図やめて」



20分後



姫「遅くなってごめんなさい」


勇者「長い戦いだったね……」


姫「しばくわよ」


勇者「じゃあ……返事を聞かせてもらってもいいかな?」


姫「…………勇者。貴方は信じられないほどにバカで、人の話聞かなくて、デリカシーがなくて、そしてバカよ」


勇者「へへっ」


姫「今のところ褒めてないわ」


勇者「あれ、そっか」


姫「でも、貴方と一緒にいると本気で怒ったり笑ったりできる自分がいることに気づいたの。貴方とならきっとこの先も退屈しないでしょうね」


勇者「姫……」


姫「この想いは貴方が世界を救った勇者でなく、ただのバカな使用人だったとしてもきっと同じよ」


勇者「…………」


姫「勇者、私は貴方が好き」


勇者「それじゃあ……!」


姫「プロポーズ喜んでお受けいたします。勇者様」


勇者「やったあああああああああああ!」


姫「フフ……これからよろしくね」


勇者「じ……実はさ、こんな物も用意してみたんだ」


姫「すごい……!こんな綺麗な指輪いつの間に?」


勇者「へへへ、実はオーク討伐に行った時に、倒したオークの身ぐるみ剥いで色々漁ってたら出てきてさ」


姫「聞くんじゃなかったわ」


勇者「でも指輪自体はすごいいいやつだから」


姫「はあ……まあいいわ。じゃあ勇者……その指輪、この左手の薬指につけてくれるかしら?」スッ


勇者「えっ……いま?」


姫「ちょっと今更なに照れてんのよ。やめてよこっちまで恥ずかしくなるじゃない」


勇者「いやそうじゃなくて……」


姫「何よ」


勇者「一応聞くけど……」


姫「何よ早く言いなさいよ」


勇者「ちゃんと手洗った?」


姫「洗ったに決まってんでしょこのバカ!!!!!!!」


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