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血を分けた存在

人間の眷属の少年と話し終え、私は自らの部屋へ移動していた。


「何を考えているのかしら…あの子」


自らの血を分けた片割れの吸血鬼のことを思い出す。

元”人間”のあの事の子だ。きっと何か考えているのだろう。


「少しは報告してほしかったのだけど…」


あの子は移動中に教会の人間によって足止めされたと聞く。

私の片割れがそんなへまをするとは思えない。

つまり何かしらの狙いがあったか…あるいは、予想を超える大物が出てきたか…


「どちらにしろ帰ってきたらお説教ね」


そんなことを決めつつ私は少年のことを思い出す。


【人間】の少年。

吸血鬼を怖がっている反面恨んでいた瞳。

その瞳は一見暗く生気がないように見えたが、奥底にはふつふつと燃える復讐心が見えてくる。


「好かれてないことは事実ね…」


はぁっとため息をつき机の上にある地図を見る。


「あの少年が作成を手伝ったというけど…」


好かれてないと決めつけはしつつも、こうやって吸血鬼側に有利な情報を提供してくれている…


「やっぱりあの子が眷属にしたのかしら」


少年の血液を飲んだ時、本来眷属の血に順応するはずの主の血がなかった。

それどころかその血はまるで少年の血液に入るどころかまるで少年を守っているかのような挙動を取った。

つまり、あの少年がという所の確認が取れていなかった。


「どちらにせよ、有益な情報をくれる人間を殺す必要はない。眷属ということで通してよさそうね」


部下にそう伝える書類を作成しペンを投げ出す。

机にあるのは書類の山。本来は2人で片付けるはずのその仕事は今や一人で片付けるしかない…


「早く帰ってきなさいよね…」


リエと名乗ったらしい吸血鬼のことを思い私はそうつぶやくのだった。

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