美織は超回復で瞬時に傷を治した。だが再びテケテケがハサミを突き出してくる。どうやら切るよりそのほうが確実だと学習したようだ。
美織はクロスカウンターのように、テケテケのハサミを避けつつ、自身も突きをくりだしていく。
だがステータスの逆転したテケテケのほうが動きが早い。避けきれずに何度も突きをくらい、その都度超回復で回復するのだが、美織の突きが当たらないテケテケは、変な声で笑いながら、負傷する美織に比べて余裕そうであった。
:だいじょうぶなのか!?
:タイキ、良かった……!
:みんなを映してくれ!
「だいじょうぶ、みんないるよ。」
6人組のダンチューバーは、スマホをぐるりと回して全員の無事を視聴者に知らせた。
<絶対防御>で安全地帯にいたものの、いつ助けが来るかもわからない孤独な状況で、彼らは配信を続けていたのだ。
その特殊な状況を心配した者、リョナ配信を期待した者、さまざまな思惑を持ってのことだったが、現在30万人もの視聴者が、彼らの配信を見ていたのだった。
その間にもチャンネル登録者数は確実に伸びており、戻ったらやりたいことなどを話しながら、水も飲めない環境下での、心の支えにしていた。
「俺たちは助け出されたけど、まだ中に救出部部隊の人たちが閉じ込められてるみたいだ。このまま最後までいさせてもらえるなら、その人たちのことも気になるし、配信を続けるよ。」
スマホを切り裂かれた廃校舎に向けながらそう言った時だった。切り裂かれた壁が光っていた廃校舎は、その入口がうごめきだし、スッと切り裂かれた壁を閉じてしまった。
:壁が塞がった!
:中に入った奴らがまた閉じ込められたぞ
:出て来られないんじゃないのか?
視聴者が心配する中、撤退の指示が来ない為、白鷺は6人組をブランケットで包んでやりながら、じっと廃校舎を見守った。
飛ぶように逃げるテケテケは、美織よりもずっと早い動きで、何度も美織をハサミで突き刺して血を流させた。
だが美織は切ったり、ハサミを受け止めることなく、突きに徹していた。超回復がなければ、とっくにやられていたであろう回数の攻撃を既に体に受けている。
美織との力の差を感じてか、時折攻撃すらせずに、美織の攻撃をかわしながら笑うテケテケ。その余裕から生まれる隙を、美織は見逃さなかった。
「グ……ギィイイイイ……?」
美織の突きが、テケテケの体に突き刺さる。そしてそれは、テケテケの魔核を正確に貫いていた。
「──レベル差があろうと、格上だろうと、魔核さえ壊してしまえば、魔物って死ぬんですよね。あなたの魔核を壊せる程度の力と、正確な突きさえ出来れば、あなたが私より強かろうと、関係ないんですよ?」
にっこり微笑む美織の前で、テケテケは体が崩れて消えていった。
「さて、急ぎませんと。皇さんたちを探さないといけませんね。」
美織は漂う魔力の中から、魔物と人の違いを感じ取りながら、廃校舎の中を走った。
その頃、皇あかりたちは、飛び回る包丁から逃げ回るのに精一杯だった。
「……くそっ、こんなとこで……。」
「ポーションももうないわ……!」
無機質なただの包丁に、殺される日が来るとは思っても見なかった。
探索者をする限り、死は覚悟していたが、こんなにも無慈悲で感情の見えない死は予想していなかった。
ただひたすらに逃げ回り、攻撃を受けるたびにポーションで回復するしかないというジリ貧状態だった。外に逃げる隙もない。──そこに、突然ガラッと教室の扉が開いた。
「ここにいらっしゃいましたか!」
「いおりん!」
「危ない!」
突如としてやって来た侵入者に、包丁の竜巻が一斉に襲いかかる。美織は刃を上に向けて、手のひらの上に刀を乗せて支えると、
「連舞咲き!!」
1度に大量の突きが発生して見える技を放った。包丁は半分ほどが撃ち落とされ、地面に落下しつつその姿を消した。
「正確に魔核をつけば撃ち落とせますよ?」
とあっさり言う美織に、
「本来の私たちの力にスピードなのよ?私たちは逆にあいつらの力にステータスを落とされて、とても無理だわ。」
と皇あかりが言った。
「彼らの動きには規則性がありますから。変則的な動きをするテケテケより、よっぽど楽ですね。タイミングを合わせればいいだけなので。」
そう言うと、残りの包丁もあっさり撃ち落としてしまった。
「力がなくても、この程度はなんとかなりますよ。格上の相手と戦うコツです。」
「言われて出来るもんじゃないぜ……。」
三喜屋城介は呆然としながらそう言った。
「あとはここから脱出するだけですね!」
美織がそう言って再び空間を切り裂いた。その剣を見た権藤が、
「その空間を切り裂く剣……、まさかあんた、高坂
「父ですけど……、お知り合いですか?」
と美織は首を傾げた。
「また閉じ込められないうちに早く出よう!」
「そうね!」
美織たちは急いで廃校舎から脱出した。
「さて、2度とこんなことがないように、この子は倒しちゃいましょう!」
そう言うと、美織は高く飛び上がり、大上段から廃校舎を真っ二つに切り裂いた。
「──わっ!?なんだこれ!?勝手にアンケートが出たぞ!?」
その時6人組ダンチューバーの配信画面には、
【確定ドロップアンケート。
1.ラプラスの箱(0.02%)
2.可変の鍵(0.03%)】
と表示されていたのだった。
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どちらが選ばれるかで、美織が行方不明の父親と再会出来るタイミングが変わります。
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