「ちょこさん、とっても楽しそうでしたね!私も企画して良かったです!」
コラボが終わり、美織の部屋に戻った美織と獄寺ちょこ。嬉しそうに言う美織に、
「そう見えたの?あたしは緊張で死ぬかと思ったわよ……。」
と、コラボが終わり、げっそりした様子で机に突っ伏している獄寺ちょこ。
「でも、今度はダンジョンにも行こうって誘われてたじゃないですか!リリーシェ・ベルマインさんと、連絡先の交換もしたんですよね?良かったじゃないですか。」
「ま、まあ、それは確かにね……。」
憧れの人の連絡先が入ったトークアプリに、ニマニマする表情をおさえきれないでいる獄寺ちょこ。
リリーシェ・ベルマインは、獄寺ちょこがそもそもの配信を始めたきっかけだ。
いつかあんな風になりたいと始めたが、あまりにリスナーにも同業者にも相手にされなかった結果、あんな風になってしまった。
迷惑系をやりながらも、リリーシェ・ベルマインにだけは迷惑をかけなかったからなのか、今までとは変わった自分を見て安心してくれたのか、ずっと普通に接してくれたのが嬉しかった。
「……あんたと関わったことで、変わることが出来て良かったわよ。こんな風に憧れの人と話しが出来る日がくるなんて、思ってもみなかったしね。」
そう、呟くように言う獄寺ちょこ。美織はそんなちょこを見てニコニコしていた。
「ちょこさんは、ちょっと構って欲しかっただけですもんね。」
そう言って、ペットボトルの紅茶を飲む美織。
「なんていうか、う〜ん、小さい男の子が、好きな子に意地悪するみたいな?」
と首を傾げている。
「他の人もそう思ってくれてればいいけどね……。」
犯罪すらしなかったものの、迷惑系ダンVtuber、獄寺ちょこの名前は有名だ。
未だに嫌っている人は嫌っているだろう。
なんでもいいから有名になれればいいのよ!と、あの頃は強がっていたが、本当は普通に人気者になりたかった。
同じように過疎っていたのに、美織はずっと腐らず頑張っていて、それがとてもまぶしくて、自分が恥ずかしくなる。
それでもそんな美織が自分を認めてくれ、一緒にコラボしてくれることが、今の獄寺ちょこにはたまらなく嬉しかったのだった。
「ちょこさんは、ギルドに入らないんですか?」
と美織が首を傾げてこちらを見てくる。
「い、いいわよ……。きっとまだ迷惑をかけちゃうだろうから……。」
美織も沙保里も、ギルド女神の息吹に所属をしたが、獄寺ちょこはフリーのままだ。
阿平が一緒に誘ってくれたが、獄寺ちょこはそれを固辞した。他の配信者とコラボは出来ても、どこかに所属するとなると、所属先に迷惑をかける可能性は拭えない。
今まで迷惑をかけてきた相手だって、後ろ盾がないからこそ、ちょこを訴えたところで取れるものはないと思い、何も手出しをしてこなかった可能性がある。
そんな獄寺ちょこがどこかに所属したとなると、これ幸いと今までの迷惑料を請求してくる可能性が否めない。
昔獄寺ちょこの住んでいた家の上階から何度も階下漏水があった際、配信機材やら何やらが駄目になってしまったことがあった。
結果、古いアパートの天井に穴があく事態にまでなったのだが、上階の住人が対応してくれず、また大家もかなりの高齢者だったことで、不動産屋がなんとかしてくれると思い込み、長年何も対応してくれなかったのだ。
昔は大家のほうが強くて、不動産屋も強気に対応することが出来たらしく、その頃の感覚で、今は大家が法に訴えない限り、何も出来ないということを理解しようとしないのだと、管理会社に言われてしまった。
そのまま何年も放置されたあとで、突如として、その高齢の大家がアパートを別の不動産会社に売却し、大家が変更になった。
その時更地のほうが売れるからと、住民は出ていくよう言われたのだが、何も聞いていないという新しい大家に現状を訴えてみた。
すると責任は大家にあるので、引っ越し代金の保証とは別に、その分も負担させていただく、と言ってくれたということがあった。
だから、新しく獄寺ちょこに対する責任を引き受けた先が、今までの責任を取らされる可能性だって、ないとは言えない。
すべては自分の責任なのだ。少し寂しい気がするが、これからも自分はギルドや配信者事務所には所属せずにやっていこう。獄寺ちょこはそう決めていたのだった。
だがひと月も経たないうちに、それは最悪の状況で、事務所には所属しないという意思を引っ込めざるをえなくなったのだった。
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