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第116話 異質な空間

「今回の隊長を任された権藤謙佑だ。今回中に入るのは、俺を含めて6名。皇あかり、三喜屋城介、諏訪野美咲、箱崎保、畑中慎一郎とさせてもらう。」


 呼ばれた5名がうなずく。

「他はサポートに回ってもらう。特にあんただ、剣呑寺いおり。どうも特殊なスキルを持っているらしいな。」


 集まった探索者たちは、魔物由来の武器や装備を身に着けており、さながらゲームのキャラメイクのような、コスプレのような見た目をしていたが、権藤だけはレンジャー部隊のような服装をしていた。


 権藤がそう言った為、皆の注目が美織に集まる。

「あんたのアンケートってスキルは、ドロップ以外にも発動することがあるようだな。」

「はい、そう……ですね。それが何か?」


「以前とある探索者を、救う、救わない、という選択肢が出たことがあると聞いた。それを使って、最悪我々が助けられなかった場合、彼らを助けられるのではないかと期待されているんだ。」


 どうやら今回美織が高校生ながらに呼ばれた理由はそれらしい。人知の及ばない特殊な力で、ことわりを捻じ曲げて救助を可能に出来る可能性を期待されてのことなのだろう。


 だが、確かに堂珍和也が火だるまになった際に、そうしたアンケートは表示されたが、あくまでも自分の意思でもなければ、スキルの妖精であるビビッドにも、選択肢を選ぶことは出来ないのだ。


「私のアンケートは、自分で選択肢が選べるわけではないので、必ずそういうアンケートが発動するかどうかは、お約束が出来ないのですが……。」


「──そうなのか?

 自分のスキルなのにか?」

 スキルの力がどんなものであるのか、詳しく聞かされていなかった権藤は、目を丸くして、少し詰問口調でそう言った。


「はい……、いつも勝手に出てきますね。ドロップ品だけは、私が欲しいと思った魔物にだけ、ドロップの表示がありますけど。」


「なら、多少なりともあんたの意思が介入しているんじゃないか?確約でなくていい。試してみてくれ。」


「それは構いませんけれど、配信していないと表示がされないものなんですが……。今回は政府からの依頼とのことで、配信の許可が降りていません。なので、配信の許可をいただけないと、実行出来ないです。」


「それについては俺のほうで判断が出来ないな。一応上に問い合わせてみよう。救助作戦の間に許可が取れればいいんだが……。」


 権藤はうなるようにそう言うと、さっそく許可を取る他為、どこかに連絡を取り出した。


 その間も、突入予定の探索者たちは、自分の武器や防具などを確認している。

 今回のダンジョンは特殊なステージ。


 廃校、という、今までにありえない状況もそうだが、まるで学校の怪談さながらに、入った人間が出てこられないというのは、前例のないことだ。


 閉じ込められた6人が、探索者としてのレベルが足りないから出てこられないだけなのか、誰もが出てこられないものであるのか。


 中にいる魔物を攻撃したという条件下のもと、閉じ込められたようであるので、条件を揃えれば出られるものであるのかは、まだ誰にもわからないのだ。


 顔見知りである皇あかりも、少し不安げに顔を強張らせながら、入念に準備を行っているようだった。

「──さあ、行くぞ!」


 権藤が声をかける。

「配信については、返答を待っている。サポート部隊の白鷺に連絡をするよう、話はつけてあるから、奴に聞いてくれ。」


「わかりました。」

 権藤の言葉にこっくりと頷く美織。中の様子をサポート部隊にだけ伝えるドローンを伴って、救出部隊は廃校へと踏み込んで行った。


 校庭を走り回る、複数の二宮尊徳像。歩く二宮尊徳像の怪談は聞いたことがあるが、走るのは聞いたことがない。


 背負った薪がミサイルのように発射され、権藤たちを襲う。薪を撃ち落とし、二宮尊徳像を切り捨てて、校舎の中へと入った。


「──見て下さい!」

 白鷺が校舎を指さした。

「3階だての校舎の筈が、4階だてになってます……。」


 6人組のダンチューバーは全員中で配信していた為、視聴者も誰も気がついていなかったが、彼らが閉じ込められた際にも、実は同じ現象が外ではおこっていたのだ。


 既に探索者たちを閉じ込める異常事態は始まっている。誰もがそう思った。

 権藤たちが校舎の中に入ると、誰もいない筈の校舎の中からピアノの音が響いた。


 曲は月光。

「これ、4回聞いたら死ぬやつだっけ?」

 と、諏訪野美咲がつぶやく。


「詳しいな。」

「アニメかなんかで見たのよ。」

 畑中慎一郎の言葉に諏訪野美咲が返す。


「アニメと同じになるかは、もちろんわからないけどね……。」


 何がおきてもおかしくない異常空間を前に、諏訪野美咲は死亡フラグのような言葉を思わず口にしたのだった。


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