「はい、本日のゲストは、ダンチューバーの
「よろしくお願いしま〜す!」
ダンチューバー黎明期からのスター、向井鷹介は、TV局のバラエティー番組のトークゲストとして呼ばれていた。
今やダンチューバーもダンVtuberもTVに出る時代であり、視聴率が軒並み下がっているTV局としては、SNSや動画配信サイトで話題のゲストは、お手軽に取材いらずで記事が作れたり、既に人気のある人間を呼んで一定の数字が取れる為、新しい物を生み出す努力がいらず、楽なコンテンツだ。
おまけに配信者として人気な面々は、ある程度地のトーク力もあり、コラボ等で回すことにも回されることにも慣れている。
その中でも向井鷹介は使いやすい配信者の1人であった。芸能界のドンと呼ばれる男が経営する事務所の、有名な俳優やモデルを抱える系列事務所に所属し、その点でも配信者事務所にいる人間よりも使いやすい。
TVのやり方に慣れている人間というのは、生放送などにも出しやすい。配信ではOKでも、TVではコンプライアンスに引っかかるということも多いからだ。
その点をうまいことくぐり抜けて、女性の引かない絶妙な下ネタも繰り出せる向井は、最近ではバラエティーでも当たり前になった、ダンチューバー枠にいることの多い人間だった。
また、深夜やBSなどでは、司会をつとめることも多く、ニュース番組のコメンテーターを週1でつとめている。
加えて、VtuberやダンVtuberでは珍しくない、ユニット活動もしていて、他のダンチューバーと歌やコンサートなどもやったりしている。
年齢は既にいい年のオッサンだったが、まだまだ根強いファンがいる、それなりの見た目をしているという点も強みだった。
そろそろ特番でゴールデン帯の司会を持たせてみて、反応次第でゴールデンレギュラーの司会をやらせたい、という、TV局側の思惑から、今度ゴールデンの特番をやることになっている。
芸人の司会は、安定しているが新鮮味がない。今勢いのあるダンチューバーの中では、頭ひとつ抜きん出た向井は、ダンチューバーの司会でゴールデンをやってみたいTV局からすると、うってつけの人材だった。
「お疲れ様で〜す!」
「はい、おつかれ。」
収録が終わり、向井はウキウキと控室で衣装から私服に着替えていた。
そこに、先ほどの番組のゲストで呼ばれていた、グラビアアイドルがやってくる。
「向井さん、お疲れ様で〜す!」
「ああ、お疲れ様。今着替えてるけど、いいかな?」
そう言って、気にせず着替えを続ける向井。
「向井さん、さっきの話……どうですかぁ?」
「う〜ん、さすがに、ゴールデンを目指す特番のMC横は、慣れてる人がいいからね。局アナか、経験のあるタレントさんを呼ぶ予定でいるんだよね。」
アシスタントをやりたいというグラビアアイドルに、やんわりとお断りをする向井。
「ええ〜?じゃあレギュラーはどうですかあ?1人くらいなら、MCならなんとかなるでしょお?」
「番組がレギュラー化して、俺が数字の取れるMCだと思われればね。そういうのもあるんじゃない?今はまだ無理かなあ。まあ、特番にゲストで呼んで、爪痕残せたら、レギュラー化した時に、スタッフも悪いようにはしないんじゃないかとは思うけどね。」
「え〜?ほんとですかぁ?呼んでくれますぅ?」
「まあ、君次第だけど……ね?」
「わかってますぅ。」
そう言うと、グラビアアイドルはノースリーブの上着をはらりと落とし、チューブトップをたくしあげると、口で向井のジッパーをおろして、奉仕を始めた。
1度スッキリしたところで、グラビアアイドルがパンツを脱ごうと手をかける。
「それはまた後日ね。今日はこのあと約束があるんだ。」
待ち合わせに行くまでに、1度スッキリさせておきたかったので、それに使ったまでのことだ。本命は待ち合わせの相手だった。
向井は待ち合わせ場所へと向かった。
個室の高級中華料理店に行くと、TV局が呼び出した、パシフィックアールの杉本という男と、スタイルのいい美少女ギャルが待っていた。
『こりゃあ噂以上だな……。』
向井は内心舌なめずりをした。
「君が、獄寺ちょこちゃん?よろしく、向井鷹介です。」
同年代のファンたちには、キャーキャー言われる、爽やかなつもりの笑顔で話しかける。
元迷惑系ダンVtuberの獄寺ちょこは、実物がとんでもない美少女ギャルだということは、突撃をくらったことのある同業者の間では有名だった。
その噂のせいで、突撃を楽しみにしている連中も、一定数存在したほどである。
向井は残念ながら突撃されたことがなかった為、会うのは今日が初めてだった。
「どうも……。」
獄寺ちょこはそっけなくそう言った。
獄寺ちょこは迷惑系で名をはせたが、実は毒舌トークにも定評がある。毒舌ギャルには一定の需要があり、美女や美少女に罵られたい一定数の視聴者という数字を持っている。
事務所としては獄寺ちょこの名を捨てさせて、毒舌ギャルダンチューバーとして再デビューさせるつもりでいるらしい。
その足がかりとして、特番で顔を売っておきたいようだ。
実際なぜダンVtuberなどやっているのかと思うほどの、スペックの高さだ。
杉本という男を見ると、笑顔でコクッとうなずいた。パシフィックアールは、TV局の依頼でタレントを上納しているという噂のある事務所である。
TV局に、俺、ギャルが好きなんだよね、と言っておいて良かったな、と、向井は内心ニッコニコだった。
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