目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第23話 高校生最強探索者堂珍和也

:RTAかな?

:ここって深層……だよな?

:深層瞬殺とか人間のやることじゃないんよ

:魔物なんていなかったんや


「はい!じゃあ邪魔者がいなくなりましたので、早速仙桃をもぎたいと思います!」

 美織はニコニコしながら、ピョンピョンと針の山を飛び越えて山頂へと上がった。


 そこには仙桃の木にしがみついて、ブルブルと震えている獄寺ちょこの姿があった。

「あ、あんた今何やったの……?」


「ちょっとまとめて倒せるやり方で狩ってました!もぐのに邪魔だと思って。」

「だからって……。私が隠密使えるんだからさあ、こっそりもぐとか出来たよ!?」


「でも、皆さんの分持って帰るってお約束しましたし……。スカイフィッシュに仙桃にかぶりつかれたら、鮮度が落ちちゃいますし。」

 美織はこともなげにそう言った。


:いおりん優しい

:閃光の剣の為やったんやな

:これは根こそぎいただく気ですわ


「はい!じゃあ、もいでいきましょう~!」

 美織はニコニコしながら、仙桃をひとつずつ木からもぎはじめた。


「はあ……もう今さらだわ……。」

 獄寺ちょこも諦めて仙桃をもぎはじめた。

 もいだ仙桃をマジックバッグに各自つめていた時だった。


「へ~!本当に深層の魔物を倒しちゃうとはね!なかなかやるねえ、剣呑寺いおり。」

 知らない男の声がした。声がしたほうを振り返ると、針山の下に美少年が立っている。


 黒髪の一部を赤メッシュにし、髪をツンツン立たせているという、漫画のキャラクターとホストを足して2で割ったような髪型。

 半袖の袖にも差し色で赤が入っている。


 美織はちらりと一瞬そちらを見たが、気にせず仙桃をもぎ続けた。

「おい!声かけてんだろって!おい!」

「はい?」


 美織はてっきり深層に後から来た探索者だと思い、ここには既に魔物がいないことから、放っておけばいずれどこかに行くだろうと思って、特に気にしていなかったのだが、相手は美織に用事があるようだった。


「何か御用ですか?ここを狙っていたのならごめんなさい。ぜんぶ倒しちゃいました。」

「それは見りゃあわかるよ。俺はお前に会いに来たんだよ、剣呑寺いおり。」


「あの……、どなたさまですか?」

 美織はまったく知らない少年だ。美織はそもそも探索者に詳しくない。


 配信も家族の為に稼ぐ目的でやっているので、他のダンチューバーやダンVtuberに詳しくないのだ。


「俺のことを知らない?ハッ、マジかよ!

 ──おもしれー女。」

 少しイラッとしたように少年が言う。


「いおり、あれ、ダンチューバーの堂珍和也だよ。あたし知ってる。前にしつこくちょっかいかけられたことあるから。」

 と、獄寺ちょこが嫌そうに眉を潜めた。


:堂珍和也!?

:アメリカじゃなかったのか!?

:SNSで言ってたいおりんと対決したいって、マジだったのかよ!

:いおりんが深層ソロ行かれればって話だったろ?なんでもう日本にいんだよ


 コメント欄は、トップ探索者である堂珍和也の登場に、加速を見せていた。

「堂珍和也さん……ですか?私になんの御用でしょうか?」


「いやなに、日本人で高校生で深層ソロで潜れるのなんて、俺だけだと思ってたからね。どんなもんか見に来たんだよ。」

「そうですか。お暇なんですね。」


:辛辣で草

:まるで相手にされてないの草

:自分のこと知ってると思い込んでて草


 コメント欄は堂珍和也のアンチが多く、美織に相手にされていない堂珍和也に対する嘲笑が広がっていった。


 堂珍和也は舌打ちをすると、針の山をトントンと飛び越えて、山頂まで一気にたどり着き、美織にグイ、と迫った。


「……あの、なんでしょうか?」

「ふうん、予想以上じゃん。あんた、可愛いね。俺と付き合わない?」


 壁ドンの如く仙桃の木に手をついて、堂珍和也が美織に顔を寄せた。

「はあ……お断ります。」

 美織が不思議そうな表情でそう言う。


 その途端、ちょこがブフッと吹き出した。

「あんた相変わらずそんなんやってんの。女がみんなあんたに興味あると思ったら、大間違いだっていい加減わかんなさいよ。」


:その為に日本まで来て振られてて草

:ちょこタンよく言ったwww

:かーえーれー、かーえーれー

:いおりんをそこらの女みたく、食い散らかせると思ってんじゃねえぞ!?(威圧)


 美織とちょこ、2人の美少女にすげなくあしらわれて、堂珍和也は顔を真っ赤にする。

「なんだと……!?」


:顔真っ赤っ赤で草

:相手してもらえると思ってて草

:イケメン(笑)

:飯がうまい

:いおりん彼氏とか作んないで!


「彼氏ですか?今はいらないですね。家族の生活を立て直すほうが大切ですし。それにちょこさんと一緒にいるほうが楽しいです。」

「ば、馬鹿……!何言ってんのよ!」


:いおりんの告白にガチ照れするちょこタン

:美少女たちのイチャイチャmgmg

:唐突にぶっこみよる

:キマシタワー


「……ふざけんなよ。」

 完全にスルーされた堂珍和也は、全身にオーラをまといだした。


「目的変更だ。俺と戦え、剣呑寺いおり!どっちが日本人最強高校生探索者か、ここでハッキリと決着をつけようじゃねえか!」

 そう言って美織に指先を突きつけた。


────────────────────


この作品は読者参加型です。

アンケートが出たらコメントお願いします!


少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?