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第120話 正確な攻撃

 美織は超回復で瞬時に傷を治した。だが再びテケテケがハサミを突き出してくる。どうやら切るよりそのほうが確実だと学習したようだ。


 美織はクロスカウンターのように、テケテケのハサミを避けつつ、自身も突きをくりだしていく。


 だがステータスの逆転したテケテケのほうが動きが早い。避けきれずに何度も突きをくらい、その都度超回復で回復するのだが、美織の突きが当たらないテケテケは、変な声で笑いながら、負傷する美織に比べて余裕そうであった。


:だいじょうぶなのか!?

:タイキ、良かった……!

:みんなを映してくれ!


「だいじょうぶ、みんないるよ。」

 6人組のダンチューバーは、スマホをぐるりと回して全員の無事を視聴者に知らせた。


 <絶対防御>で安全地帯にいたものの、いつ助けが来るかもわからない孤独な状況で、彼らは配信を続けていたのだ。


 その特殊な状況を心配した者、リョナ配信を期待した者、さまざまな思惑を持ってのことだったが、現在30万人もの視聴者が、彼らの配信を見ていたのだった。


 その間にもチャンネル登録者数は確実に伸びており、戻ったらやりたいことなどを話しながら、水も飲めない環境下での、心の支えにしていた。


「俺たちは助け出されたけど、まだ中に救出部部隊の人たちが閉じ込められてるみたいだ。このまま最後までいさせてもらえるなら、その人たちのことも気になるし、配信を続けるよ。」


 スマホを切り裂かれた廃校舎に向けながらそう言った時だった。切り裂かれた壁が光っていた廃校舎は、その入口がうごめきだし、スッと切り裂かれた壁を閉じてしまった。


:壁が塞がった!

:中に入った奴らがまた閉じ込められたぞ

:出て来られないんじゃないのか?


 視聴者が心配する中、撤退の指示が来ない為、白鷺は6人組をブランケットで包んでやりながら、じっと廃校舎を見守った。


 飛ぶように逃げるテケテケは、美織よりもずっと早い動きで、何度も美織をハサミで突き刺して血を流させた。


 だが美織は切ったり、ハサミを受け止めることなく、突きに徹していた。超回復がなければ、とっくにやられていたであろう回数の攻撃を既に体に受けている。


 美織との力の差を感じてか、時折攻撃すらせずに、美織の攻撃をかわしながら笑うテケテケ。その余裕から生まれる隙を、美織は見逃さなかった。


「グ……ギィイイイイ……?」

 美織の突きが、テケテケの体に突き刺さる。そしてそれは、テケテケの魔核を正確に貫いていた。


「──レベル差があろうと、格上だろうと、魔核さえ壊してしまえば、魔物って死ぬんですよね。あなたの魔核を壊せる程度の力と、正確な突きさえ出来れば、あなたが私より強かろうと、関係ないんですよ?」


 にっこり微笑む美織の前で、テケテケは体が崩れて消えていった。

「さて、急ぎませんと。皇さんたちを探さないといけませんね。」


 美織は漂う魔力の中から、魔物と人の違いを感じ取りながら、廃校舎の中を走った。

 その頃、皇あかりたちは、飛び回る包丁から逃げ回るのに精一杯だった。


「……くそっ、こんなとこで……。」

「ポーションももうないわ……!」

 無機質なただの包丁に、殺される日が来るとは思っても見なかった。


 探索者をする限り、死は覚悟していたが、こんなにも無慈悲で感情の見えない死は予想していなかった。


 ただひたすらに逃げ回り、攻撃を受けるたびにポーションで回復するしかないというジリ貧状態だった。外に逃げる隙もない。──そこに、突然ガラッと教室の扉が開いた。


「ここにいらっしゃいましたか!」

「いおりん!」

「危ない!」


 突如としてやって来た侵入者に、包丁の竜巻が一斉に襲いかかる。美織は刃を上に向けて、手のひらの上に刀を乗せて支えると、


「連舞咲き!!」

 1度に大量の突きが発生して見える技を放った。包丁は半分ほどが撃ち落とされ、地面に落下しつつその姿を消した。


「正確に魔核をつけば撃ち落とせますよ?」

 とあっさり言う美織に、

「本来の私たちの力にスピードなのよ?私たちは逆にあいつらの力にステータスを落とされて、とても無理だわ。」


 と皇あかりが言った。

「彼らの動きには規則性がありますから。変則的な動きをするテケテケより、よっぽど楽ですね。タイミングを合わせればいいだけなので。」


 そう言うと、残りの包丁もあっさり撃ち落としてしまった。

「力がなくても、この程度はなんとかなりますよ。格上の相手と戦うコツです。」


「言われて出来るもんじゃないぜ……。」

 三喜屋城介は呆然としながらそう言った。

「あとはここから脱出するだけですね!」


 美織がそう言って再び空間を切り裂いた。その剣を見た権藤が、

「その空間を切り裂く剣……、まさかあんた、高坂依織よしきの関係者か!?」


「父ですけど……、お知り合いですか?」

 と美織は首を傾げた。

「また閉じ込められないうちに早く出よう!」

「そうね!」


 美織たちは急いで廃校舎から脱出した。

「さて、2度とこんなことがないように、この子は倒しちゃいましょう!」


 そう言うと、美織は高く飛び上がり、大上段から廃校舎を真っ二つに切り裂いた。

「──わっ!?なんだこれ!?勝手にアンケートが出たぞ!?」


 その時6人組ダンチューバーの配信画面には、


【確定ドロップアンケート。

 1.ラプラスの箱(0.02%)

 2.可変の鍵(0.03%)】


 と表示されていたのだった。


────────────────────


どちらが選ばれるかで、美織が行方不明の父親と再会出来るタイミングが変わります。


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