吸血鬼が言い残して言った言葉に引っかかりを覚えていた俺はその言葉を復唱する。
「私たちはあなたが思う化けモノ。人を食料としか見ていない化け物よ…か」
確かに吸血鬼は人を食糧としてしか見ていない化け物…のはずだ。
だが、あの吸血鬼の表情はどこかさみしげだった。
それに、館にいたころの吸血鬼も俺を襲う様子はなかった。
(もしかして…思っている吸血鬼は少なかったりするのか?)
そんな思考が一瞬頭をよぎるが、過去の経験がそれを否定する。
(いや…吸血鬼は化け物だ。じゃなきゃあいつは死ななかった)
過去、同じ最前線でいた一人の少女
俺に最前線での生き方を教えてくれた少女。
吸血鬼と分かり合えると信じていた少女…そいつは【手土産】と称し目の前で吸血鬼に殺され死体を持ち帰られた。
「クソッ」
あの時もし殺されたのが俺だったならばどれだけよかったと願ったか。
あいつはそう思わせるほどやさしくて、親がいなかった俺には温かかった。
同じぐらいの見た目立ったはずだったのに、それだけ大人びていた。
「いや…違うか」
【大人になるしかなかった】…そう考えた瞬間怒りがわいてくる。
吸血鬼だけじゃない。人間にもだ。
「誰かこのクソみたいな戦争を終わらせてくれよ」
そもそもなぜこの戦争が始まったのかも、なぜ今もなお争い続けているのかもわからない俺はそう叫ぶしかなかった。
そう叫ぶぐらいしか…俺にはできなかった。
「少し…探索するか」
こみあげてくる怒りを収めるため俺はベッドから降りる。
(体調は万全じゃないが、この環境、万全なほうが珍しい」
そんな文句を吐きつつ俺は部屋を出るのだった。