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第130話 初恋の想い出と2人だけのディナー⑦

 ──コツコツ。

 ある朝、俺の部屋の窓を何かが叩く音がする。目を覚ましてカーテンをあけると、窓の外に手魔鳥──ミーティアだ──がいた。

「ごくろうさん。」

 窓をあけて部屋の中に引き入れると、ミーティアは手紙に変化して宙を舞った。生き物ではないが、思わずそう言ってしまう。


「ようやく出来たか。」

 俺は皿が出来たので今日取りに行くことを、ルピラス商会のエドモンド副長に新しいミーティアで告げた。

 さすがに王宮に直接ミーティアは飛ばせない。不敬に当たるからな。王宮出入りのルピラス商会が、俺からの伝言を伝えてくれることになっているのだ。


 俺はカイアとアエラキと円璃花とともに朝ご飯を食べ、コボルトの集落に向かう馬車に乗った。

「ジョージさん、お待たせしました。こんな感じでいかがでしょうか?」

 ナーラさんが俺にプレート皿を見せてくれる。イメージ通り、バッチリだ。


「はい、最高です!

 これを量産していただけますでしょうか?

 とりあえず2000でお願いします。」

「は、はい。まだ店も出来ていませんし、ゆっくりで構いませんよね?」

「ええ、もちろん、」

 ナーラさんは驚いていたが、他の皿とあわせて作ってくれることになった。


 家に戻る最中の乗合馬車に、ミーティアが飛んでくる。対象者をめがけて飛んでくるものなので、どこにいても関係がない。

 俺は馬車の上でミーティアを受け取って手紙の内容を読んだ。

「……今日?気が早いな、本当に……。まあだいぶ待たせてしまったからな……。」


 手紙の内容は、出来れば今日ジョスラン侍従長に料理を振る舞って欲しいとメイベル王太后が言っている、とのことだった。

 俺は自宅近くまで来る馬車を降りると、そのまま王都に向かう馬車に乗り換えたのだった。


 王都に付くと、まずはルピラス商会を尋ねる。裏門から王宮に入る際に、ジョスラン侍従長に気付かれないようにする為に、エドモンドさんが協力してくれることになっているのだ。

 出入り許可証を持っているルピラス商会は、指定した相手を呼び出せるからな。


 裏門から王宮内に入り、エドモンドさんにロンメルを呼び出して貰う。普段ならジョスラン侍従長を通すことになるのだが、今回はメイベル王太后の願いで内緒だからな。

「よう!今日は頑張ろうな!」

 ロンメルがやって来て、笑顔でそう言ってくれる。


「お前の協力が必要不可欠なんだ、よろしく頼むよ。」

「任せておいてくれ。」

「じゃあ俺は帰るな、頑張れよジョージ。」

「はい、ありがとうございました。」

 そう言って馬車で去っていくエドモンドさんに礼を言い、俺はロンメルと共に王宮に入った。


 王宮の厨房を借り、ロンメルとともに料理を準備する。料理が出来たことを外で待っていた従者に告げ、従者がメイベル王太后付きの侍女に伝えに行った。

「……こ、これは……?」

 突然呼び出されたジョスラン侍従長は、目の前のテーブルにメイベル王太后が座っていることに目を丸くする。


「ジョスラン、幼き頃より、わたくしやお兄様のよき友人でいてくれて本当にありがとう。ささやかながらわたくしからも、あなたのお誕生日をお祝いさせてちょうだいな。今日は従者としてでなく、幼馴染としてわたくしと食事をして欲しいの。」

 メイベル王太后が微笑んでいる。


「は……、そ、そんな、もったいのうございます。」

 ジョスラン侍従長は泣きそうなのをグッこらえながらそう言った。

「かけてちょうだい。それとも、わたくしとは嫌かしら?」

「めっそうもございません。……失礼いたします。」


 従者がジョスラン侍従長に椅子を引き、ジョスラン侍従長が腰掛ける。普段は最もしつけられている、侍従長の最有力候補とされている男性らしい。男性も尊敬する上司が王族からこのような扱いを受けることが、とても嬉しくてたまらないのをなんとか隠しているようだったが、隠しきれていないところにまだ若さを感じさせた。


「それでははじめさせていただきます。

 一角兎とホタテとアスパラガスとルルクスとじゃがいものアヒージョです。

 ご一緒にでも構いませんが、よろしければ食前酒のミモザを飲まれてから、お召し上がりください。」


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