「見て!まじで廃校wうはwダンジョンにこんなパターンあるんだw」
「いわゆる特殊エリアってやつだな。ネットの噂も馬鹿に出来ねえな。」
チャンネル登録者数1万人にむけて、注目を集められる配信ネタを探していた6人組の新人ダンチューバーは、ネットで噂の特殊ダンジョンに来ていた。
ダンジョンは一般的に自然由来のものか、レンガや石を積み上げたような壁のものが基本だが、このダンジョンは入口をくぐった瞬間、日本の古い平屋造りの、田舎の廃校のような建物が現れるのだ。
おそらくは小学校程度と思わしき小ささで、戦時中を描いた映画などで見たことがあるような、そんな見た目をしていた。
「ここにですね、なんと動く二宮尊徳像や、トイレの花子さん、テケテケ、赤マント青マント、動くベートーヴェン、動く人体模型なんかの魔物が出るらしいです。マジで学校の怪談だわwww」
「それにしたって日本特有過ぎん?海外にこんな学校ないっしょ。」
「海外だと、廃墟の遊園地とかもあるらしいよね。ちょっと行ってみたいかも。」
「でもそこで出るのアンデッド系っしょ?場所が遊園地なだけで出て来る魔物は普通なわけじゃん?なのにここはトイレの花子さんが出るとか、もうアミューズメントパークじゃん。ただのお化け屋敷よ。」
「俺等の為に撮れ高用意してくれるとか、最高過ぎん?──ちょw待って、二宮尊徳像走ってきたわw」
「それじゃサクッと倒しますかあ!」
:ネットの噂マジなんか
:完全なるネタダンジョン
:トイレの花子さん、可愛いほうのやつか、リアルなほうのやつか、それが問題だ
:新しいダンジョンは危険も多いぞ、油断するなよ
:りぃくん気をつけてね?
6人中3人がイケメンということもあり、若年層や女性リスナーもそれなりについている。なにかでハネれば確実に一気に人気が出ると彼らは思っていた。
配信は上限の決まったリスナーの奪い合いだ。新規が食い込む為には、話題にのぼるような配信をして、オススメなどに乗る必要がある。その為、ネットの一部で話題になっていた特殊ダンジョンに来たのだった。
狙いは当たった。特殊な魔物にコメント欄は盛り上がり、既に同接は開始早々3000人を突破した。チャンネル登録者数もそれに連れてじわじわと伸びてきている。
このままいけば配信中に1万人を突破するだろう。お祝い枠の企画は何にしようかと、リーダーの探索者は既にそのことを考えていた。
配信を始める以前に、既に6人で下層も何度かクリアしている。実力的には上澄みに入るが、今どき下層をクリアしたくらいでは、話題にものぼらない。
6人がやりたいのは、あくまでも配信で人気者になること。
探索者として稼げるのと、配信で人気者になれるかどうかは、また別の話なのだ。
出て来る魔物を危なげなく倒しながら、お化け屋敷感覚で、色んな部屋に独自にわく魔物を紹介していく。撮れ高は最高で、新しい部屋に行くたびに同接が増えていった。
「ちょwテケテケきたwテケテケw」
「意外とかわいくね?w」
「はい、倒しま〜す。」
学生時代の友達のノリで、まったり討伐をしていくさまは、コメント欄に大量の草を生やして盛り上がっていた。
だがテケテケを倒した直後のことだった。先に進む彼らは、すぐに異変に気が付いた。
「あれ?同じとこ進んでね?」
「廊下は続くよどこまでもだw」
そんな風に呑気に配信していたのだが、しばらくするとそんな笑える事態ではないことに気がつく。
「ねえ、待って!?出られないんだけど!?」
「どうなってんだよ……。」
「これも魔物の仕業なのか?」
1時間歩き続けて、自力での脱出は不可能だと悟った彼らは、配信はつながっていた為、リスナーたちに救援要請を依頼したのだった。
「脱出不可能なダンジョン……ですか?」
ギルド女神の息吹に呼び出されていた美織は、ギルマスの阿平を前に首を傾げた。
「ええ、そうなの。新しく出来たダンジョンでね、そこに潜った探索者たちが、帰って来られなくなってしまったみたいなの。それで各ギルドに救出依頼が来たのよ。」
有事の際は、有力な探索者を抱えるギルドに救援要請が入ることがある。その依頼が女神の息吹にあったということだ。
他にも複数のギルドから人が参加し、合同で救出に当たるのだと言う。1度入れば脱出出来ないダンジョンなど、少なくとも公的には聞いたことがない。
もちろん知らないうちに未発見のダンジョンに入り込んで、そこがそうであった為、入った人間が出てこられず、誰にもそれ以降ダンジョンの存在が知られず、という可能性は否めないが。
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