だがこの機会は逃すわけにはいくまい。
コボルトたちは元魔物の現獣人だ。だがいまだに魔物として迫害する人間たちに、集落に忍び込んだ盗賊たちを捕まえて役人に引き渡しても、なんの罰も与えられずに釈放されるという扱いを受けている。
そのイメージを払拭し、なおかつコボルトたちに新たな収入源をと、俺の出資で王宮近くの、貴族がたくさん集まる街で、コボルトの店を始めることにしたのだ。
先代勇者であるランチェスター公と行動をともにした、元拳闘士のオンスリーさんも店に立ってくれることになっている。
コボルトの店を始めるにあたり、最終的にコボルトたちに店を譲渡するつもりでいる俺は、譲渡時にかかる税金対策の為、俺から借金をする形で、あらかじめコボルトたちが店の権利を持つ状態で、店を始めてもらうつもりでいた。
俺は完済するまでのんびり待つつもりではいるが、借りる側からすれば莫大な借金は不安でしかないだろう。
そこにきて、隣国からのむこう30年間の仕入れ保証。しかも契約書つき。コボルトたちも安心してくれるに違いない。
「……やらせていただきます!」
こうして俺は、ジョスラン侍従長の還暦祝いの為の料理を作ることになったのだった。
しかし引き受けたものの、この世界の珍しい食材なんて、……おそらくだが、魔物を使った料理だよな?
俺からするとすべての魔物が珍しい食材なんだが、オーク肉なんかは普段から食べられているというし、なんだったら珍しいんだろうな?
俺は王宮から帰る足で、冒険者ギルドに立ち寄ってみることにした。
いつもの受付嬢が朗らかに俺を出迎えてくれる。
「あの……すみません、少々お伺いしたいのですが。」
「はい、なんでしょうか?」
「王族の方でも珍しいと感じる食材になるような魔物とは、どんなものがいますでしょうか?」
「王族の方でも……ですか?」
「はい。」
「そうですね……、おそらくは大抵のものは召し上がられていると思いますので、代表的なもので言うのなら、まずはアビスドラゴンでしょうか。」
「アビスドラゴン?」
「深淵を覗くものと言われるドラゴンです。火山の火口に暮らしていて、普段は出てこないので害はないのですが、繁殖時期にのみ山を降りて、動物や他の魔物、はては人間までも襲うと言われています。」
……つまりは人を食べるということか。人を食べた魔物を食材にはしたくないなあ、さすがに。なんとなく気持ちが悪い。
だが、その繁殖した子どもならどうだろうか?まだ人を襲っていない筈だから、それなら別に気持ち悪くないな。
「それとカセウェアリーですね。」
どこかで聞いたような単語だな。
「それはどのような?」
「同じく火山の近くか、地底火山の近くに暮らすと言われる魔物です。火を食べて生きると言われる鳥の姿をしていますが、詳しい生態は分かりません。」
ああ、カセウェアリーって、ヒクイドリってことか。元の世界でも、世界一危険な鳥だったよな。以前討伐したダイアウルフといい、元の世界に存在していた動物が、魔物になっているケースのひとつなんだろう。
しかし火山か……。オリハルコン銃を武器にする俺とは相性が悪い地形だな。
「めしあがられたことがあるかは分かりませんが、シーサーペントも珍しい食材ですよ。めったに手に入らないですが、手に入らないという程のものではないですね。」
確かに、ロンメルが以前料理に使っていたな。あれも美味しかったな。
王宮勤めだから珍しい食材も食べてきているだろうが、ジョスラン侍従長自身は王族ではないし、そこまで色々食べてきてはいないかも知れない。
あとはこちらの料理法で振る舞ってみることにしようか。
俺はまずは食材を手に入れることにした。
お祝いの料理、かつ王宮で振る舞うともなると、コース料理であることは必須のように思う。
前菜、スープ、魚、メイン、デザート。最低限これくらいは欲しい。
それと、ジョスラン侍従長はおそらく無類の酒好きだからな。料理に合う酒を準備したい。きっと喜んでくれる筈だ。
俺は、食材を手に入れるのに、協力出来ることはしてくれるという、メイベル王太后の約束を取り付けていた。
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