ダンジョンが出来てからというもの、ダンジョン探索に反対する勢力と、ダンジョンを独り占めしようとする勢力、それぞれにテロリストのような存在がいることは、ニュースで美織もチラッと知っていた。
「テロ組織はどういうわけか、出口になる国の指定がある程度出来るようなんだ。だからどの国も最優先で対応することになる。やばい奴らが大手を振って潜入して来られないようにな。」
そういう人間たちがもしもそこを通ってくるようなことがあれば、魔物と違って探索者は彼らと戦うことが出来ない。
探索者が水際で食い止めてくれる魔物の脅威よりも、手出し出来ない発砲する人間のほうが、一般人にとっては確かに脅威だろう。
「ダンジョンをクリアするとそこが塞がるから、見つけると最優先でクリアしに行くことになるんだ。あんたの親父さんは、俺と一緒にそういう仕事をしていたんだ。」
どこまで層があるかもわからないダンジョン。かつ、突然出口が塞がり、他の国に出口がつながる可能性もある場所に潜らせられる探索者は、上澄み中の上澄みなのだと言う。
そういう探索者は少ない。ましてや配信をしている探索者も多い中、優先的に国の為に動いてくれる人間となると、なおのことだ。
「やれる人間が少なかったことで、俺とあんたの親父さんは、よくパーティーを組んでいたんだ。まともに家に帰っているのかって聞いたら、笑ってごまかされたっけな。」
“異界の門”はそうしょっちゅう現れるものではなかったが、1度潜るとダンジョンをクリア出来るまで外に出られないらしい。
だから殆ど家にいなかったのか、と美織は思った。自分が物心ついた頃にはほぼ家に帰らない人だったが、それでも妹がいつの間にか出来ていたのだから、自分の知らない間に家に帰っていたのだろうと思う。
母親は夜勤で朝や昼間に帰ることも多かったのだから、自分が学校に行っている間に、夫婦の時間を持っていたとしても不思議ではないかな、と思った。
「親父さんは、俺が最後に一緒に潜った“異界の門”から脱出する際に、門の入り口が急に変化して閉じ込められたんだ。」
「入り口が変化……、ですか?」
「ああ。クリアしたら消える筈が、新たな門がその場に生まれやがったんだ。あんなことは初めてのことだ。1番最後に出てこようとしていた親父さんを閉じ込めて、“異界の門”の入り口が閉じちまった。俺はその場にいたのに、あんたの親父さんを助けることが出来なかった。本当に申し訳ない。」
そう言って、権藤は深々と頭を下げた。
「特殊なケースだったんですよね?不可抗力です。仕方ないです。父も覚悟してたと思います。気にしないで下さい。」
「……家族にそういってもらえると救われる。本当にすまなかった。そしてありがとう。」
つまり美織の父親は、“異界の門”がどこかの国に再びつながるまで、出て来られないということだ。
今までも親子3人暮らしのようなものだったのだから、これからもそれが変わることがないというだけのことではあるが、ほぼ帰って来られないと確定したことを、母親は知っているのだろうか。
知らないとしたらどう伝えよう、と美織は思案した。
「お父上が“異界の門”から出られないのであれば、鍵であければよいのではないですかな。」
と、突然ビビッドがそんなことを言ってくる。
「なんだ?そりゃ。」
「あ、私のサポート妖精のビビッドです。」
ビビッドに目をとめた権藤にビビッドを紹介する。
「“異界の門”を鍵であける?あんたなんか知ってんのか?」
「先ほどドロップした可変の鍵は、“異界の門”を開け閉めする鍵なのですな!」
とドヤ顔で告げるビビッド。
「“異界の門”を開けられる!?そりゃ本当か!?」
「門なのですから鍵があるのでしょうな。先ほど“異界の門”の鍵であると書いてあるのを確認したのですな!つながる先も選べるとあったのです!」
「そんなもんがあるのなら、テロリストのやつらが行き先の国を自在に選べる方法を持ってるってのも納得だ。おそらくやつらも同じ鍵を所持していやがるんだろう。」
「なら、お父さんを助けに行かれる……ってことですか?権藤さん、お父さんが閉じ込められた“異界の門”は、いったいどこにあるんですか?」
「……長野県の山中だ。そこにあんたの親父さんはいる。救出方法が見つかったかも知れないと国に知らせよう。俺はあまり直接やり取りする機会がなかったもんで、上のやつらをよく知らないが、国の指示で行動した結果行方不明になった人間を助ける為だ。大規模な捜索隊を組むよう指示してもらおう。」
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