「ええ。私は構わないけど。特に用事があるわけじゃないしね。久しぶりに誰かにネイルが出来るのね!楽しみだわ!」
「お前がするっていうより、2人にやって貰う感じかな。コボルトの爪は人間とは異なるから、お前のやり方が通じないと思う。」
「そうなの?」
「元が犬の魔物だからな。人型の犬って感じで、爪もそういう感じなんだ。凄い細くて長いし、おまけにかなり尖ってる。あと猫みたく引っ込めてしまうことも出来るんだ。」
「へーえ!」
「コボルトのネイルはオシャレというより、戦闘用の実用的なものでな、精霊魔法が付与された魔宝石をデコラティブするんだ。」
「おもしろそう!付け方にルールはあるの?こうしないと発動しないとか。」
「いや。特にないらしい。だからコボルトによっては可愛くデザインした付け方をしたりすることもあるんだそうだ。拳闘士っていう殴り職があるんだが、拳闘士の場合は爪に強化魔法付与のネイルをデコラティブして、爪を引っ込めて戦うんだそうだよ。」
「ジョージの店はコボルトの伝統を広める為の店なんでしょ?なら店でやるネイルも、その魔法付与された魔宝石を使うってこと?」
「まあそうなるな。攻撃出来る危険なものは使わないが、例えば防御魔法とかな。防水魔法は特に人気が出ると思ってる。」
「防水魔法?」
「貴族は革を使った服を身に着けていることが多いんだが、革は雨に濡れるとシミになるし、手入れも大変だろう?それを防ぐ為の防水魔法さ。この世界には傘がないからな、防水魔法を施した布をかぶってやり過ごすんだそうだ。まあ、レインコートだな。それを都度施したり外したり出来たら便利だろう?」
「確かに!それは売れそうね!便利な魔法があるのねえ……。化粧出来る魔法とかもありそうね。ダイエット出来る魔法とか……。」
それはなんか魔法っていうより、サプリとか薬って感じだな。
「そういう魔法があるかは分からないが、コボルトの集落には若返りのお茶があってな。既に王女様と元王女様に売れてるよ。」
「──若返りのお茶ですって!?」
円璃花がガバッと立ち上がる。
「ああ、それも主力商品にする予定で、」
「なんでそんな大切なことを言わないの?」
「え?ああ、そんなに大事か?」
俺の言葉に食い気味にかぶせてくる円璃花の勢いに困惑しながら答える。
「当たり前じゃない!すべての女性の夢よ?ああ、なんてことなの。理想の見た目に生まれ変わったはいいものの、どうやってキープしたものか悩んでいたのに、そんな素晴らしいものがあるだなんて!異世界様々だわ!」
「……まだ必要ないんじゃないか?」
「バカね!こういうのは早ければ早いに越したことないのよ。手遅れになるんだから!」
「そ、そうか……。じゃあ、帰りに甘さ控え目の美味しいケーキを買ってきたから、ご飯を食べたらその時一緒に出すから飲もう。」
俺は帰りにエドモンドさんに頼まれた商品を商人ギルドに登録に行ったら、近くに以前ニュートンジョン侯爵夫人がお土産に持って来たケーキ屋さんがあるのを見つけたのだ。
「この世界のケーキ?凄い!楽しみだわ!」
円璃花が嬉しそうに言い、遊んでいたカイアとアエラキもこちらを振り返る。
「ピョル?」
「ピューイ!」
カイアとアエラキが顔を見合わせて何やら話しているかのように見える。
はて、何やらとても嬉しそうだ。どんなケーキだろうね?とでも言っているのかな?
そういえばホットケーキ以来、ケーキらしいケーキを食べさせたことがなかったな。
俺が子どもの頃に最初に作っていたのはもっぱらスイーツで、実はスイーツのほうが得意なんだよな。また何か一緒に作ろうかな。
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