目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第41話 正しい人間のやめ方講座

「1体を残してぜんぶ倒しましたね!それじゃあそろそろ、下層で耐性を取りにいきましょうか!あ、最後のノームマーモットは、後で倒しますね!」


 美織に首根っこを掴まれたノームマーモットは、プルプルと震えながら、逃げることも出来ずに、最後の時を待っていた。


:恐怖のあまり逃げ出すことも出来なくて草

:逃げて!ミームマーモットさん!

:絶望のお知らせ

:中層の魔物程度オヤツ感覚


「はい!頑張ります!」

 全身血まみれになった沙保里は、ニコニコとしながら美織について下層に降りた。


 ダンジョンは、いくつかのフロアに分かれているものが多く、それを中層、下層、と決めているのはダンジョン協会である。


 出て来る魔物の数や種類などで、そう決められているだけで、それに合わせて壁の色が違うなどの特徴はない。その為同じ下層であっても、突然様子の異なる場合がある。


 月島ダンジョンの下層の一部は、そうした途中途中は土壁であったり、湿地帯であったりするような場所がある。美織が降りて来た場所も、草が生い茂るフィールドだった。


「う〜ん、ここいらへんの筈だったんですけど……。──あった!ありました!状態異常回復の泉!別名キュアの泉です!」

 美織が草むらの中にある小さな泉を配信に映し出した。


「このフロアにある植物やキノコは、食べられるんですけど、なんらかの状態異常を持ってるですね。だからこのフロアの魔物たちはそれらを食べて、この泉で回復してるというわけなんですね。同じやり方をすれば、状態異常耐性なんてすぐですよ!」


「そ、そうなんですか……?」

 まさか毒のある食べ物を食べさせられるとは思っていなかった沙保里は、戦々恐々としながら美織を見つめていた。


「それじゃあ早速、食材を集めて鍋を作りましょう!あ、調理用の簡易キットは持ってきてますので安心してくださいね!」


:少しも安心出来ない件について

:毒持ちやしびれ持ちを集めるんだろ?

:それどんな闇鍋なんだよ

:これぞ真のダークマター

:食べられるようになれば、毒の成分て実は旨味成分だったりもするからな

:実は究極の鍋だったり……?


 嬉々として毒キノコやしびれ菜などを集めている美織に習って、それらを集めようとするも、触れただけでさっそく毒やしびれにやられて、へなへなと倒れてしまう沙保里。


「最初はそうだよね!泉の近くのものだけを集めようね!泉の水を飲みながら!」

「ふにゃい……。」

 沙保里はヨロヨロと泉に向かった。


:ふにゃいwww

:ヘナヘナになってて草

:返事が可愛いw

:ちょこタンは平気なんやな


「馬鹿にしないで!これでも上位探索者よ!耐性くらいとってるわよ!」

 同じく食材を集める獄寺ちょこに、軽視したコメントが流れてきて、それに反発する獄寺ちょこ。リスナーは素直に謝るのだった。


「さ!結構いい感じで集まりましたね!」

 美織はキュアの泉の近くにテーブルと鍋を設置すると、毒、気絶、麻痺、睡眠、混乱、疲労を発生させる食材を鍋にぶち込んだ。


「あっ。お水お水。」

 そう言って、地面を飛び跳ねていたカエル型の魔物、スプラッシュフロッグを捕まえると、雑巾を絞るように鍋の上で絞った。


 キラキラと美しい水が鍋の中を満たしていく。それを見た獄寺ちょこは、ウエッという表情をし、沙保里は目を丸くした。


:わあ、お空キレイ

:消しゴム美味しい

:ワイ、宇宙猫状態

:むしろここはワクテカするとこだろ

:いおりんちょいちょい天然だよな

:むしろサイコパスと言える


 携帯コンロに火をつけ、グツグツと鍋が煮えだすと、なんともいえない美味しそうな臭いと、なんとも言えない刺激臭が漂いだす。


:絵面はうまそう

:※なお、食材はすべて毒

:ひと口食べて死ななかったらラッキーよ

:ロシアンルーレット鍋か

:やってることがアンカ闇鍋で草


「あっ。たいへんたいへん!味付けの元も必要でしたね!え〜っと……。あ、いたいた!えいっ!取れました!」


 空を飛んでいた鳥タイプの魔物、その血がポン酢味だと言われる、シーズニングバードを捕まえると、その首を捻り落として、取り皿の中にボトボトと血をぶちまけた。


:わあ……

:地獄鍋でおじゃる

:自動でモザイクをかける機能さんが、さっきから仕事しまくりwww

:女の子が料理をする姿は可愛いなあ(現実逃避)


「いい感じに煮えてきましたね!それじゃ沙保里ちゃん、ひと口どうぞ!」

「は、はい……。では……。」


 恐る恐るキノコを箸でとり、ひと口食べた瞬間、毒に悶えて倒れる沙保里。

「はい!お水飲みましょう!」

「はあっ!はあっ!楽になりました……。」


「耐性がつくまで頑張りましょうね!」

 そう言ってニッコニコの美織と獄寺ちょこは、平気な顔をして鍋を食べていた。

「耐性がつけば美味しいのよ、この鍋。」

 獄寺ちょこもあっさりとそう言った。


:探索者なんてみんな人間やめてるんやな

:人間のやめ方講座で草

:まじでうまそうに見えてきた

:おk、今から鍋作る


 コメント欄は最早突っ込みを諦めつつ、自分たちも鍋のうまさを擬似でも味わおうと、鍋作りを始めるリスナーであふれた。


────────────────────


この作品は読者参加型です。

アンケートが出たらコメントお願いします!


少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。

ランキングには反映しませんが、作者のモチベーションが上がります。



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?