「これはウィッグというものです。俺の地元では、女性だけでなく、男性もオシャレの為に身につけたりするものですよ。
気軽に髪の色や髪型を変えられるので、普段短い髪の方でも、気分でロングヘアーを楽しむことが可能ですね。」
「男性も、ですか。」
エリックさんは、テーブルの上に並べられたウィッグを、こわごわと眺めながらそう言って、なかなか手に取ろうとはしなかった。
まあ、頭から取れた髪の毛が並んでるように見えるよな。初めて見ると。
「ぜひ鏡の前でお試し下さい。」
俺はジュリアさんにそう言った。
「……私、試してみたいわ。」
ジュリアさんはウィッグをひとつ手に取ると、全身を映せる大きさの鏡の前に立った。
「かぶればいいのかしら?」
ジュリアさんが俺を振り返る。
「はい。お手伝いしますね。」
ロングヘアーは正直、パッと見、前か後ろか分からないからな。俺はジュリアさんにウィッグをかぶせてやって、髪の毛を整えた。
「これは……!」
鏡の中には、頬を染めた金髪のロングヘアーの美しい女性が立っていた。
「とても……とてもきれいだよ、ジュリア。凄く似合ってる。素敵だ。」
エリックさんは、そう、つぶやくように、愛する妻の姿に見とれながら言った。
「エリック!あなたもつけてみて!」
「ええ?私もかい?」
嬉しそうに振り返ったジュリアさんに声をかけられて、エリックさんは戸惑いながらも嬉しそうに、テーブルの上の茶髪のロングヘアーのウィッグを手に取って立ち上がると、同じようにウィッグを身に付けて、鏡の前のジュリアさんの隣に立った。
「──似合っているかい?」
「ええ、もちろんよ。あなたも、とてもよく似合っているわ。まるで元からその髪色で髪型だったかのようよ?エリック。」
「まいったな……。」
困ったような表情で、それでいてジュリアさんが笑顔なことに、嬉しそうに微笑むエリックさん。お似合いのご夫婦だな。
「よろしければ、試供品として差し上げますので、そちらをお使い下さい。」
「いや、しかし、そんなわけには……。」
「オシャレ用と先ほどお伝えしましたよね?
ぜひこのウィッグを、この国に広めたいと思っているのです。若く美しい方が率先して使って下されば、それは宣伝になります。」
別にそんな商売をするつもりはもともとなかったんだが、ジュリアさんと同じように、困っている人もいるかも知れないからな。
ウィッグがあれば外出出来るのであれば、ウィッグを広めていきたいと思う。それにこの世界にウィッグがないのであれば、ルピラス商会のエドモンドさんに言えば、それはもうノリノリで売り出してくれることだろう。
「そういうことでしたら、ありがたくいただきます。ありがとうございます。」
「こちらはすべてお渡ししますので、気分でつけかえてみて下さい。きっと外出が楽しくなりますよ。俺も美術大賞の表彰式と同日の勲章授与式に出るので、当日またお会い出来るのを楽しみにしていますよ。」
「ありがとうございます。
私も楽しみにしていますね。」
ジュリアさんは、最初に会った時が嘘のように、明るく微笑んでくれたのだった。
「──そう、そんなことがあったの。」
家に戻ってご飯を食べながら、円璃花に今日あった出来事を話していた。
勲章授与式の終わりに、貴族たちに聖女として円璃花を紹介されたら、円璃花はそのまま王宮暮らしをすることになるそうだ。だからこれまで警備をしてくれていた兵士の人たちとも、お別れのパーティーをしたかったのだが、なにせ24時間の3交代制度、ご飯休憩も交代で取るとなると、いつものように差し入れを渡すくらいしか出来なかった。
それでも会える人には1人1人声をかけて挨拶をした。俺たちが寝ている時間の人たちも、交代の関係で朝には会えるが、差し入れのことを考えると、今のうちに作れるところまでを作っておく必要がある。
さすがに急過ぎて、あまり凝ったものは作れかった。昼間でかけていたしな。
そこで何を作ったかと言うと、肉まんである。実は家で簡単に作れるんだよな。俺は豚挽き肉、玉ねぎ、生姜、干し椎茸、茹でタケノコ、強力粉、薄力粉、インスタントドライイースト、ベーキングパウダー、パン粉、片栗粉、グラニュー糖、砂糖、醤油、塩、コショウ、サラダ油、ごま油、料理酒、ウエイパー、オイスターソース、牛乳を出した。
この材料は16個計算で考えて欲しい。ボウルを秤に乗せて、強力粉100グラムと、薄力粉300グラムと、ベーキングパウダー大さじ1を、ふるいにかけながらボウルに入れてやる。インスタントドライイースト大さじ1、グラニュー糖30グラム(砂糖でもいい)、塩を少々加える。
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