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第36話 置いていかれた少女

:レアな卵巣のお味を知るグルメ配信か。

疑似男性器そのままの見た目の身肉を、美少女たちが頬張る配信か。それが問題だ。

:悩むッ……!

:俺はもう入れた

:俺も

:早いなw


【確定ドロップアンケート。

 1.スターフィッシュツリーの卵巣(100%)

 2.スターフィッシュツリーの身肉(0%)

 スターフィッシュツリーの卵巣が選択されました。】


 目の前が光り、空中にスターフィッシュツリーの卵巣が現れたかと思うと、ポトリと落ちた。それを慌てて受け止める美織。


:みんな賢者タイムかwww

:意外と紳士でござった

:そのまんまの見た目を頬張らせるのも悪くないけど、いおりんには清純でいて欲しい

:実際3大珍味って言われると気になるのよ


「では、次は週明けになります。明日はドロップ品の販売の為に企業さまに行くお約束がありますので。スターフィッシュツリーの卵巣食べ配信を行いますので、お楽しみに!」


 ドロップアイテムの回収も終え、配信終了しダンジョンを出ようとしたその時だった。

「いやあああ!待って!置いてかないで!」

 甲高い悲鳴が轟いた。


:なんだ?

:女の子の悲鳴?

:またイレギュラーか?


「……いきましょう、ちょこさん!」

「しょうがないね、おっけー。」

 美織と獄寺ちょこは、ひとつ上の下層フロアへと、急いで駆け上がって行った。


 そこには中学生くらいの、ショートカットの可愛らしい女の子が、涙目で地面にへたり込んでいた。目の前には深層のダンジョンボス、ブラッドメタルラビット。


 黒い装甲のようなメタル状のボディに、赤い線が走っているロボットのようなデザインで、魔物のフィギュア界隈では人気の魔物の1体だ。興奮して目を真っ赤にして、口から水蒸気のような煙を吐いている。


 そして中層につながる階段に向かって、走り去って行く数人の男たち。どうやらイレギュラーに遭遇し、倒せないと踏んで女の子を見捨てて逃げたらしい。


「あれはヤバいよ、いおり!あの装甲はあたしの爆弾じゃ傷ひとつつかない。魔法耐性の高い、別名魔法使い殺しだけど、近接職だからって有利ってわけじゃない魔物だよ!?」


「はい、知ってます。でも、倒さないとあの子が危ないので。ちょこさんは、隠密と移動速度強化で、あの子を安全な場所に逃がして下さい!私が倒します!」


「もう!言い出したら聞かないんだから!それはやるけどさ!」

 獄寺ちょこは隠密を使って、スーッとその姿をダンジョンに溶け込ませた。


「──!?体が浮いた!?」

「シーッ。助けに来たんだよ。とりあえず、このまま一緒に中層まで逃げよ。少し黙っててね、舌噛むよ!」


 獄寺ちょこは移動速度強化を使い、一気にダンジョン内を駆け抜け、中層まで少女を連れて逃げた。ここまで来れば、獄寺ちょこでも余裕で倒せる魔物ばかりだ。


「あとはあの子があれを倒せれば……。

 だいじょうぶだよね?いおり……。」

 獄寺ちょこは心配そうに階段を見つめた。


 目の前の獲物が奪われたブラッドメタルラビットは、そのタゲを美織に向けた。

 別名ダンジョンのバーサーカー。1度キレたら敵を殺すまで止まらないとされている。


:うわああ、既にバーサク状態じゃねえか!

:普段でもヤバいのに!

:最初からクライマックスとか、これがイレギュラーか……!


「バーサク状態ですか。助かります。倒すのが早くなりますね!」

 美織はむしろ余裕綽々でそう笑った。


:どういうことだ!?

:バーサク状態は攻撃力もスピードも、すべてのステータスが上がってんだぞ!?

:いおりんも逃げろって!


 通常時よりも強いイレギュラー+バーサク状態により更に力を増したブラッドメタルラビットを倒せると思うリスナーはいない。

 コメント欄は逃げろ一択だった。


「バーサク状態のブラッドメタルラビットはですね、攻撃力とスピードはもちろん上がるんですけど、代わりに防御力を犠牲にするんですよね。特にこの……つなぎ目部分です!」


 美織はブラッドメタルラビットの体を這うように引かれた赤い線をなぞるように、スッと刃を入れた。ロボットの接続部分が外れるかのように、ブラッドメタルラビットの後ろ足がゴロンと取れて転がる。


:今何やった!?

:赤い線を撫でただけだぞ!?

:なんでそれで足が取れたんだ!?


 驚愕したのはブラッドメタルラビットもだった。突然足がなくなったことに気が付かずに、突進しようとして変な方向に突っ込み、自ら壁に激突した。


「ブラッドメタルラビットを解体するなら、赤い線に沿って。皆さんも覚えておいてくださいね!とっても楽ですよ!」


 美織はニッコニコだが、そもそもこの月島ダンジョン内最速を誇るブラッドメタルラビットのスピードに、追いつける探索者など数えるほどだ。それを動き出す前の一瞬の隙をついて、線に沿って切るなど不可能なのだ。


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