「それでは治療をしてみます。成功するかは初めてやるので少し不安ですが、沙保里ちゃんも祈っててください。」
「え?ポーションとかを使うんじゃないんですか?美織さんがやるんですか?」
「はい、これを持ってますから。」
と美織は祈りの指環を沙保里に見せた。
ポーションの購入及び使用は税務申告及びダンジョン協会への報告が必要になる。特に沙保里の兄の状態が治せるようなレア度の高いものとなると、そもそもの使用される回数自体が少ないものとなる。
ダンジョン内部で使用する分には、緊急時との判断及び、そもそも販売、購入されたものでない為、特に申告は必要がない。
だがギルドが持っているポーション類は、ドロップした探索者から購入したものだ。経理上雑損で計上したとしても、税務署からは突っ込まれないが、ダンジョン協会から雑損の理由についてつめられてしまうのだ。
だからギルドのポーション類は、内緒で使うことが出来ない、というわけである。美織としても祈りの指環がなければ、このことを阿平に相談してもどうしようもなかった。
沙保里の兄がギルドに所属したことで、ポーション類を使っても良かったが、そこには莫大な費用が発生する。沙保里の兄に莫大な借金が発生する為、祈りの指環を使うのだ。
「ステータスも上げたことだし、かなり成功率は高いんじゃないかしら。……といっても私も知らないアイテムだから、保証が出来るわけじゃないんだけど……。」
美織はアンケートの結果知恵の実をドロップし、それでステータスを上げていたのだ。魔法は知力のステータスと攻撃力の合算が物を言う。同じ魔法でも威力が異なる。MPは一度に使える魔法の回数を決めるものだ。
美織はドロップアイテムを手に入れた時を思い出していた。
【確定ドロップアンケート。
1.知恵の実(69.2%)
2.復活の水(30.8%)】
知恵の実が選択されました。】
「これが知恵の実……。どんなアイテムなんでしょうか。」
乾燥プルーンと干しブドウの中間くらいの大きさの乾いた果実のような物だった。
【知恵の実は、食べると知力ステータスの上がるアイテムですな!ランダムで1〜9999までステータスを上げられますが、数字が高くなるほど確率は低いものですな!】
ビビッドがそう答える。
「確率……ですか。その確率にも、アンケートのレア確定が反映したりするんですか?」
【既にドロップした物そのものに確率があった場合、それには影響は及ぼせませんな。】
「そうなんですね、数値次第では復活の水のほうが良かったかも知れませんね。」
【確かに1の可能性も9999の可能性もあるわけですが、祈りの指環は魔法を使う為のアイテムですから、知力は例え1だろうと、上げておいて損はありませんな。】
「そうなんですか?」
【魔法は知力ステータスと攻撃力ステータスで効果の上がるものです。回復は特に知力だけですからな。近接職であるマスターは、当然知力ステータスは低いでしょう。せっかくの祈りの指環の効果を使いこなせますまい。上げておいたほうがよいのですぞ。】
「わかりました。じゃあこれは売らずに食べちゃいましょう!」
美織は早速知恵の実を食べた。乾燥したアンズを昔食べたことがあるが、それに似たような味だな、と思った。
すると頭の中に、知力ステータスが3032上がりました、と声が響き、目の前に文字が可視化して見えた。
【いくつになりましたなか?】
「今目の前に出たんですけど、見えませんでしたか?」
【吾輩には見せませんでした。マスターにだけ見えるものなのでは?】
「そうかも知れません……。3032って出ました。」
【まあまあ良い結果なのでは?さすがに9999を出せることはまれでしょうが、大半が2桁までの数字に確率が設定されているようでした。3桁以上なだけでもレアですな。】
「ですね!私は魔法で攻撃しませんから、使う機会があるかわかりませんけど。」
まさかこんなに早く使う機会がくるなんてね……と美織は思っていた。
美織は沙保里の兄に手をかざした。
「──エターナルヒール。」
祈りの指環が光る。聖なる光が窓の外にあふれて病室を光らせた。
「く……苦しい、きついんだ、沙保里、包帯を外してくれ。」
「だいじょうぶ!?お兄ちゃん!!」
「効果があらわれてきたようね。ここまで酷いのは久しぶりでうっかりしてたわ。もとに戻る邪魔になるわ。包帯を外しましょう。」
美織が魔法をかけ続ける中、沙保里と阿平が沙保里の兄の肩と足の付根の包帯をはずした。するとぐんぐん伸びていく手足。しばらくするとすっかり元通りになっていた。
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