目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第39話 ネットミームの魔物

「ちょこさん!?どうされたんですか!?」

「い、いおりぃ……。囲まれた……。」

 美織が中層に駆けつけると、隠密をといた獄寺ちょこの前に、たくさんの小さな魔物たちが集まっている。


:ミームマーモットじゃねえかwww

:ミームマーモットさん、ちっすちっす

:さすがにこの数を相手に、女の子守りながらは、ちょこタンには無理か


 ミームマーモット。本来はノームマーモットという名称なのだが、マーモット本来のかわいい鳴き声ではなく、ネットミームで使われている、ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!という、物凄いダミ声で鳴くことから、ミームマーモットの通称で知られ、ネット民にいじられ愛されている魔物である。


 敵を見つけると、大声で鳴いて味方を呼び集め、また危険を知らせる生き物なのだが、大声により敵にも見つけられやすいという点においても、本来のマーモットと同じような生態をしている魔物だ。


 動物のマーモットとの違いはモグラのように土に潜れるという点で、それこそ戦う時はもぐら叩きのようになる。そして体の小ささに反比例して、異常に力が強いのも特徴だ。


「ごめん、あたしは姿を隠してたんだけど、この子は見えてるから、それで集まってきちゃって……。この子を抱えながらだと、爆弾も投げられないし、逃げ回ってたらどんどん仲間を呼んで来て、こんな数に……。」


「そうだったんですね。大変でしたね。もうだいじょうぶですよ。」

 美織がニッコリと微笑むと、なんかヤベえのが来たとでも思ったのか、ミームマーモットたちがビクリとして、壁際に集まりだす。


:警戒されてて草

:中層の魔物ごときが、いおりんに勝てるわけがないしなw


「それにしても、あなたはどうしてこんなところに置いていかれたんですか?どう見ても中学生ですよね?ギルドに所属しているのなら、下層に連れて来られる年齢じゃないと思いますけど……。」


 ミームマーモットたちが近寄ってこないので、美織は少女に気になっていたことを尋ねた。少女はちょこの腕に抱かれたまま、ハラハラと涙を流し、それを拭った。


「……私、ドロップ選択、っていう、ユニークスキルを持っているんです。」

「ドロップ選択?……なんかいおりのアンケートに似たスキルね。」


「はい、それなんです、理由。私がトドメをさせば、ドロップアイテムが選択出来るっていうスキルで……。レアな素材をドロップさせる為に、無理やり連れてこられたんです。」


「はあ!?無理やり連れて来ておいて、置いていったってえの!?」

 ちょこが眉間に皺を寄せて叫ぶ。


「……私のスキル、選べるだけで、ドロップは普通なんです。レアの出る率も同じです。でも、アンケートってスキルを持っている人がいて、その人はレア確定だから、私もそうだと決めつけられて、話を聞いてもらえなくて……。ギルドに所属するには、魔物のドロップ品が必要だったり、決まりがあるので、所属の為のテストだと言って、無理やり下層に連れて来られました。」


「はあ!?普通は上層、レベルが上がってきても、中学生なら中層までよ!?マジ信じらんねんだけど!どこのギルドよ!?」

「オールダンパーです……。」

「オールダンパー?知らないギルドね……。」


:オールダンパーはハードラックの下部組織

:波乗りが趣味の奴らが集まってる

:だからダンパーか


「そんなギルド抜けちゃいなさいよ。他にいくらでもいいとこあるんだから。」

「出来ないです!ギルドに正式所属になってお金を稼げるようになる前に抜けると、違約金が取られるって……。」


「は?なにそれ。違法じゃない。」

「そ、そうなんですか……?」

 少女は驚いたように目を丸くする。


「ギルドだって新人育成はタダじゃないからね。ギルドがダンジョンに連れて行って、ギルドに所属出来るレベルまで育ったのに、ギルドに所属しないで抜けるってなったら、それまでにかかった費用は請求されるわよ。だけどそれは国から補助金もおりるし、本人に合わせて特注した防具だったり、貸し出した武器を破損した場合に、補助金を越えた分だけ支払うのよ。違約金とは別物よ。」


「詳しいんですね、ちょこさん。」

「あたしも昔はね。」

「でも私、違約金を支払うっていう契約書にサインをさせられてて……。」

 少女は恐ろしそうに体を震わせる。


「国から補助金ももらってて、同時に違約金ももらってるってなると、それを素直に税務申告してるか謎ですねえ。」

 美織がグレーな部分をついてくる。


:ハードラックの下部組織は、上納金があるって噂だぞ

:ぜんぶハードラックに集めてんじゃねえの


「それに、ひとつのギルドで駄目だったら、もう他のギルドには入れないって……。万が一にもそんな卑怯者が入れないように、根回ししてやるって言われて、私……。」

 少女が両手で顔を覆って泣いた。


「そんなことないですよ?私もスカウト受けてますし。だったら今ここで、他のギルドのスカウトがくるくらい、レベル上げしちゃいましょうか!うん、それがいいですね!」

 と、美織はニッコリ笑った。


────────────────────


この作品は読者参加型です。

アンケートが出たらコメントお願いします!


少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。

ランキングには反映しませんが、作者のモチベーションが上がります。



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?