「ちょこさん!?どうされたんですか!?」
「い、いおりぃ……。囲まれた……。」
美織が中層に駆けつけると、隠密をといた獄寺ちょこの前に、たくさんの小さな魔物たちが集まっている。
:ミームマーモットじゃねえかwww
:ミームマーモットさん、ちっすちっす
:さすがにこの数を相手に、女の子守りながらは、ちょこタンには無理か
ミームマーモット。本来はノームマーモットという名称なのだが、マーモット本来のかわいい鳴き声ではなく、ネットミームで使われている、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!という、物凄いダミ声で鳴くことから、ミームマーモットの通称で知られ、ネット民にいじられ愛されている魔物である。
敵を見つけると、大声で鳴いて味方を呼び集め、また危険を知らせる生き物なのだが、大声により敵にも見つけられやすいという点においても、本来のマーモットと同じような生態をしている魔物だ。
動物のマーモットとの違いはモグラのように土に潜れるという点で、それこそ戦う時はもぐら叩きのようになる。そして体の小ささに反比例して、異常に力が強いのも特徴だ。
「ごめん、あたしは姿を隠してたんだけど、この子は見えてるから、それで集まってきちゃって……。この子を抱えながらだと、爆弾も投げられないし、逃げ回ってたらどんどん仲間を呼んで来て、こんな数に……。」
「そうだったんですね。大変でしたね。もうだいじょうぶですよ。」
美織がニッコリと微笑むと、なんかヤベえのが来たとでも思ったのか、ミームマーモットたちがビクリとして、壁際に集まりだす。
:警戒されてて草
:中層の魔物ごときが、いおりんに勝てるわけがないしなw
「それにしても、あなたはどうしてこんなところに置いていかれたんですか?どう見ても中学生ですよね?ギルドに所属しているのなら、下層に連れて来られる年齢じゃないと思いますけど……。」
ミームマーモットたちが近寄ってこないので、美織は少女に気になっていたことを尋ねた。少女はちょこの腕に抱かれたまま、ハラハラと涙を流し、それを拭った。
「……私、ドロップ選択、っていう、ユニークスキルを持っているんです。」
「ドロップ選択?……なんかいおりのアンケートに似たスキルね。」
「はい、それなんです、理由。私がトドメをさせば、ドロップアイテムが選択出来るっていうスキルで……。レアな素材をドロップさせる為に、無理やり連れてこられたんです。」
「はあ!?無理やり連れて来ておいて、置いていったってえの!?」
ちょこが眉間に皺を寄せて叫ぶ。
「……私のスキル、選べるだけで、ドロップは普通なんです。レアの出る率も同じです。でも、アンケートってスキルを持っている人がいて、その人はレア確定だから、私もそうだと決めつけられて、話を聞いてもらえなくて……。ギルドに所属するには、魔物のドロップ品が必要だったり、決まりがあるので、所属の為のテストだと言って、無理やり下層に連れて来られました。」
「はあ!?普通は上層、レベルが上がってきても、中学生なら中層までよ!?マジ信じらんねんだけど!どこのギルドよ!?」
「オールダンパーです……。」
「オールダンパー?知らないギルドね……。」
:オールダンパーはハードラックの下部組織
:波乗りが趣味の奴らが集まってる
:だからダンパーか
「そんなギルド抜けちゃいなさいよ。他にいくらでもいいとこあるんだから。」
「出来ないです!ギルドに正式所属になってお金を稼げるようになる前に抜けると、違約金が取られるって……。」
「は?なにそれ。違法じゃない。」
「そ、そうなんですか……?」
少女は驚いたように目を丸くする。
「ギルドだって新人育成はタダじゃないからね。ギルドがダンジョンに連れて行って、ギルドに所属出来るレベルまで育ったのに、ギルドに所属しないで抜けるってなったら、それまでにかかった費用は請求されるわよ。だけどそれは国から補助金もおりるし、本人に合わせて特注した防具だったり、貸し出した武器を破損した場合に、補助金を越えた分だけ支払うのよ。違約金とは別物よ。」
「詳しいんですね、ちょこさん。」
「あたしも昔はね。」
「でも私、違約金を支払うっていう契約書にサインをさせられてて……。」
少女は恐ろしそうに体を震わせる。
「国から補助金ももらってて、同時に違約金ももらってるってなると、それを素直に税務申告してるか謎ですねえ。」
美織がグレーな部分をついてくる。
:ハードラックの下部組織は、上納金があるって噂だぞ
:ぜんぶハードラックに集めてんじゃねえの
「それに、ひとつのギルドで駄目だったら、もう他のギルドには入れないって……。万が一にもそんな卑怯者が入れないように、根回ししてやるって言われて、私……。」
少女が両手で顔を覆って泣いた。
「そんなことないですよ?私もスカウト受けてますし。だったら今ここで、他のギルドのスカウトがくるくらい、レベル上げしちゃいましょうか!うん、それがいいですね!」
と、美織はニッコリ笑った。
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