「ピョルッ!ピョルルッ!」
「やりたいそうです。」
「そう!それは良かったわ。なら、2本の根っこで立つ練習をしておいてね。それが出来ればあとは簡単だと思うから。」
「よしカイア、ちょっと歩いてみるか?2本の根っこでも怖くなくなるようにしよう。」
俺はカイアの2本の根っこを俺の足の甲にそれぞれ乗せると、両枝を掴んで持ち上げ、
「イッチニ、イッチニ。」
カイアを足の上に乗せたまま歩き始めた。カイアが楽しそうにキャッキャッと笑う。
「なにそれ、楽しそうね!」
「俺が子どもの頃に母にやって貰った遊びです。楽しいですよ。」
「私にも出来るかしら。」
「アシュリーさんにも出来ると思いますよ。
足に乗せて一緒に歩くだけですから。」
「そう、じゃあお願い。」
「え?」
「乗せて歩いてくれるんでしょう?」
「アシュリーさんをですか?てっきりカイアを乗せて歩きたいのかと……。さすがにサイズ的に子ども相手でないと難しいですね。」
キラキラとした目で俺を見つめてくるアシュリーさんにそう言うと、とてもガッカリした顔をした。無邪気な人だなあ。
「……手を掴むのは難しいので、腰を掴んでもよろしければやってみますか?」
「やってやって!!」
カイアが空気を読んで俺の足の上からどくと、アシュリーさんが乗ってくる。
まあ、人間よりは軽いから大丈夫か。
俺はアシュリーさんの腰を持って、イッチニ、イッチニと、部屋の中を歩き回った。
「なにこれ!楽しい!楽しいわ!」
「……私もやって貰おうかしら。」
「ララさんもですか!?」
そんなわけで順番待ちをすることになったララさんの後ろに、前足をちょこんと垂らしたアエラキが並んでいるではないか。
「アエラキは小さ過ぎて、俺には逆に難しいぞ?カイアでも結構ギリギリサイズなんだ。
すまないが諦めてくれ。」
俺が申し訳なさそうに言うと、カイアがピョルルッ!とアエラキに声をかけ、アエラキの後ろ足を根っこの上に乗せて、両枝でアエラキの前足を掴んで、俺の真似っ子をして、イッチニ、イッチニ、とやりだした。
「え、円璃花!」
「はいはい。撮ればいいのね?」
アシュリーさんを足の上に乗せて歩きながらそう言うと、円璃花が2階にトントンと上がっていき、俺の部屋からデジカメを取って戻って来て、イッチニ、イッチニをしているカイアとアエラキを、写真とムービーにおさめてくれた。……ふう。危ない危ない。可愛い2人の姿を撮り逃がすところだった。
「アシュリーさん、そろそろ代わって下さいよー。私もやりたいです。」
「ええ?もう?」
そう言いながらアシュリーさんが俺の足の上から降りたので、今度はララさんを足の上に乗せて、イッチニ、イッチニと歩くことになったのだった。
テーブルの前の椅子に腰掛けながら、早くしてねー、とララさんに声をかけるアシュリーさんは、もう一度これをやって貰うつもりでいるようだった。──そんなに楽しいのか?まあ喜んでくれたなら何よりだが。
円璃花はそんな2人の様子を見て、フフと笑う。ララさんやアシュリーさんのコボルトの見た目はあまり気にならないようだった。
それならアシュリーさんは私がやりましょうか?と円璃花が言い出し、俺と円璃花がそれぞれララさんとアシュリーさんを足の上に乗せて、カイアはアエラキを乗せたまま、全員で家の中をえっちらおっちら歩き回るという、なんとも不思議な光景が出来上がった。
……別にいいんだが、何してるんだろうな俺は、とちょっと思ったのだった。
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